連日、熱戦が繰り広げられている北京・冬季オリンピックも、残すところあと二日(2月20日閉幕)となりました。選手の汗と涙に感動すると同時に、スポーツの世界の厳しさ・残酷さも感じます。そして次に3月4日から10日間、パラリンピックが開催されます。
さて、最近の大きな話題といえば、①依然として世界的に猛威を振るう新型コロナ・ウイルス、➁ウクライナを巡る米欧対ロシアの対立、③世界的に顕著になっているインフレ(物価上昇)が挙げられます。これらについて私のコメントを記します。
① 新型コロナ・ウイルスについて:
昨年11月に確認された「オミクロン株」が依然として猛威を振るい、2月8日に累計感染者数は4億人(世界人口の約5%)を突破しました。この1カ月で1億人増加したことになります。死者数も580万人を超えました。一方、国内でも累計感染者数が400万人、そして死者数も2万人を超えています。しかし従来型より感染力は強いものの重症化のリスクは低いことや、対症療法が進化していること、それに3回目のワクチン接種が近々本格化していくことから、世界的にも国内的にも「With コロナ」が定着しつつあり、今後、経済への影響も徐々に抑制されていくように思われます。ただし感染者急増により病床がひっ迫し、自宅療養が50万人を超える現状と感染した場合の不安を考えると、やはり予防に万全を期すべきでしょう。
② ウクライナ問題:
米国並びにNATOを中心とする西側とロシアの間でウクライナを巡る緊張がひっ迫しており、ロシアによる侵攻・侵略(Invasion)が懸念されています。西側の最大の弱点は天然ガスの輸入の3割以上をロシアに依存していることです。特にドイツはパイプライン経由で55%を占めています。それぞれの国の事情によってロシアへの対応に温度差があることから、米国は結束力の維持・強化に腐心しています。
ほとんどの天然資源を輸入する我が国も、特に国家体制・イデオロギーが異なる国への過度の依存は大きなリスクです。民間企業の経営も同様で、地政学的リスクから生じる事象や自然災害等に備え、危機管理の一環としてBCP(Business Continuity Plan=緊急時対応態勢)を、可能な限り策定しておくことが重要です。
思い起こせば1969年7月16日、米国のアポロ11号が月に着陸し、人類が初めて月面に降り立った時、私は26歳でしたが、正直なところ私はこれで人類の歴史が変わると期待しました。月から送られた、宇宙に浮かぶ「ちっぽけながら美しい地球」の映像を見て、人類の世界観・人生観が変わり、人種や宗教の違いや領土を巡る戦争・紛争はなくなると思ったのです。ところがその後50年余経った今日も、残念ながら何も変わっておらず、人類とは「なんと愚かな生物か」という思いです。
③ インフレ(消費者物価指数=CPI、上昇)について:
最近、世界的にインフレという言葉が飛び交い、米国、欧州等、主要先進国では想定以上にCPIが上昇(米国は約40年ぶりの伸び率)していることから、金融は緩和から引き締めに転じつつあります。この背景として、コロナ対策のための財政支出増による需要増加、並びに地政学的リスクによる石油や天然ガスの価格高騰、様々な事情による鉄鉱石、石炭といった資源価格の上昇、そして気候変動による小麦やトウモロコシ等食料品価格の高騰が挙げられます。こういった要因に加え、新型コロナの感染拡大によるサプライチェーン(物流)の目詰まりといった、供給制約が生じています。
更に我が国の場合はこれに円安が加わります。そして4月以降は携帯電話料金値下げによる押し下げ要因が消えることから、消費者物価上昇率(CPI)の2%レベルへの上昇が見込まれ、「デフレ」から「インフレ」への移行が現実味を帯びてきました。一方我が国は依然として低経済成長が続いており、財政・金融政策や為替レート、そして賃上げや個人消費の動向等、企業経営にとって目が離せない局面に入っています。