ブログ

2022年07月15日

安倍元首相のご逝去を悼む(52)

7月8日(金)、午前11時30分過ぎ、安倍元首相が奈良県にて参議院選挙の遊説中、突然の凶弾で命が断たれました。誠に残念なことで、国民の一人として心よりご冥福をお祈り申し上げます。 合 掌

安倍元首相とは首相官邸で開催されたトラック協会等、業界との意見交換会で何度かお目に掛かり、ご意見も拝聴しました。業界側の声に熱心に耳を傾けていただいた姿が今も目に浮かびます。また、特に身近で接しさせていただいた機会が2度ありました。一度目は2018年4月に、ブータン王国トブゲー首相が公賓として来日された際、首相公邸で歓迎晩餐会が催され、私は同王国の在大阪名誉領事を務めていた関係でお招きをいただいた時です。そして二度目は、同年10月にインドのモディ首相がやはり公賓として来日された際の、公邸での歓迎晩餐会の席でした。二度とも昭恵夫人も同席しておられました。安倍元首相は非常に気さくな方で、お疲れだったと思いますが、晩餐会が終わった後もいやな顔一つせず、ツーショットに応じていただきました。

安倍元首相が歴史に残る大政治家であったことは、今更申し上げるまでもありません。確固たる国家感を持たれ、この上なく日本国を愛しておられたように思います。その上で卓越した国際感覚も併せ持たれ、日本の国益を守るため各国首脳との良好な関係づくりに力を傾注されました。特に日本の安全保障上不可欠である、日米の緊密な関係構築は、安倍さんだったからできたように思います。

その日本の存立を左右する米国が今、かつてない分断社会となっています。現在政権の座にある民主党バイデン大統領は支持率低迷が著しく、11月の中間選挙では民主党の敗北がほぼ確実視されているようです。また、2024年11月に行われる次期大統領選挙について、最近の世論調査によると、与党・民主党支持者の中でも64%がバイデン氏の再選を望まないとしています。一方、トランプ氏は再出馬に意欲的なようですが、昨年1月の米議会襲撃事件の帰結がどうなるか等もあり、実現するかは流動的です。しかし依然として共和党内では根強い人気があり、調査では今も56%がトランプ氏を大統領候補にすべきだとしているとのことです。

そういった現状ですが、もしトランプ氏がリベンジ出馬し勝利するようなことが起こると、世界の政治情勢は極めて流動的というか不透明になります。それぐらいトランプ氏は個性が強く、その言動は予測がつかないからです。これは日米関係にとって深刻な不安定要因となります。そのトランプ氏と非常にうまく、上手に付き合われたのが安倍さんです。この点では現存する日本の政治家の中で類まれな存在でした。その安倍さんが今はこの世にいない。我が国にとって極めて大きな損失です。

なお、私が在米勤務中の1981年3月30日、ワシントンでレーガン大統領(共和党)の暗殺未遂事件が発生しました。直後の映像を見ますと、すぐにシークレットサービスがマシンガンを構えて大統領を守りました。なお、弾丸は大統領の左胸部に命中し大量の出血を伴っていたそうです。他にも負傷者が3人いました。大統領はすぐ病院に運ばれ弾丸の摘出手術を受けましたが、意識ははっきりしており、執刀医に対し、「諸君がみな共和党員だといいんだがねえ」とジョークを飛ばしたそうです。それに対し執刀医は実は民主党員でしたが、「大統領、今日一日我々はみな共和党員です」と答え、レーガン大統領を喜ばせたという逸話が残っています。これは「危機の際も動じずユーモアを忘れない」という、指導者のあるべき姿を体現したものとして称賛されました。私はそこから米国人のメンタル面のタフさを感じました。

追記: 7月10日(日)、投票が行われた参議院選挙では事前の予想通り、与党の圧勝に終わりました。その結果参議院の全議席(248)の党派別新勢力は、自民119(改選前比+8)、立憲民主39(同-6)、公明27(同-1)、維新21(同+6)、共産11(同-2)、国民10(同-2)、れいわ5(同+3)、その他16(-1)となりました。これで与党は合計146、野党系が102です。そして改憲勢力が179議席となり、参院での憲法改正の国会発議に必要な2/3(166)を上回りました。一方、衆議院の改憲勢力の議席(334)は総定数(465)の2/3(330)を上回っており、衆参両院とも国会発議への態勢が整ったことになります。今回の参議院選挙は投票日の直前に、安倍元首相の突然の死があり、その「弔い選挙」という見方もありました。文字通り安倍さんは一命を賭して、悲願としていた憲法改正への道を拓いたといえます。

 

その他のブログ