早いもので新しい年が明けて間もなく2週間です。関西では穏やかな日々が続いています。今週月曜日(9日)は「成人の日」でした。民法改正により昨年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられて初めての「成人の日」でしたが、過渡期に当たることから全国的には祝賀式を20歳としたところもあったようです。18歳への年齢引き下げは世界の趨勢に従った結果ですが、飲酒、喫煙、公営ギャンブルについては従来通り20歳からです。
なお、今年の18歳新成人は112万人(全人口に占める比率117万人は0.89%)と、少子化を反映し過去最少となりました。新成人はこのほか、20歳が117万人、19歳が113万人と、年齢が下がるごとに減少しています。ちなみに昨年の出生数は80万人を下回ったと思われます。少子化対策は待ったなしの状況で、早急に具体化が必要です。政府も今後本腰を入れるようですが決め手に欠けることは否めません。
■■今週もいろいろなことがありました。
■ウクライナ情勢:
昨日、ある昼食会で元防衛大学校長・現兵庫県立大学理事長の五百旗頭(いおきべ)真氏の卓話を聞きました。題目は「ウクライナ侵攻後の世界と日本」で、1時間半近く熱弁を振るわれました。さすがに我が国を代表する思想家・文化人として、そして「東日本大震災の復興構想会議」や、「くまもと復旧・復興有識者会議」の議長等、日本が国難に瀕した際に重要な役割を果たされただけあって、中ロ関係や台湾問題、それに我が国の防衛問題について、大変明快かつ洞察力に優れた内容でした。
プーチンは今や出口の見つからない迷路に入り込んでしまったような状態で、和平への糸口は全く見出せず、戦闘の長期化が避けられないと思われます。そしてベトナム戦争と同様、和平への気運が出ると、双方とも少しでも有利な条件で交渉するため戦闘は一段と激化することが避けられません。
■2023年の世界全体の経済成長見通しを下方修正:
世界銀行はこのほど本年の世界全体の経済成長率を前年比1.7%と、昨年6月時点から1.3ポイントの大幅な下方修正をしました。背景には世界的なインフレや主要中銀による金融引き締めがあります。日本については1.0%成長(日本政府見通しは1.5%)とし、前回予測から0.3ポイント下げました。2022年に続き成長率が低下する要因として、原材料やエネルギー価格の高騰で需要が減少するとしています。
我が国は過去30年間に、GDPの約2.6倍を超える1000兆以上の赤字国債を積み上げてきました。国家財政は先進国でダントツの厳しい状態です。にもかかわらずこの間の平均成長率は1%を切り、潜在成長率もほほ同じレベルです。ここから出てくる結論は、わが国経済に構造的な問題があることです。これまで何度もあった景気後退に際しすべて対症療法で済ませ、外科手術は避けてきたのです。例えば中小企業政策や雇用対策、それに農業・林業・水産といった第二次産業政策等です。一時的には症状は和らげられました。しかしゾンビ企業の増加や国際競争力の低下をきたしただけで、体質改善にはなりませんでした。結果的にGDPの約8割を占める非製造業の生産性の低さにつながったといえます。一方、世界的に生産性が高いとされる製造業も、そういった非製造業の低生産性と低賃金に支えられているのが実態です。
■賃金引上げの動きについて:
新聞紙上でも年始の賀詞交歓会でも異口同音に言われているのが賃上げの必要性です。その通りだと思います。私も円安の好影響やデジタル化の波に乗り好業績の企業はどんどん賃上げすべきと考えます。
しかし問題は全就業者数の約7割を占める中小企業の賃上げです。この岩盤構造の動向が注目されます。政府は賃上げを実施した企業への減税を検討していますが、これは形を変えた補助金であり、コロナ禍救済のため導入されたゼロ・ゼロ融資(無利子・無担保融資)と同様、モラルハザードが懸念されます。国会議員は常に選挙を意識せざるを得ないのは分かりますが、このままでは国は借金で首が回らなくなります。しかも誰もその責任をとらないという無責任国家となりつつあります。平時においてさえこんな状態では、国家の安全を脅かす事態発生にどう対応するのでしようか。
なお、NHKがこのほど実施した賃上げに関する世論調査(2384人が対象)によると、6割が「上がらない」という結果でした。まだまだ冷めた見方が過半数のようです。
■南海トラフ後1週間以内に、M8級続発確率100倍超:
このほど掲題の研究結果を東北大学などのチームが発表しました。約110年間の世界の地震統計データや1361年以降の南海トラフ地震の発生履歴を分析した結果です。因みに国は2019年から、後発地震発生の可能性が高まった場合に警戒や注意を呼び掛ける「南海トラフ地震臨時情報」を運用しています。
私は東北地方大震災発生の2カ月後、災害地を訪れました。場所によっては町全体が20mを超える深さのプールのようになった津波の実態を目の当たりにして、自然の脅威を改めて思い知らされました。
なお、災害が発生すると、マニュアルの有無や、マニュアル通り対応したかが問われます。このように日本人はマニュアル好きとされています。ところが事故・災害はマニュアル通りにはやってきません。いつ、どこでどれくらいの規模等、発生状況は千差万別です。連絡体系も交通機関も寸断され関係者の集合もままなりません。従ってなによりも大事なことは災害発生現場の咄嗟の判断力です。時にはマニュアルに反する決断も必要です。平素からそれぞれの現場に応じた防災・減災対策と、災害発生時の判断力・心構えを培っておくことが大事です。
東北地方では1990年から「津波てんでんこ」が防災標語となっています。これは「津波が起きたら家族が一緒にいなくても気にせず、てんでんばらばらに高所に逃げ、まずは自分の命を守れ」という意味です。この教えが東北地方大震災による低学年者の死亡数が、比較的少なく済んだ大きな要因とされています。「自分の身・自分の国は自ら守る」はあらゆる災害・安全保障への基本です。