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2025年05月30日

ちょっと気になる記事・話題 (169)

大阪・関西万博が開場(4月13日)以来、1カ月半が経ちました。初期段階での様々なトラブルへの対策が講じられ、来場者の数は徐々に増えています。5月中旬以降は平日でも10万人超が続き、5月23日には13.9万人と初めて開幕日の12.4万人を上回りました。ただ、10月13日までの半年間の会期中、想定の来場者数2820万人を前提とすると、1日平均15万人となります。今でも生じている混雑に対する不満や、戸惑いへの一層の対応策が必要とされています。
次に、スポーツの世界で日本人選手の活躍に「アッパレ!」3発です。
その①、5月25日(日)、千秋楽を迎えた大相撲・夏場所(両国国技館)は大関・大の里が二場所連続、4度目の優勝を成し遂げ、「第75代横綱」が正式に誕生しました。初土俵から所要13場所での昇進は、年6場所制となった1958年以降過去最速です。また、東西に横綱が並ぶのは2021年秋場所以来のことです。大の里関は石川県の出身で、このところ大きな災害が続き、暗いニュースが多かった郷土に明るい話題をもたらし、正に故郷に錦を飾ったことになりました。アッパレ!
その②、カタールの首都ドーハの近郊ルサイルで開催された世界卓球選手権の男子ダブルス決勝で、篠塚・戸上組が台湾チームとの決勝戦で勝利し、初優勝しました。この種目で日本勢が金メダルを獲得したのは1961年大会以来、64年ぶりの快挙です。アッパレ!
その③、日本人女子プロゴルファーの米国LPGA(全米女子ゴルフ協会)主催の大会への積極的なチャレンジとパワーが話題になっています。4月末、テキサス州・ザ・クラブatカールトンウッズで開催された、女子メジャー第1戦シェブロン選手権で、米ツアー参戦2年目の西郷真央選手が初優勝しました。これに続き先週、リビエラ・マヤオープン(メキシコ)で岩井千怜選手が初優勝。これで今年、LPGAトーナメントで日本人女子の優勝は3人となり過去最多です。どうも日本人は女性の方が異文化へ適応がうまいというか、順応性が高いようです。アッパレ! 

■■お知らせ:
前回のブログ、でもお伝えしましたが、私は来月6月5日(木)~6月15日(日)、欧州へ出かけることにしています。次回配信予定の6月13日(金)は、インターネットが利用できるという前提で、スペイン・バルセロナからとなります。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■日鉄によるUSスチール買収について:
5月25日(日)、朝刊を開くと第一面に、首題に関する大きな活字が目に飛び込んできました。主要紙のタイトルを見ると、①日経-「USスチール買収、一転承認、日鉄の2兆円投資評価」、②読売-「日鉄-USS買収、投資増額で軟化。トランプ氏実利選択、日鉄買収計画承認へ」、③朝日-「USスチール『提携』承認。日鉄、買収へ前進か」、といった見出しでした。朝日はやや慎重な用語でしたが、他紙は日鉄による「買収」実現への強い期待を感じさせました。その影響か翌日の日鉄の株価は上昇しました。この報道の背景として、前日、トランプ大統領が、「日鉄とUSスチールは計画的なパートナーシップ(提携)となることを承認する」と発言したことでした。
私は各社の報道ぶりを見て直感的に、「これはちょっと早とちり」というか、「買収成功への過剰期待の表れではないか」と感じました。トランプ氏は5月30日(現地時間) 、ペンシルベニア州ピッツバーグで集会を開き正式な見解を表明するようですが、現状では日鉄の目論見通りにはいかないように思われます。私の抱いた「危惧」が「杞憂に終わる」ことを願いながら、「なぜボタンの掛け違いが起こったのか」について私見を述べたいと思います。
日鉄が「USスチールを買収(141億ドルー約2兆100億円)し、100%所有の子会社にする」と発表したのは2023年12月でした。当時は2024年11月の大統領選挙に向け激しい選挙戦のさ中でした。両社は純民間ベースで取引の進展を目指していましたが、様々なしがらみからUSW(全米鉄鋼労働組合)が反対を表明し、話がこじれてきました。これは日鉄にとって大きな誤算でした。同組合は約85万人の会員を擁し、本部はUSスチールの本社所在地ピッツバーグにあります。しかも同州は大統領選挙の結果を左右する決戦州(Battleground States)の一つです。そこで労働組合票の争奪を巡り政治問題化したのです。当時の共和党大統領候補トランプ氏はすかさず(2024年1月)、「私なら即時阻止」を表明、これに対しバイデン大統領も対抗上「反対」の姿勢をとりました。その後「民間の商取引への政治介入」として法廷闘争に発展しました。
そしてトランプ氏が大統領就任後の本年2月7日、日米首脳会談が行われ、その席で同大統領は日鉄案件について「買収でなく投資」と述べました。つまり「投資・出資は認めるが所有権は渡さない」ということです。そして報道では石破首相もこれに同調しました。トランプ大統領はこの際の「合意」をその後も前提としています。
一方、日鉄側は買収交渉のスタートから終始一貫、「100%子会社化」を前提条件としています。ここにトランプ大統領と決定的な溝があります。その上で、日鉄側はトランプ大統領の「日鉄首脳にも会う」という発言と、本年4月にCFIUS(対米外国投資委員会)に再審査を指示したことに望みを託し、大統領の翻意を促すため、「100%子会社化(買収)」の承認を条件に、USスチールの生産設備に140億ドル(約2兆円)を追加投資する意向を提示しました。
一方、トランプ大統領はこの提案をあくまで「投資」の一環として受け止め、自らの手柄(Dealの成功)として喧伝しています。また、この方式ならUSWも納得すると考えたようです。目下、日鉄側の希望を「ある程度」認めると同時に、米国政府に「黄金株」(経営の重要案件に対する拒否権)を付与するという、玉虫色の解決策が模索されているようです。しかしこれは日鉄にとって最大の肝である「100%子会社化(経営権)」から乖離しており、「いいとこ取り」をされる印象は否めません。
このボタンの掛け違いはどこから生じたのか。最大の要因は日鉄首脳が期待していたトランプ大統領との面談が実現しなかったこと、そして審査担当窓口のCFIUSが、日鉄の真意(「100%子会社化」が前提条件)を、トランプ大統領に十分伝えなかったのではないかと推測します。
それでは今後どうなるか。いくら豹変するトランプ大統領でも従来の考えを一変させることは難しいでしょう。一方、日鉄側は「買収による所有権」を確保できないなら、「話が違う」と今回の案件を反故にできるでしょうか。それは日米首脳会談で首脳同士が「投資」で合意したという事実と、日米関係レベルでの政治・経済への影響を考えると、現実としては至難なことです。しかし買収資金141億ドルと、設備への追加投資として提示した140億ドル、併せて約4兆円に達する投入資金は、日鉄にとって大変なリスクとなります。日鉄の経営陣がどう判断するのか注目されるところです。

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