ブログ

2021年09月03日

「コロナ・ワクチンに異物混入、その背後にあるもの」

依然としてコロナ感染問題が深刻です。切り札となるワクチンに、新たに異物混入という問題が生じています。なぜ厳格な生産・品質管理の下で異物が混入したのか。目下、様々な角度からチェックが行われており、いずれ原因が解明されることでしょう。

医薬品も食品も人間の体内に入るという点では同じです。以前、私はある比較的小規模の食品メーカーの創業者社長から、「人の口に入るものを造ることが、どれほど恐ろしいことか自分が一番よく知っている」と聞いたことがあります。そして「安全・品質管理」について妥協を許さない、きわめて厳しい姿勢を学びました。組織が大きくなり、機能が多岐にわたり専門化すればするほど、部門間に「見えない壁」というか「縦割り」の弊害が生じます。そのため「安全・品質」といった基本理念をどう浸透させ、徹底するかが重要になります。一策として、出荷する前に最終チェックする「品質管理部門」に独立性と絶対的権限を与え、「忖度」や「裁量」を入れないことです。 

さて、工場で生産される製品が、商品として消費者に届くまでのフローは、一般的には、原料・資材購入→工場搬入→「製造」→品質検査→包装→工場内横持・在庫→出荷→外部在庫(卸・小売り等)→配送(ラスト・ワンマイル)→消費者となります。ここから製造部門以外に、いかに多くの人と様々な形で物流が関与しているかが分ると思います。こういった一連のプロセスをサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)といいます。これを部分最適でなく全体最適化し、生産性を上げることが適切な経営管理システムとなります。 

なお、大抵の職場や組織では、「作業・品質の安全」や「災害に備える」のため、「マニュアル」を作成しています。そしてトラブルが生じると「マニュアル通りにやったか」が問題にされます。確かに定型的な作業の場合は「マニュアル」が有効です。そして手を変え品を変え、日々新たな気持ちで「凡事徹底」を図り、慢心によるマンネリ化をどう防ぎ、事故を防止するかが課題となります。

ところが自然災害の中でも例えば地震は、いつ、どこで、何時ころ、どの程度の規模等、予知不能です。つまり災害は「マニュアル」通りにはやってきません。指揮命令系統や通信・輸送網も分断されます。そこで大事なことは「想定外のことを想定」すること、換言すれば「正解のない様々な問題」について、普段から職場でケーススタディを通じて議論し、咄嗟の場合の適切な「判断力・心構え」を養っておくことだと思います。「マニュアル」は完璧でも安全を保証するものではないのです。 

現在接種が進んでいるワクチンの中には、-70℃という温度管理が必要な製品があります(食品の場合はせいぜい-30℃度程度)。どこで生じた管理・輸送ミスでも、たちまち品質は劣化し使い物になりません。私は長年物流業界に携わってきましたが、海外からの輸入品で、これほど大量かつ厳しい温度管理の下、短期日に正確に全国津々浦々へ輸送、そして小分け・配送作業を経て、最後に接種というような複雑なSCMを経験したことがありません。

事態は緊急性を増しています。ワクチンの供給に携わっておられる関係各位のご苦労に心からお礼を申し上げますとともに、密接な連携の下、安全に職務を全うされることを願って止みません。

その他のブログ