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2022年06月17日

「人を育てることの大切さ」(3)~人事について~(48)

「企業は人なり」、また「組織は人なり」とも言われますが、経営資源として挙げられる「ヒト・モノ・カネ」は、民間企業の場合はいずれも有限です。従って経営者の責務は有限である経営資源をどう最適配分・最大活用を図り、生産性の向上と付加価値を高めるかです。3つ資源の中で最も難しい課題は「ヒト」、つまり「人材」です。後の2つは何とかなります。そこで重要なのが「人材を育て、活かす」マネジメント機能、すなわち「人事」です。

会社人間にとって最大の関心事は「人事」と「賃金」であることは間違いありません。特に私の前職である物流企業が属するサービス産業の場合は、技術・設備が主体の製造業と比べ、社員の「志」と「心」の持ちようが業績を大きく左右します。そのため「人事」はより重要になります。そして「人事」は社長が社員に送るメッセージ」といわれますが、その通りだと思います。

なお、作者は不詳ですが、「上、三年にして下を知り、下、三日にして上を知る」という名言があります。これを今風にいうと「下で仕える者は、たった3日で、上司の性格、能力、好き・嫌いを見抜く」ということです。このように部下は上司の一挙一動を常に観察し、鑑識眼を養っているのです。一方、上に立つものは自ら積極的に下に降りていく努力をしないと、部下の実像をとらえるのは難しいということです。

また、私はサラリーマン生活を17年経験したので分かりますが、社員は往々にしてお互いに口には出さないが腹の中では、「アイツよりオレが上だ」とか、「アイツにはかなわない」といった評価(値付け)をしているのです。従ってある人事(特に昇格)がそういった既視感に添い、妥当性というか納得感のあるものであれば一体感が生まれ、うまく機能するように思います。ところが首をかしげる人事や、或いはトップの意図が分からないとなると部下は方向感覚を失い、組織はまとまらず弱体化します。上に立つものに必要なのは部下の心を読む読心術です。これは心理学の領域ともいえます。

そして「人事にはウラ(理由)がある」と言われます。これもその通りです。
しかし、いちいちその背景を説明するわけにはいきません。従ってその受け止め方は人様々です。いろいろ勘ぐりもあります。それが当たっている場合もあれば外れている場合もあります。それだけに何としても「公明正大」でなければなりません。それに加え、私は武家政治にならって「信賞必罰」も基本理念としました。

なお、私は前職の社長就任後、それまで社内で盛んであった出身校の「同窓会」を禁止しました。同窓であることを人事(昇格・抜擢)の理由として受け止められることがあってはならない。そういった観点から、社内で同窓をもとにグループ化することは「百害あって一利なし」と見なし、「会社は同窓会の場ではない。ただし同期会は大いにやれ」と社内通達をしました。同じ価値観を共有すべき企業内で、狭隘な同属意識にこだわっていては、ダイバーシティ(多様性)という時代のニーズにも逆行します。

私は「組織」それ自体はいうなれば「木で彫った仏像」というか、単なる「骨組み」にすぎないと考えています。つまり組織自体に「魂」はありません。そこに「どう血液を流し込み、魂を入れるか」が肝心で、それが「人事」なのです。「企画」、「新規事業」、「ESG」といった革新的な華々しい名称を付けても、確固たる「戦略」と「人事」が伴わなければ、すぐにメッキがはげ、日本企業特有の「横並び」、「流行に従う」に過ぎず、「絵にかいた餅」で終わります。具体的な人事・人選によってトップの意図(戦略)と本気度が試されていると言っても過言ではありません。

追記:  米国テキサス州で5月、また銃の乱射事件が発生し、児童ら21名(うち教員2名)が死亡しました。米国の人口は3億3200万人ですが、全人口数より多い4億挺近い銃を国民が保持しているとされています。銃が簡単に手に入ることが米国の治安の悪さに直結し、米国社会が抱える暗部となっています。
なお、米国では毎年、自殺を除き1万人以上が銃により死亡しており、特に2020年は1万9350人と過去最悪となりました。因みに同年における交通事故死者数は38,860人(日本は2,839人)でした。また自殺者は約47,500人(同20,919人)でしたがその、半数が銃によるものでした。銃の問題の深刻度を具体的に表しています。
米国では憲法で武器を持つ権利(自衛権)が保障されているため、銃の全面的な禁止は不可能と考えられています。バイデン大統領と民主党は銃規制に積極的ですが共和党は銃規制に反対で、これが米国社会を分断する大きな要因の一つになっています。しかし、ここにきて世論に押され議会(上院)でようやく、21歳未満の銃購入者の身元を厳格化などで暫定合意し、銃規制強化への動きが出てきました。これは小さな一歩ですが、米国では画期的なことです。

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