5月31日付「物流ニッポン」紙の5面「ちょっといっぷく」コーナーに「傲慢・慢心を戒めて」と題して掲載されました。以下に転記しておきます。
今日の我が国の社会・経済の低迷ぶりを象徴し、「失われた30年」と称される。確かにこの30年、我が国の経済成長は年率1%に届かず、賃金も上がっていない。
GDP(国内総生産)は2010年に中国に抜かれ、世界シェアも1995年のピーク時18%が今や6%を切り、一人当たりも3位から24位に転落した。そして情報化(DX)も遅れ、アジア主要国の後塵を拝している。
社会・教育でも、ジェンダーギャップ(男女平等度)、学術研究、語学力、大学の評価、小中学生の学習意欲なども下位にランクされている。
背景をさかのぼっていくと、80年代のバブル経済に行き着く。当時、日本は「世界一の成功国」と持ち上げられ、「山手線の内側の土地代で米国全体を買える」とまで思い上り、「イソップ物語」のウサギのように現状に甘んじ、国も企業も将来を見据えた変革とチャレンジを怠った。
その結果、バブルの崩壊とともにデフレ経済に陥り、今日の停滞と国際的地位の低下をもたらしたのではないか。
平家物語の序章に「おごれるもの久しからず」とあるが、「傲慢・慢心」を戒める格言は多い。ところが人間はこれにハマりやすい生き物なのだ。だから歴史は繰り返し、戦争もバブルも事故も周期的に発生する。
今、必要なのは国際的評価を謙虚に受け止めること。その上で、目立った資源はなく、少子高齢化と人口減少により国内市場の縮小が進む我が国が、今後発展を遂げるには、「先端技術立国」「海外投資立国」を目指し、世界で活躍する人材の育成が不可欠だ。