私は米国での駐在経験以外に、中国やインド、それにベトナムを始めアジア諸国を中心に様々な国の人達と一緒に仕事をしてきました。中にはうまくいった場合もあれば、うまくいかなかった案件もあります。そして仕事で四苦八苦しながら、時にはぶっ倒れるほどパイチュー(白酒-中国)のような強い地酒も飲み、人生を語り合い喜怒哀楽を共にしてきました。そういったことを通じ、感じることは外国の人々とうまく交流する方法は特別なものではなく、基本的には日本人同士と同じだということです。お互いのものの見方、考え方の違いがどこにあるかを知り、それを認め合うことだと思います。
勿論、単に外国語を話せるだけでは、真の国際人として必要十分とはいえません。また、どちらかが相手に無理に合わせようとすれば交流は長続きしません。例え民族、宗教、言語、国家体制が異なっても、率直に心を開く、つまりハートがあれば理解し合えるものです。そして大事なことは役職とか地位と関係なく、鎧・兜を脱ぎ捨て人間同士として、いわば裸の付き合いが大切です。
私は幸運にも、今まで国王や国家主席、大統領といった国家元首を始め、世界的な富豪という方々と接する機会がありました。中にはお立場を超えて親しくさせていただいた方々もおられます。これは私にとって人生の宝物です。それぞれの方々は言葉では表せないオーラというか、時には近寄りがたい雰囲気も感じました。地位や権威という目には見えない壁を意識するからかもしれません。しかしそういうベールのようなものを通り抜けると、非常に人間性に富んだ実像が現れ、改めて同じ人間なんだと気づくことがあります。そして何よりもそういう立場の人たちのほとんどは、日常の取り巻き以外の人達と、気持ちが通じ合うひと時を求めているのです。
因みに世界的な富豪とも親しくさせていただきましたが、こういった人物とはカネで勝負しないことです。もちろんそれは無理であり、先方の心はもはや金目ではないのです。何が大事かというと、例えば贈り物はささやかでも気の利いたものです。つまり相手へのキメ細かな気配りと真心です。それほど高価である必要はなく心がけ次第です。中途半端な金持ちほど金銭的な価値にこだわるように思います。
米国では冷凍冷蔵倉庫会社のオーナーと仕事のみならず、個人的にも非常に親しくさせていただきました。夏はネブラスカ州オマハの本宅、そして冬は暖かいアリゾナ州フェニックス近郊のセカンドハウスで過ごし、その間を自家用機で行き来するという生活でした。私は米国に行くといずれかのお宅にたびたび泊めていただきました。そして伺うと必ず自らステーキを焼いてくれました。砂漠とサボテンのゴルフ場でラウンドもしました。自慢の銃のコレクションも嬉しそうに見せてくれました。数年前に他界されましたが、その「心のこもったおもてなし」は何物にも代えがたく、生涯忘れることはない楽しかった思い出です。
私は外国の人々との交流で大事なことは、いろいろな違いを意識せず、ともかく相手の懐に思い切って飛び込むことだと思います。言葉はうまく話せることに越したことはありませんが、ともかくボディランゲージでもよいから気持ちを伝えるよう努めることです。ついでながら私はブータン王国の在大阪名誉領事を昨年7月まで10年間務めましたが、これからの日本に必要なことは民間レベルで外国との交流を更に深めることです。出来れば日本人一人一人が外交官になったつもりで、草の根的な国際交流を一層進めていただきたいものです。
追記: 日本の少子高齢化・人口減少が止まりません。総務省の発表によると、2021年10月1日現在の人口推計(外国人272万人含む)は、前年比約84万人減の1億2550万人となりました。減少は11年連続、減少幅は過去最大です。そして65歳以上の高齢者人口の占める比率は28.9%を占め過去最高となりました。一方、15歳以下の子供の比率は11.8%と過去最低となりました。そして生産年齢(15~64歳)人口は7450万人となり全体の59.4%と過去最低となりました。過去のピーク時であった1992年の69.8%と比較すると10.4ポイント低くなり、今後の労働力不足が避けられません。また出生児数は約83万人と前年比4万人減りました。因みに隣の中国でも少子化が続いていますが、それでも昨年の出生数は日本の12.6倍の約1062万でした。米国は約360万人でした。この差は国力・経済力の違いとして将来顕在化します。想定を上回る少子化は、将来の社会保障制度の支え手を減らし、負担と給付の根底を揺るがしかねません。少子化対策は待ったなしです。