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2021年11月26日

国際化と国際人の育成(1)(22)

前号で「次はアメリカ」と記しましたが、その前に私のつたない経験に基づき「国際化と人材」について、私なりに述べてみたいと思います。
我が国は世界最速で少子高齢化が進むと同時に、2008年をピークに人口減少社会に突入しています。その影響でほとんどの業界で国内市場は縮小傾向にあります。そのためこれといった資源がない我が国が、今後、現在の生活水準を維持していくには、画期的な新技術の開発を進めるか、海外諸国の成長エネルギーを採り入れる、つまり「グローバル化」に取り組むことが不可欠です。なお、一口に「グローバル化」といっても「外へのグローバル化」と「内なるグローバル化」があります。 

かつて経済界では「グローバル化」といえば、輸入された原材料を使い生産した製品を輸出することでした。永く「貿易立国」と称されてきた由縁です。そして国内が不況になると「輸出ドライブ」をかけ、需給バランスを図るのが景気対策の常套手段でした。一時は日本製品は「安かろう、悪かろう」と言われたこともありました。そして現地での活動は殆どが「商社任せ」でした。ところが国内の生産コストの上昇と、輸出先である新興国の発展と経済ナショナリズムの台頭により、時代は大きく変わってきました。
第一段階は完成品の輸出で済みましたが、第二段階として輸入国側の労働力の活用を求められ、半製品の状態で持ち込み現地で完成品にする形に変わりました。さらに次の段階として、現地で原材料・部品を調達し、現地の人たちを雇用し生産した製品を現地市場で販売、或いは輸出するという形態に変わってきています。そして製品も日本仕様ではなく、現地のニーズに合うものを生産することが必要です。それに伴い、駐在員は語学力を含めた「コミュニケーション能力」に加え、現地企業の育成をはじめ、サプライ・チェーンを構築する「マネジメント(経営管理)能力」が必須となります。 

一方、国内では産業の空洞化、地方経済・社会の疲弊といった問題も生じています。経済体質・構造も大きく変わってきています。2020年における我が国の対外純資産は約357兆円で30年連続で世界最大です。貿易収支も現地法人や合弁・投資からのリターンが支える構造になっています。もはや「貿易立国」というより「対外投資立国」です。同時に海外から我が国に投資を呼び込むことも重要です。ところが香港からの外国企業の脱出先として、我が国は必ずしも受け皿になっていません。また世界に冠たる「国際金融都市」実現も簡単ではありません(英シンクタンクなどによるランキングは、現在、1位・ニューヨーク、2位・ロンドン、3位・上海、4位・東京・・・・・・・、39位・大阪)。
前に進めるには受け入れのための環境整備、即ち我が国固有の規制や制度・慣習の改革、そして異質なものを積極的に受け入れる社会に変わる必要があります。先ずは「日本の常識は世界の非常識」を解消し、「内なるグローバル化」を進めることです。 

こういった時代に我が国企業の共通の課題が、時代のニーズに適応出来る「人材」です。我が国は伝統的に「ものづくり国家」を標榜してきました。そのため「売れるものを造る」というより、「世界一高性能なものを造る」、つまりハードにウェートを置いてきました。いわば「ガラパゴス化」です。その一方でグローバル化時代に対応出来る「人材養成」、つまり「ソフト力」への投資は手薄でした。今そのツケが回ってきているように思います。今後は若い人たちが積極的に国際交流し、「主体性を持ってチャレンジする場」をつくることと、グローバル化を見据えた「自覚」と「自助努力」が必要と考えます。

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