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2021年10月29日

ブータン王国名誉領事を務めて学んだこと(2)(18)

私は2010年4月から本年6月末まで約11年間、ブータン王国在大阪(関西地区)名誉領事を大過なく務めることが出来ましたが、これはひとえに関係各位のご支援の賜物であり心から感謝しております。

同王国は、16歳で即位し32年間にわたって王位にあった、前国王時代まで専制君主制でしたが、2006年12月にジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク現国王(第5代)が王位を継承した後、憲法の制定を経て、2008年7月立憲君主制へと移行しました。
私が国王陛下・妃殿下に初めて謁見の栄に10年9月、在大阪名誉領事を拝命したことに伴い、着任挨拶のため同国政府のお招きで訪問した時でした。
私は在任中7回、同王国を訪問しましたが、その間ほとんどの場合、国王に謁見する機会を与えられ、時には私邸の書斎で「余人を入れず」といったこともありました。こういったことを通じ国王の聡明で温かいお人柄と日本の皇室と日本人への深い敬愛の念が手に取るように伝わってきました。
なお、訪問の中でも思い出深いのは、歌手・加藤登紀子さんのたっての希望で、現地で野外コンサートを開催した時です。開催地・首都ティンプーは海抜約2400mの高地ですが、そんなことはお構いなく朗々とした歌声で、現地の有名歌手とのコラボも大成功で、さすが大歌手、そして彼女のブータンへの思いを強く感じました。

一方、在任中に、国王陛下ご夫妻を二度にわたって日本でお迎えしました。最初は2011年11月、国賓としてのご来訪で、ご成婚直後であったことから、いわば新婚旅行のような形となりました。同年は3月に東日本大震災が発生し甚大な被災と多数の死傷者、それに福島第一原発事故もあり、日本人の心は打ちひしがれていました。そういった中での美しく初々しい国王ご夫妻のお姿は、「すがすがしい一陣の風が日本中を吹き抜けた」印象で、日本人に勇気と感動を与え、日に日に人気が高まるのを感じました。6日間という短期日でしたが、震災地への鎮魂の旅、皇室へのご挨拶、宮中晩餐会、国会でのご挨拶、京都訪問(着物、お茶、お花の経験)等、盛りだくさんでした。私も福島県訪問以外はほとんどの日程に随行し、得難い経験をさせていただきました。なお、国会・本会議場での流暢な英語のスピーチは31歳とは思えない堂々たるもので、議場を埋め尽くした衆参両院の国会議員から万雷の拍手でした。
二度目のご訪日は2019年10月に行われた令和天皇の「即位の礼」への参列でした。この時は東京での公務終了後、関西訪問のご希望がありましたが、結局は時間がなく実現できませんでした。東京での歓迎レセプションでは3歳になられた王子を伴われ、すっかりくつろいだ様子で参加者の中に自ら入っていかれ、写真撮影にも応じておられました。

このように国王陛下・妃殿下とは数々の思い出がありますが、国王に謁見する度に「一度、是非、相撲を観たい」と仰っておられたことを実現できなかったことが、ちょっと心残りです。次号ではブータンを通じて学んだ「幸せとは」について語りたいと思います。

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