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2022年04月01日

米国でのくらしとビジネスを振り返って(6)(38)

米国では3月第2日曜日から11月の第1日曜日まで、「サマータイム(夏時間)」が実施されます。この制度は日本人には馴染みがありませんが、時計の針を1時間進め、太陽の出ている時間帯を有効に利用することを目指し、欧米を中心に導入されています。なお「サマータイム」は米国では通常「デイライト・セービング(Daylight Saving Time(DLT))」と呼ばれ、その趣旨がより明確です。

私が宇部興産・米国会社(ニューヨーク)にて勤務していた時は、日本で製造された石油化学製品を米国内で販売し、逆に米国産の化学品原料を日本に輸出する仕事を担当していました。そのためカリフォルニアや、テキサス、ルイジアナといった工業州を何度も訪問しました。そして主要都市以外にも、日本からのお客さんに随行し、ワシントンやボストン、フィラデルフィア、ダラス、ニューオリンズ、そしてアラモの砦で知られるサンアントニオといったところも訪れました。在任中、ナイアガラの滝には10回以上は行ったと思います。ラスベガスも思い出深い町です。今日本で計画されているIR(カジノを含む統合型リゾート)は、果たしてあの華やいだ雰囲気を醸し出せるでしょうか。

一方、鴻池運輸時代にロサンゼルス地区で冷凍冷蔵倉庫事業を立ち上げた後は、取り扱う貨物の多くが米国産の食肉であることから、訪れる地域はネブラスカ州オマハやユタ州ソルトレイクシティのような内陸部でした。そこで調達された食肉が、冷凍貨車(80トン積み)やトレーラーでロサンゼルスまで運ばれ、鴻池の倉庫で一時保管され、海上コンテナに積み替えられた後、日本を始め海外に輸出されるのです。

そしてオクラホマ州のタルサのような、かつては石油採掘で栄えた街も訪れました。そこでは1956年公開のテキサス州を舞台とする映画、「ジャイアンツ」の中で、ジェームス・ディーン扮する牧童が石油を掘り当て、天高く噴き上げる石油に雄叫びを上げるシーンを彷彿とさせました。エリザベス・テイラーとロック・ハドソンが演じる夫婦像も、いにしえのアメリカ社会を知る上で大変印象的でした。また、片田舎で何気なく入ったレストランの、おいしかったビーン・スープの味を今も懐かしく思い出します。

米国で驚くことは地方の生活が豊かなことと、世界的に有名な企業の本社の多くが地方に分散していることです。例えば化学品メーカーではダウ・ケミカルはミシガン州・ミッドランド、デュポンはデラウェア州・ウイルミントン、ユニオン・カーバイドはコネティカット州・ダンベリー、モンサントはミズーリ州・セントルイス等です。マイクロソフトやアップル等、ハイテク企業も地方に本社を置いています。米国は国土が日本の26倍と広く、州への分権が進んでいることも背景にあります。そのため出張は往復4~5回飛行機を乗り継いだり、レンタカーを駆使しますので米国でのビジネスは体力勝負です。

一方、我が国では行政機関はもとより、東京に本社を置く上場企業数は全体の半数近くを占めています。業界団体の本部も、マスコミも教育関係も東京に集中しています。こういった東京への一極集中は確かに効率的で便利です。しかしいつ起るかわからない首都直下型地震や、富士山の噴火といった自然災害だけでなく、安全保障上の様々なリスクに対して極めて脆弱です。首都機能を喪失する恐れさえあります。この点を踏まえた議論が必要ですが、実質的な議論は殆ど進んでいません。災害や「まさかの事」が起こってからでは遅いのですが、果たしてこれでよいのでしょうか。

追記: 本年1月7日に配信したブログで、米国の調査会社ユーラシア・グループが、本年の世界の「10大リスク」の筆頭に、「中国のゼロコロナ政策」の失敗で、世界経済や各国の政情が不安定化する事態を挙げている、と記しました。最近の動きを見ますとそれが現実になりつつあり、世界経済の先行きへの影響が懸念されます。
なお、中国政府は感染拡大を抑えるため、上海で3月28日から9日間、市内を東西に分けて都市封鎖を実施中です。コンテナ海運大手APモラー・マースクによると「上海を往来する輸送サービスの30%が深刻な影響を受ける」としています。

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