8月26日付「物流ニッポン」紙の5面「ちょっといっぷく」コーナーに「敵を知ることが大切」と題して掲載されました。右側の画像では記事の文字が小さいので以下に転記しておきます。
44年前、35歳の時、妻と子供2人(2歳、3歳)を伴って、当時在籍していた化学会社の米国法人(ニューヨーク)に赴任し、5年半勤務した。念願叶ってのことだった。米国生活について語るには紙面がいくらあっても足りない。それくらい若さと気力がみなぎっていた。
米国の面積は日本の約26倍、人口は約2.6倍。GDPは4倍強。自給自足が可能な国だ。こういった大国を相手にビジネスをするには、タフでなければならない。在任中、年間約120回のフライトとレンタカーを駆使し、主要都市を駆け巡った。日本からの来訪者も多かった。
初めて訪米の方々の帰国時の感想は、一様に「日本はなぜこんな国と戦争をしたんだろう」だった。主因は、「孫子の兵法」にある「敵を知り」を軽んじたからだ。軍の中枢部では例外的に、山本五十六連合艦隊司令長官(当時)は開戦に反対だったと聞いた。同長官はハーバード大学に2年間留学し、後に大使館付武官として更に2年勤務し、米国の底力を知り尽くしていた。
しかし遂には抗しきれず、考えた作戦が、米国民の戦意喪失を狙った「真珠湾攻撃」だった。ところが「宣戦布告」が遅れた状態での奇襲となり、逆に米国民の戦意を高め「トラの尻尾を踏む」結果となった。長官の軍人魂と心情を察するとともに、ビジネスでも「チャレンジ」と「無謀」は異なること、そして「敵を知り、己を知る」ことの大切さを教えられた。米国での経験は後年、ロサンゼルス近郊で冷凍冷蔵倉庫事業を立ち上げる際に何より役立った。