この1週間を振り返りますと、月曜日(1月16日)は日本国内で新型コロナウイルスが初めて確認されて、ちょうど3年経過した日でした。もう3年も経ったかという思いもしますが、第8波ともなると良し悪しは別にして、世界も国内もこのパンデミックに馴れたというか、いわば抵抗力が出来たというか、”With Corona”が定着してきたような気がします。日本でも近いうちに感染症法上の2種から5種への変更が検討されており、徐々に一般的な季節性インフルエンザと同等の扱いになっていくと思われます。
また、17日は6434人の方々の命を奪った阪神・淡路大震災の発生以来、28年が経過した日でした。発災の当日、私は北京に出張中でした。翌々日に帰国したのですが、関空に着陸する直前、機内から被災地・神戸の方を見ると、のろしのような黒い煙が何本も立ち昇っていました。そして地震発生の一週間後に被災地に赴きましたが、どんな力が働いたのかと思うほどの破壊の惨状で、改めて自然の怖さを感じました。
そしてその後も、12年前には東日本大震災が発生し、地震と津波に加え二次災害として、福島第一原発事故による放射能汚染が加わり大災害となりました。また7年前には熊本でも大きな地震が発生し、甚大な被害が生じました。そして今年は10万人の死者・行方不明者を出した関東大震災から100年目の節目の年でもあります。
今後の首都直下型地震や、南海トラフ巨大地震発生による被害想定が広く話題になっています。また、過去の歴史から富士山の噴火の可能性も喧伝されています。
このように我が国は世界的に見ても最大の自然災害多発国と言わざるをえません。今まで経験した大地震はいずれも人間の力をはるかに超えるパワーを見せつけました。従って結論的に言えば、自然と真っ向から戦うのではなく、自然の力を崇め「共生」する道を目指すべきだと考えます。例えば現在の東京への過度の一極集中は、政治・経済・安全保障や文化・学術等、あらゆる面からわが国にとって最大のリスクであり、それを是正し均衡ある国土の発展に向け真剣に考えるべき課題です。
■■今回の話題は中国です。
■初めての訪中:
私は太平洋戦争のさなかの1942年(昭和17年)に、中華民国上海市(当時)で生まれました。父が日本の商社の駐在員をしていたからです。1歳くらいで帰国したようで、上海の思い出は全くありません。その後実質的に初めて訪中したのは1976年11月(34歳の時)の秋季広州交易会に参加した時でした。当時は10年間にわたり吹き荒れた文化大革命が終わった年で、私が現地を訪れた時は、この政治権力闘争を主導した江青(故・毛沢東夫人)をはじめとする四人組が逮捕された直後でした。それを祝して街中で爆竹が鳴り響き人々は喜びのデモ行進をしていました。その頃の中国は本当に貧しく、服装は男子は人民服か軍服、女性は青いズボンに白い上っ張りでした。また同年は河北省唐山で40万人(推定)の死傷者を出した大地震が発生したり、ソ連とも国境をめぐり緊張下にあり激動の年でした。
■中国の経済成長が鈍化:
中国では故・鄧小平国家主席の下、1978年から改革開放政策が本格的にスタートしました。途中、1989年6月には天安門事件が発生しましたが、2001年12月のWTO加入が大きな転機となり、貿易拡大により経済の大躍進に繋がりました。そして2010年にはGDPで日本を抜いて、今では日本の約4倍となり米国に次ぐ世界第二位の経済大国となりました。世界全体の経済成長に占める中国の貢献度は2013~2021年には平均39%に達し、米国の19%や日本の1%など先進7ヵ国(G7)合計の26%を大きく上回りました。
その後も概ね年率10%を超える成長を続けました。ところが3年前、コロナの感染拡大に対しゼロコロナ政策(都市封鎖)を導入したことにより人の移動は厳しく制限され、経済活動は停滞しました。そのため昨年10~12月の実質経済成長率(GDP)は前年同期比2.9%まで低下し、昨年は通年の実質成長率も3.0%となり、政府目標の「5.5%前後」を大きく下回りました。
■減少に転じた中国の人口:
中国の人口は2009年から2014年まで実施された「一人っ子政策」の影響が、少子高齢化として顕在化してきています。2022年の人口は61年ぶりに前年末を下回り、今年はインドに首位の座を譲ると思われます。因みに外国人を含まない中国大陸の総人口は14億1145万人で、前年同期比65万人減となっています。
日本経済新聞の試算では、生産年齢人口は10年で6700万人(9%)減少するとしています。一方、高齢化も止まりません。60歳以上の人口の比率は19.8%と、10年で5.6ポイント高まりました。なお日本の60歳以上は29.1%(2021年)と世界一位です。
また出生数は前年比106万人減の956万人と、記録の残る1997年以来初めて1000万人を切りました。それでも我が国の80万人を切ろうとする現状からすると12倍という規模の大きさです。我が国はこういった国勢の違いをどう受け止め対処するかよく考える必要があります。
≪追記≫ドローン(小型無人機)が操縦者から見えなくても、住宅地などの上空を自動で飛ばせるレベル4飛行の操縦に必要な国家資格試験が、1月16日、初めて実施されました。ドローンはウクライナ等、戦場では実戦入りしています。しかし民生用は安全が第一ですから、実際に運用されるには技術面に加え、法律面の整備が必要です。最近はATMで現金を引き出した際に、数え直す人を見たことはありません。車の自動運転も同様、そのレベルまで信頼性が担保されないと、広範囲な活用は制限されるでしょう。