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2023年01月06日

新春雑感(74)

新年、明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。今年のお正月は好天にも恵まれ、比較的穏やか三が日であったように思います。また、コロナ感染拡大にともなう諸規制が緩和されたことから、国内・海外間の人の動きが増え、交通機関や高速道路の混雑・渋滞も聞かれました。しかしコロナの発生以来4年目に入る現在も、昨日の感染者が全国で20万人を超えており、未だ収束の兆しが見えません。当分は”Withコロナ”と、インフルエンザに警戒の日々が続きそうです。

■■最近気になったことについて記したいと思います。
■今年の10大リスク:
世界の政治リスク専門コンサルティング会社として知られるユーラシア・グループは毎年年頭にその年の10大リスクを公表しています。それによると本年の1位は「ならず者国家ロシア」、2位は「『絶対的権力者』習近平」を挙げています。いずれの国も専制主義・全体主義国家であり、トップに君臨するのは帝国主義・勢力拡大主義を強く感じさせる危険な人物です。
現在、世界各地で地政学的リスクが生じていることから、我が国でも自国の防衛に対する関心が高まってきました。自国を守る上で不可欠なのは「自分の国は自分で守る」という覚悟です。今、戦のさなかにあるウクライナは、ロシアの侵攻以来来月で1年になります。ミサイル攻撃で発電設備は破壊され暖房は使えず、氷点下の極寒の中で国民は耐え忍んでいます。それでもウクライナ国内の世論調査では80%以上が「何としても勝利に向け戦う」としています。ウクライナ側には侵略者から自国を守るという大義があります。一方、ロシア側はプーチンの野心であり大義はありません。そのため前線で戦う兵士の士気も上がりません。従ってこの戦いの帰趨は明白であり、ロシアの勝利は厳しいと言えます。
ちなみにユーラシア・グループが昨年(2022年)初頭に挙げた10大リスクの筆頭は、「中国のゼロコロナ政策の失敗で、世界経済や各国の政情が不安定化する」、そして2番目として、「巨大IT企業の影響が強まる世界」を挙げていました。
この予測と現実と対比しますと、昨年の最大のトピツクスは2月24日に起こったロシアによるウクライナ軍事侵攻でした。これは全く想定されていなかった事件です。
昨年の予測のトップだった「中国のゼロコロナ政策の失敗」は的中しました。今年の世界経済にとって中国の景気低迷は大きな足かせです。
次に、2番目に挙げていた「巨大IT企業の影響が強まる」も外れました。GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)と称される巨大IT企業の、米国内の大手上場企業500社の時価総額に占める比率は、2013年末の7%から2021年には18%のピークに達しました。ところが昨年末には13%に低下し、その影響で米国のIT企業の多くが属すニューヨーク・ナスダック株価指数は、昨年1年間で30%も下落しました。現在、GAFAは過大投資と景気後退の影響、そして政府の規制強化により、成長路線の見直しを迫られており、大規模なリストラを実施中です。この点も含めて予想は大外れでした。
このように、いくら最先端の技術やITを駆使しても、例えばプーチンや習近平の心の中までは読めません。つまり「一寸先は闇」です。予想というものはなかなか当たりません。「よそう」を逆読みすると「うそよ」(嘘よ)となります。ついでに薬(クスリ)も逆読みでは「リスク」となります。言葉を逆読みすると、面白いことに偶然とは言え裏の意味を表すことがあります。
■今年の世界景気見通し:
IMFの専務理事は本年は世界経済の1/3が景気後退に陥るとしています。既に欧州は不況期に入っています。米国では3ヵ月物の国債価格(短期)の利率が10年物国債(長期)を上回っています。通常は長期金利が短期金利を上回るものです。この長短逆転現象は極めて高い確率で不況の到来を予知しているとされています。ちなみに、世界の株価は2021年11月の時価総額120.5兆ドルをピークとして下落に転じ、2022年10月には86.9兆ドルとなり、時価総額の約1/4が失われました。
一方、日経新聞は今年の世界経済を占うキーポイントとして、①物価高圧力との闘い、②金融引き締めの副作用、③中国経済の不振、④世界経済を襲うデカップリング(分断)を挙げています今年の世界経済の動向は要警戒であり、日本経済にも有形無形の影響を及ぼすことが懸念されます。
■労働組合の組織率低下と賃上げについて:
このほど公表されたところによると、昨年の労働組合への加入者数が前年比0.8%減の999.2万人となり、組織率も16.5%と過去最低になったようです。過去最高の加入者数は1994年の1270万人で、組織率は20%を超えていました。労働組合の存在感の低下が止まりません。
岸田政権は今後の日本経済のカギを握るのは「賃上げ」としています。円安の恩恵を受け業績が順調な大企業は協力姿勢を見せています。しかし国内全企業数の99%、そして全就業者数の約7割を占める中小企業にとっては簡単ではありません。もちろん人手不足対策から賃上げの必要についてはよく理解しています。しかし長年続いてきたデフレ経済で将来が見通せない、そのため明るい将来ビジョンが描けないことがあります。これは個人も同じで消費が盛り上がらない大きな原因です。それに加え労働組合が御用組合化していることも賃上げが進まない背景ではないでしようか。

≪追記≫ 一昨年7月1日に辻事業サポート事務所を開設して1年半になりました。現在は社外取締役を引き受けたり、講演や拙文を寄稿したりの日々です。今後ともこういった業務に加え、活動の第二ステージへの移行や、ここ3年、コロナの感染拡大で足止めされていた海外出張も再開したいと考えています。本年も何卒よろしくご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

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