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2022年08月26日

人口減少と労働力不足(57)

総務省はこのほど住民基本台帳に基づく2022年1月1日現在の人口を発表しました。それによると日本人の人口は約1億2322万人で、前年比約62万人減り、2009年をピークに13年連続で減少しています。減少幅は今の調査が始まった1968年以降で最大です。そして、埼玉、千葉、東京、神奈川を合計した東京圏の日本人人口(約3561万人)は初の減少(約3.4万人減)となりました。これは1975年の調査開始以降初めてのことです。また、日本人の出生者数は約81万人と、1979年調査開始以来で最少となり、逆に死亡者数は144万人と最多でした。我が国は少産・多死社会に入ったことを表しています。なお、いまの人口規模を維持するための出生率は2.07前後とされています。因みに2021年の出生率は1.30でした。 

さらに、別の統計(2020年国勢調査)によると、日本の人口(外国人含む)は2008年をピークに減少に転じており、この状態が続くと2053年に1億人を割り込むと予測されています。出生数の減少が加速すると、更に早く割り込む可能性があります。1億人は、日本経済が高度成長期だった1965年とほぼ同じ規模です。以上のように現役世代の人口が減り続けることから、公的年金や介護保険等の社会保険料の負担が重くなります。1965年当時は、高齢者一人を現役世代10.8人で支える「おみこし型」でしたが、現在は2~3人で支える「騎馬戦型」です。更に2050年には高齢者一人を現役世代1.4人で支える、「肩車型」になることが見込まれています。 

また、同調査に基づき総務省が本年5月に公表したところでは、25~29歳で働く女性の比率は78.2%と、5年前に比べ5.2ポイント上昇しました。そして30代の女性の8割が仕事を続けています。いわゆる「M字カーブ現象」の解消が進んでいることが窺えます。30代女性の就労が進んだことから、15歳以上の女性の労働力率は54.2%と2015年調査より3.4ポイント上がり、過去最高となりました。ただ、問題点として働く女性のうち正規雇用は42.4%に止まり、男性の65.2%を大きく下回っていることです。そして女性の41.5%がパート・アルバイトで、正規と非正規がほぼ同数となっています。なお、2021年のフルタイム労働者の平均月収40万円に対し、パートタイム労働者は10万円とされており、男女収入格差の背景として指摘されています。
一方、高齢者(65歳以上)就業率も上がっており、2021年は25.1%と、10年前と比べ5.9ポイント上昇し、全就業者に占める比率も13.7%と、1968年以来最高となっています。 

このような状況から今後、我が国における労働力不足は一過性ではなく、基調として恒常的でしかも一段と厳しくなる事が見込まれ、今後、労働力確保が重要な経営課題となります。 

先日、LA在住の友人から、「米国では労働者の賃金が大幅に上がっているのに、日本ではなぜ人手不足にも関わらず賃金があがらないのか」という指摘を受けました。確かに我が国ではこの30年、経済成長率は年率平均1%を切り、給与も殆ど上がっていません。いわゆるデフレ現象が続いたのです。今年の春闘も厚労省によると賃上げ率は2.2%と物価上昇(7月2.4%)に届きませんでした。最低賃金(時給)も今年度は過去最大の3%引き上げられ全国平均961円となりましたが、欧米と比べると低く、OECD加盟国(先進38カ国)の平均を下回っています。
その大きな理由として、欧米の労働組組合は産業別が主流に対し、我が国では企業別組合が主流で労使協調を基本理念としていることです。そのため労働条件の改善交渉に些か緊張感に欠けるように思われます。因みに従業員1000名以上の企業の労働組合組織率は39.2%、99人以下は0.8%に止まっています。 

以上が現状ですが、今後は労働力不足が一段と厳しくなることから、人員確保のため今までとは異なり、賃上げ圧力が強くなると思われます。経営側としてはそれ相応の対応が求められます。AIやDX化を積極的に導入して、生産性の向上を目指すとともに、賃上げについても真剣に考える必要があります。 

≪追記≫もう来週は9月、早いものですね。コロナの感染拡大が始まって2年8カ月。ロシアのウクライナ軍事侵攻がはじまって6カ月。いずれも発生直後の緊張感は薄れ、国内でコロナの感染者が1日で25万人を超えたとか、ウクライナで毎日行われている殺戮にも何となく馴れきってしまい、無反応になっている自分に気づきます。一方、ロシアでは政府の「黒を白」とするプロパガンダの威力で、世論調査ではプーチンの支持率はむしろ上がっていると聞きます。「これではいけない」と思いながら、「何かできないのか」と問われても、「何もできない」ことに無力感さえ感じます。

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