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2025年06月27日

「ちょっと気になる記事・話題」(171)

6月15日(日)にヨーロッパから帰国して1週間以上経ちますが、まだ完全には時差ボケから抜け切れません。昼、会議に出ますとどうしょうもない睡魔が襲ってきます。東から西へ移動する場合は1日が24時間に時差分が加わり長くなりますが、西から東の場合は逆に短くなるためか、一段ときつく寝つきも悪くなります。時差の解消はせいぜい1日で1時間と聞いたことがあります。そうすると日本とヨーロッパ間の時差7時から完全回復するには、個人差はありますが1週間程度を要することになります。
なお、米国では東海岸のニューヨークと西海岸のロサンゼルスでは3時間の時差があります。両市間の飛行時間は直行で6時間前後ですから、ロサンゼルスで夕食を終え夜10時のフライトに乗ると、ニューヨークに着くのは現地時間の朝7時前後となり、そのまま仕事となります。機中では中途半端な睡眠しかとれませんので目は充血、通称”Red Eye Flight”と言われました。かつて日本人は”Workaholic”(仕事中毒)と揶揄されたことがありました。しかし米国のエリート層の時差を利用したタフな仕事ぶりには驚きました。実際、意外なことですが、統計によると年間平均労働時間は米国人の方が長いのです。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■相変わらす予測がつかないトランプ大統領の政策運営:
トランプ政権が発足して5ヵ月ちょっと経ちました。以前、同大統領を「荒れ球専門のピッチャー」に例えましたが、相変わらず予測のつかない言動で世界は振り回されています。しかしその根底にあるのは、外交では①イスラエル寄り、②プーチン大統領との緊密な関係維持が柱のように思います。そして内政では①不法移民への厳しい対応、②株価と金利動向に敏感という点です。なお、中国については「どう対応してよいか」、ちょっと戸惑いを感じているようです。その背景として、①中国は以前から対トランプ対策を周到に練ってきたこと(輸出入先の分散等)、②世界シェアの9割を占め、米国の弱点であるレアアースの輸出規制を武器として、予想外のしたたかさを発揮しているからです。そして瀬戸際外交の最たるものが、先日敢行したイランの核施設空爆です。今のところ一定の目的を達したとされ、停戦も守られているようですが、先行きは不透明です。なお、NATO諸国の防衛費のGDP比5%への引き上げ決定は、持ち前のディール(取引き)の具体的な成果といえます。
■日鉄のUSスチール買収について:
日鉄は1年半に及ぶ交渉の末、USスチール社を100%買収という目的を達しました。しかし米国政府に「黄金株」を付与したことは曲者です。それと買収はあくまで事業戦略の手段であり、その達成は本来の目的のスタートです。これから、待ち構える数々の障害をどう乗り越え、事業を軌道に乗せるかが問われることになります。最近の日鉄の株価動向は、投資家が買収の成否の判断に迷っていることを示しています。
■通常国会閉会:
本年1月24日に召集された第217回通常国会は150日間の会期を終え6月24日閉会しました。内閣提出法案59件のうち58件が成立しました。成立率は例年とほぼ同じでした。少数与党(自公)が成立率を維持できたのは、提出後の法案審議で野党の意見を採り入れ修正に応じるケースが増えた(7割増)ためです。その代表例は年金制度改革法です。政府は基礎年金の底上げ策を削除し提出しましたが、立憲民主党の野田代表から「あんこのないあんパン」と異議を唱えられ、底上げ策を復活させ成立させました。少数与党下での国会運営の厳しさが現実となっており、この状況は7月20日に投票が行われる参議院選挙の結果に関わらず続きます。閉塞感に満ちる現状を目の当たりにするにつけ、我が国に於いてこそトランプのように現状を破壊し、再建(?)するような政治家が出てほしいものです(米国の大統領制と異なり、我が国の議院内閣制の下では無理ですが)。
なお、私が生業としてきた貨物輸送関係では、トラック運送業の許可更新制や委託次数の制限、適正運賃の制度化などを規定する「トラック事業適正化関連法」(トラック新法)が成立しました。この法案は①5年ごとの事業許可更新制の導入、②運送委託を2次請けまでに制限、③「適正原価」を下回る運賃・料金の制限、④運送事業者以外の有償運送(「白トラ」行為)の禁止、⑤労働者の賃金など適切な処遇の確保等、運送業界に新たな規制を課すことで、業界の適正化や取引環境改善を目指すとしています。このうち新設された法律「トラック適正化法」は公布(6月11日)と同時にすべて施行されました。 一方、改正貨物法の他の重要な部分「許可更新制の導入や適正原価義務など」は、政省令に基づいて公布後3年以内の施行となります。
■目立つ日本の科学技術力の弱体化:
文科省が公表している「科学技術指標」によると、日本は研究のアウトプットである科学論文集の国際引用数の多い論文では、約20年前には世界4位でしたが、2017~2019年平均では10位、2020~2022年平均では過去最低の13位となり、その衰退ぶりが深刻化しています。その背景として世界では政府が研究大学に予算規模を増加させ続けているのと、大学自身も自助努力で寄付や資金運用、それに産学共同事業を進め、資金面で強固な基盤を築いていることが指摘されます。一方、我が国では大学の運営費交付金や科学研究費の総額は増えておらず、大学自身の資金力も弱いのが実情です。クスリの開発でも俗に「千三つ」といわれるように、研究開発ではうまくいかない方が圧倒的に多く、最後は資金力の強さがものを言います。また、日本の研究室は教授を頂点に師弟関係で人員が縛られ、タコつぼ状態とされています。そのため研究テーマも新規分野が少なく硬直化していることが指摘されます。
■日本の教育制度の在り方について:
日本の科学技術力の弱体化に関連して、私は日本の教育の在り方についても疑問を感じています。日本の教育は平等を重視し競争を避ける傾向です。そして改善が進められているようですが、先生の話すことを生徒はひたすら聞く授業です。これは同レベルの人材、つまり金太郎的な人材の育成には向いていますが没個性的になります。また、我が国では生徒の「弱いところ」を直させようとします。ところが米国は弱点を無理に直すよりも「強いところ」を伸ばすようにします。それにより独創的で創造性に富む人材が育ちます。こういった違いにより、日本人・企業は技術・アイデアを導入して加工・改修するのに長けていますが、例えばAI等先端技術の根幹にある基本原理を発掘する力は弱いといわざるを得ません。我が国はこれといった資源を有していません。従って人材を養成して「無から有を生み出す力」をつけ、付加価値を生み出す以外に、現在の豊かな生活レベルを維持することは出来ないのです。そのためには多少劇薬的ですが、競争心を高めるとともに、ギフテッドプログラム(異能・異才の特待制度)も積極的に採り入れるべきです。製品でも競争があるから品質が改善・改良されるのです。人材でも同じです。このままぬるま湯につかっているようでは、どんどん進む我が国の衰退に歯止めをかけることは出来ないように思います。

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