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2022年03月25日

米国でのくらしとビジネスを振り返って(5)(37)

社会保障番号を取得した後、私がやるべきことは家族が住む家を決めることでした。
ニューヨーク市には5つの区(borough)ーマンハッタン区、ブルックリン区、クイーンズ区、ブロンクス区、スタッテンアイランド区があります。因みにマンハッタン区は面積が東京の山手線の内側とほぼ同じで、ハドソン川とイースト川に囲まれた島です。1626年にオランダ人がインディアンから24ドル相当で買い取ったとされています。
結局、私はブロンクス区に住むことにしました。当時はマンハッタン島内には日本語学校がなかったことと、ブロンクス区には日本人駐在員が多く居住していたからです。海外では勤務先が違っていても同じ日本人同士で援け合うという気持ちが一段と強いように思います。場所はマンハッタン島の少し北、ハドソン川とイースト川に分岐するところで、選んだのは高層アパートの14階でした。

なお、日本では「自分はマンションに住んでいる」と普通に言いますが、これは和製英語です。米国人が聞くとビックリします。英語でマンション(Mansion)は「大邸宅、豪邸」を意味するからです。いくら高級でも賃貸はアパート(Apartment)。分譲物件はコンドミニアム(Condominium)と言います。
「地元社会に溶け込む」には一軒家に住み、隣近所とお付き合いするのが理想的です。しかし駐在員は出張で家を空けることが多いことや、治安や、雪が積もって家の前で滑って転んで訴えられたとか、水道・電気・トイレが故障しても、業者がなかなか修理に来ないといった現実も考慮せざるを得ず、アパートを選択しました。

さて、娘は3歳で渡米して直ぐ、公立のナーサリースクールに入園しました。日本では自宅の前を通る園児を見て、「自分も早く一緒に行きたい」と楽しみにしていたようです。ところが通園し始めてから3日目くらい、時間になってもドアの前であおむけになって動かない。登校拒否です。理由を聞くと「先生の言うことが何もわからない」。当時は米国で生まれ育った子も、きのう外国からやって来た子も同じ扱いでした。従って「水を飲みたい」、「おしっこに行きたい」も、どういってよいかわからない。しかし何とか無理にでも通わせているうちに、子供なりに必死に耳から言葉を学び、そのうち友達もできます。朝食時、私が「バター取って」というと、「Teacherはそんな言い方しないよ。“ヴァター”というんだよ」と訂正されたこともありました。そして5年経っていよいよ帰国となると、今度は「帰りたくない」と言い出す始末。子供の適応力に驚くとともに、やはり語学は読み・書き・文法より、先ず「耳から学び話すこと」を実感しました。

米国では幼少期から学校では毎朝、始業時に日替わりで前に立ち、胸に手を当て国歌「星条旗よ永遠なれ」を斉唱します。そして授業は先生が一方的に話すのではなく双方向のコミュニケーション方式です。最近は日本も変わったかもしれませんが、以前は「先生の教えることが唯一正しい」として、「黙って聞く」のがよい生徒でした。そのせいか大人になってからも講演会等で殆ど質問は出ません。日本式は輸送船団的というか、ある程度のレベルの均質な人材養成には適しているかもしれません。しかし結果として日本人は異質なものを受け入れるのが苦手です。

一方、米国では幼少期から授業は正解のないテーマ(ケーススタディ)をベースにディベイート(自由討議)が中心です。これにより子供のころから様々な発想、ものの見方、考え方に接し多様性が育まれるのです。また米国では「短所を無理に直すより、長所を見出し伸ばす」ことに重点を置きます。「日本ではなぜアップルやグーグルといった、独創性を活かした企業が生まれないのか」と問われますが、その背景に幼少期からの教育の在り方もあるのではないでしようか。

■■追記―ロシアのウクライナ侵攻に関して
1989年に東西冷戦が終結して以降、世界は主要国が直接戦火を交えることはなく、今日まで平和と安定が維持されてきました。それにより世界経済は急速にグローバル化が進み、世界貿易も順調に拡大しました。ところが去る2月24日、時計の針を戻すように、ロシアが突然ウクライナに侵攻しました。今やウクライナは戦場と化し、既に幼い子供を含む多数の尊い生命が奪われ、すさまじい破壊が続いています。

今回のロシアの暴挙は新たな東西冷戦構造の再来に止まらず、この20年の間に軍事・経済大国として台頭してきた中国の存在も加わり、世界情勢は極めて複雑な様相を呈し、しかも正常化には長期間を要すると思われます。
世界経済は未だコロナというパンデミックの影響から抜け切れず、その上、石油を始めとする資源価格の高騰や、サプライチェーンの目詰まりにより生じたインフレが、この度の厳しい対ロシア経済制裁により更に加速することが懸念されます。
こういった国際情勢が、世界の金融・貿易・海運・航空・物流業界に影響を及ぼし、現地進出企業の活動も制限を受け始めています。その結果、海外投資・観光等を柱とするグローバル化は見直しを迫られ、世界経済の先行きは極めて不透明になっており、企業経営には十分な警戒が必要です。

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