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2022年02月04日

世界を地球儀で見て、考えよう(31)

早くも今週から2月です。その初日、東京では平年より10日遅れで白梅が開花したそうです。2月を代表する「季語」は立春、早春等々、何となく春の温かさを感じます。ところが受験生にとっては厳しい時期です。私も61年前、初めて東海道本線・特急「はと」に乗り、何とも言えぬ不安と、早く受験勉強から解放されたいという気持ちを抱きながら、一人で上京したことが蘇ります。ちなみに当時は東海道新幹線は開通しておらず(1964年開業)、大阪・東京間は特急でも7時間半かかりました。そして電話も固定電話に限られていたので、両親への「合格」の連絡に手間取り、後日、母親から「心配で何も手に付かなかった」と言われたことが、昨日のごとく思い出されます。

さて、みなさんの身の回りには地球儀はあるでしょうか。地球儀を見ていると様々な「発見」があります。私たちが日常見ている平面の地図はそれぞれ国によって異なり、当事国が真ん中に位置しています。経度はイギリスを起点としており、同国の地図では日本(東経135度)は右端にあり極東(Far East)と言われる所以です。そのため我が国は「日出ずる国」(Land of Rising Sun)といわれますが、これは日本国旗にも反映されているように思います。

一方、地球儀では各国とも定位置はなく、ぐるぐる回せば見る位置・角度が自由自在に変わります。逆さまにすれば全く別な姿になります。つまり視点を水平(Horizontal)から立体・垂直 (Vertical)に変えると、それぞれの国の広さ、国家間の距離、南北関係が一目瞭然です。そこに様々な「発見」があります。例えば我が国と中国や韓国、台湾等、近隣国間、そして今、緊張が高まるウクライナ・イラン・ロシアと欧州間、それに先日海底火山が噴火したトンガとの距離や位置関係等々です。

ところで、私自身を含め、所詮人間は自分の器というか物差しでしか、ものを見れないように思います。皮肉な言い方では「井の中の蛙、大海を知らず」といいます。例えば我が国は国土が狭いため、その感覚で捉えがちです。その一方で外国というだけで、中国や韓国、台湾、フィリピンのように飛行機で1時間程度、或いは精々3時間程度でも遠いところという先入観があります。今はグローバル化が進んでいるので笑われるでしょうが、ニューヨークで勤務していた頃、日本の知人から「友人がサンフランシスコに赴任したからよろしく頼む」という手紙が届きました。ところがニューヨークとサンフランシスコは、飛行機で6時間半、時差も3時間あります。これは日本とシンガポールの距離(飛行時間約7時間)にほぼ相当します。

思考方法や観点を変えることは、ビジネスの世界でも極めて大事です。つまり「水平・垂直思考」、に加え、「逆転の発想」を加えることです。「押してダメなら引いてみな」とも言います。そういった点で私は、昭和の最後の相場師といわれた是川銀蔵の「人の行く裏に道あり花の山」という言葉が好きです。これは「バクチをしろ」というのではなく「逆張り」、今風に言えば「ブルーオーシャン戦略」、つまり「やたらに他人・他社の真似や追随をせず、オリジナリティを持て」ということです。私は事業経営に当たっては常にこの精神を大事にしてきました。我が国は伝統的に「横並びと前例主義」が根強く、「赤信号、みんなで渡れば・・・何とやら」です。それが「過当競争→低生産性→低収益率」をもたらすとともに、アニマル・スピリットが生まれにくく、結果としてスタートアップやユニコーンが育ちにくい背景にあるように思います。

是非、子供たちには地球儀で世界を見て、幼少期から「水平・垂直思考」に加え、「逆転の発想」を身に付けてほしいものです。もちろん年齢にかかわりなく、自分の「器」、「物差し」を拡げる不断の努力が必要なことは申し上げるまでもありません。

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