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2024年04月05日

ちょっと気になる記事・話題(131)

いよいよ4月に入りました。企業、官庁、諸団体では4月1日(月)、一斉に入社式や入庁式等が挙行されたことと思います。私も今から58年前、社会人の1人として巣立ったことを昨日の如く思い出します。私の第一歩はそれまでまったく縁もゆかりもなかった山口県宇部市から始まりました。同期入社は110人くらいでしたが、多くが関東、関西の出身でした。1ヵ月間の新入社員研修の後、私は化学品製造工場に配属されました。そして出勤初日、現場の皆さんに「おはようございます!」と挨拶したところ、返ってきたのは「ました!」という返事でした。この挨拶の流儀は、今は知りませんが地元の慣習のようでした。そのほか「ごっぼ(大変、非常に)、わやじゃ(めちゃくちゃ)」や、「破れとる(壊れている)」、「は―(もう)帰るか」、「そうじゃけー」といった方言も数々あり戸惑いました。学卒の現場配属第一号で、しかも東京からやって来た若造ですから最初は好奇の目で見られましたが、ケガや事故がないよう随分大事に扱われました。そして現場に馴染むにつれ、午後4時に勤務が終わると、大阪の「ホルモン焼き」に似た「とんちゃん鍋」や、フグ、シャコ、イイダコといった新鮮な海の幸を肴に、現場のオヤジさん達(作業員)とよく飲んだものです。よく釣りにも行きました。現場見学では瀬戸内海に突き出た、地下約200メートルの石炭採掘の最先端(切羽・きりは)まで行き、そこで体を二つに折って石炭を掘っている人たちの姿を目の当たりにしました。また、過激な労働組合活動やストライキも経験しました。なお、宇部は企業城下町でしたから、新入社員でも名刺さえあれば初めて訪れる飲み屋でもタクシーでもつけ払いOK。そのため給料日にはそっくりそのまま集金(借金取り)に持っていかれ、一体何のために働いているか分からないような新入社員時代でした。今となっては全て懐かしい思い出ばかりです。宇部での生活は僅か3年ほどでしたが、現場での経験や地元の人達との触れ合いは、その後の私の人生に有形無形の教えとして活きました。
そこで若い人たちに申し上げたいことは、入社したら「一見するとつまらない」と思うことでも、「ともかく理屈抜きで、がむしゃらにやってみろ(challege)」です。それが今の日本人に欠ける「アニマル・スピリット」を育み、これからの「人生100年時代」を生き抜く「人間力」を高めるのです。私も仕事のやり方で何度か上司とぶつかりました。今振り返ると「赤面の至り」もありました。しかし「猪突猛進」でも「若気のせい」でも構わない、どんなことでも全身全霊、真剣な気持ちでやった結果であれば、例え失敗に終わっても、若い頃の経験は決してムダにはなりません。そして「人間到る処青山有り」であり、「捨てる神あれば拾う神あり」、決して諦める必要はありません。また、「自己実現」のためには狭い日本に捉われず、世界に目を拡げるべきです。それが若さの特権です。

■■最近想ったこと・注目したこと:
■内閣府、社会への不満調査(昨年11~12月実施、18歳以上3000人対象、回収率57.1%):
内閣府がこのほど発表した「社会意識に関する世論調査」によりますと、現在の社会で満足していない点を複数回答で質問したところ、「経済的なゆとりと見通しが持てない」が、昨年3月公表の前回より0.7ポイント増の63.2%で最多でした。2位以下は「子育てがしにくい」(28.6%)、「若者が社会での自立をめざしにくい」(28.2%)、「女性が社会での自立を目指しにくい」(26.2%)、「働きやすい環境が整っていない」(25.8%)でした。そして日本で悪い方向に向かっている分野(複数回答)については、「物価」が69.4%でトップ。「国の財政」(58.4%)、「景気」(58.1%)、「経済力」(46.7%)でした。一方、「良い方向に向かっている分野は「特にない」と「医療・福祉」が25.5%、「治安」が18.6%だったとのこと。質問の矛先が政治には向けられていませんが、この調査結果は日本の現状についての国民の意識(将来不安に結び付く)を的確に表していると思います。
因みに、我が国では昨年の生活保護申請件数が前年比7.6%増(25.5万件)と4年連続増加しました。受給している世帯は昨年12月末現在で165.4万世帯と、過去最多を更新しています。受給世帯のうち高齢者世帯が昨年末現在で55%に達し、20年前に比べ10ポイント上昇しており、今後この傾向がさらに強まると考えられます。
また、厚労省によると我が国の2021年における相対的貧困率(※)は15.4%となり、30年前より1.9ポイント高くなっています。OECDによると米国は2021年に15.1%、英国は2020年に11.2%でした。我が国は米英と比べると国内の経済格差がやや大きい状態といえます。なお、2021年の子ども(18歳未満)の貧困率は11.5%となり、前回(2018年)の14.0%から2.5ポイント改善されました。
このほか我が国の深刻な社会問題として、2022年に内閣府が行った調査によると、引きこもりの人数が2019年比30万人増え146万人に達しています。また児童や高齢者への虐待・いじめや様々なハラスメントも増加しています。そして小学校6年生の15人に一人が「世話をする家族がいる」、いわゆるヤングケアラーです。また昨年は約10万人が親の介護のため離職しました。
(※)相対的貧困率:1その国の等価か処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯のことを指す。

こういった問題の底流に少子高齢化や低経済成長が指摘されます。我が国はこれまで60年間に1000兆円(GDPの2倍以上)を超える借金(国債発行)を積み上げながら、国力、ひいては国際的地位の低下が続いています。この要因について私見を述べますと、一つには国も企業も有形資産(箱もの)への投資を重視し、それを有効活用するソフト(無形資産)、つまり人材育成・研究開発等への投資が不十分だったことです。その結果、ハードへの投資を十分生かせず、生産性は先進国で最下位という結果を招いたように思います。そしてもう一つは、過去における産業政策が「護送船団方式」を重視したことです。特に中小企業政策です。これはいわゆる政財官のもたれあいの構図で、再編・淘汰が進まず多数のゾンビ企業を抱え、全法人企業(2021年度で約285万社)の6割超が赤字企業で、法人税を払わない(払えない)といった有様です。かつて小泉政権はバブル経済の遺産とされる不良債権処理について荒療治を行いました。その結果、日本の金融システムは強化され、2008年に起こった世界的な金融危機「リーマンショック」を大過なく乗り越えたのは好例です。

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