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2021年10月08日

体験から学んだ中国観(3)ー「民主主義VS共産主義」

これまで2回にわたり、「体験から学んだ中国観」について記しました。私が学んだ事は、中国(共産党)は原理原則については、決して「妥協しない」ことです。この点は外交面や、最近のハイテク企業、教育・文化・芸術等への統制強化でも示されています。一方、世界で中国を最大の貿易相手国とする国数は64カ国に達し、米国を最大とする38カ国を大きく上回る等、中国の存在感が高まり国際情勢は複雑化しています。
他方、対極に位置づけられる民主主義も、世界的に制度疲労や様々な問題を惹起しています。この点について昨年10月、私は下記拙文をある全国紙のコラム(約1000字限定)に投稿しました。結果は残念ながら「没」でしたが、是非、ご照覧いただきたく掲載いたします。

- - - -   - -   - -「民主主義のワナ」 (2020年10月執筆)- - - - - -   - - - 

最近、我が国のみならず世界中の自由主義国で民主主義の劣化、目詰まりを感じます。もとより民主主義の原則は国民主権であり、その根底にあるのが選挙制度です。ところがわが国では最近、選挙への関心が薄く投票率は低迷しています。
なお、民主主義の最大の弱点は選挙に伴うポピュリズム(大衆迎合主義)です。そのため国民に痛みを伴うような政策はとりづらくなっています。結果的に国家の根幹にある重要な政策がなかなか決まらない状態に陥っています。
例えば憲法や防衛問題、原子力政策、それに社会保障や、最近ではDX(デジタル化)に不可欠なマイナンバーカード等々、いずれも国のあり方を左右する重要な問題です。ところが議論や実施が遅々として前に進みません。このスピード感の欠如はわが国の生産性の低さと、1%を下回る潜在成長率の一因となっているように思われます。これは「人材」以外にこれといった資源がなく、その上、少子高齢化と人口減少が急速に進むわが国にとって深刻な問題です。
一方、現在の世界情勢を考えると、隣国・中国の存在を意識せざるを得ません。中国は全体主義・国家資本主義を旗印に掲げ、共産党一党支配の下、国政レベルでの選挙の心配がありません。その結果、政策の立案・実行のスピードが速く、これが最近の新型コロナ対策と経済の復元力をもたらしたことは否定できません。
ところが同国では豊かさと便利さ、それに大国気分と引き換えに人々の行動や自由は制限される監視社会です。これはいうなれば二者択一かもしれません。また、同国は格差の拡大や人権問題等、様々な問題を内包しており、このまま順調に発展を遂げるかどうかも分かりません。
わが国は先の戦争により多大の犠牲を払って民主主義に移行しました。ところが最近、その原点が忘れられているように思います。民主主義は国民がその価値と意味を熟知してこそ機能します。しかしながら今は好き放題のことを言い、権利を主張することが民主主義とはき違え、「自由と権利」の対称軸に「ルールと義務」があること、そしてそれなりの「自制心」が必要なことが軽んじられているように思います。

まとめとして、このままではわが国は「民主主義のワナ」に陥り、国家の発展は厳しいように思います。今一度、国民が民主主義のあり方と価値について学び、現下の国際情勢の下、諸問題への対応について考えるべきではないでしょうか。

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