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2022年05月20日

ゴルフを通じ米国について想うこと(44)

今週末は米国オクラホマ州サザン・ヒルズCCにおいて、本年の男子ゴルフのメジャー第2戦、第104回全米プロゴルフ選手権(PGA)が開催されます。日本からも松山英樹ほか5名のプロが出場します。この選手権はゴルフ界で最も権威のある4大トーナメント、即ちマスターズ・トーナメント(4月)、全米プロ(5月)、全米オープン選手権(6月)、ジ・オープン選手権(全英オープン、7月)の一つです。4つのメジャー大会制覇はグランドスラムと称されます。今までにジャック・ニクラスとタイガー・ウッズがこの偉業を三回達成しています。同一年で成し遂げたのは生涯アマチュアを貫いたボビ―ジョーンズだけです (1930年)。

米国勤務中、ゴルフに関して忘れえぬ思い出があります。それは1980年6月に開催された全米オープン選手権でした。舞台はニューヨークから車で西に30分ほどの、ニュージャージー州バルタスロールGC(1895年設立)。私は3日目を現地で観戦しました。私と同年齢の青木 功プロ(当時38歳)と米国ゴルフ界の帝王ジャック・ニクラスとの4日間通しての戦いは歴史に残る名勝負でした。結果は2打差でニクラスが勝利しました。日本での報道は「惜しくも2位」でしたが、現地日本人の受け止め方は「2位でよかった」が率直な気持ちで、正に「価値ある2位」でした。

その背景として米国人が心底から敬愛するニクラスを、当時、米国では未だ無名の青木がひょっとして打ち負かした場合の、米国人の感情を懸念したことと、その頃は乗用車を巡る日米貿易摩擦で、対日感情が極めて悪かったからです。スポーツの世界といえども、政治・経済・社会情勢の影響を避けられず、ナショナリズムを掻き立てます。現にロシアはウクライナ侵攻により、世界の大会からボイコットされています。

私は当時、ジャック・ニクラスやトム・ワトソンのみならず、米国のトッププロが人前でコメントする内容や人柄を見聞きして、日本のプロがメジャーで勝つにふさわしい要件を具えるには、20年は掛かるとみていました。実際には昨年のメジャーの一つ、マスターズで松山英樹プロが初優勝するまで41年を要しました。

そして、松山英樹プロは昨年の表彰式でのスピーチは、日本語で行いました。ところが一年後の先日、同プロが主宰し歴代のマスターズの優勝経験者を招く恒例のパーティーでは、何日もかけて暗記したという英語でスピーチし、大変好評だったそうです。ゴルフや野球のようなスポーツのみならず、ビジネス界でもこういった向上心と、米国社会に溶け込もうとする努力は米国民の心をつかみ、同時に現地への適応力を磨くことになります。松山プロの今後の一層の飛躍に期待するところです。

さて、私は自他共に認める「親米派」です。米国は豊富な資源に恵まれ自給自足が可能です。一方、我が国はこれといった資源はありません。極論すれば「米国は日本なしでやっていける」。ところが現在の国際情勢の下では、我が国は「米国なしではやっていけません」。これは理屈ではなく日本が背負った宿命なのです。従って米国にへつらう必要はありませんが、うまくやっていくことは極めて重要です。

追記:ロシアのウクライナ侵攻に伴い、原油や天然ガス等、エネルギーの供給不足と価格の高騰が世界的に深刻な問題になっています。これに勝るとも劣らぬ難題が食糧供給です。現在ロシアとウクライナ合計で世界の年間小麦販売量の約3割を占めています。これがロシアの侵攻でストップしています。毎年のように発生する干ばつや大洪水による収穫減もあり、世界食糧計画(WFP)は「過去最悪の食糧危機が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
我が国の食糧自給率(20年度)はカロリーベースで4割を切り、過去最低となっています。国内で消費される小麦の約9割は輸入で、世界的な小麦の争奪戦が懸念されます。政府は2030年度の食糧自給率をカロリーベースで45%に引き上げるとしています。担い手不足や農地の大規模化の遅れといった構造に、正面から向き合う必要があります。

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