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2023年01月27日

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今週は我が国に最強寒波が襲来するとの予報が出されました。私は1月24日上京しましたが、東京の天候は心配していたほどの事はありませんでした。ところが日本海側だけでなく九州地方や太平洋側では大雪により、車や列車が各地で立ち往生するなど交通網を中心に、人の移動・物流に混乱が続いています。
一方、海外では、中国黒竜江省で1月22日に氷点下53度まで気温が下がったと報じられています。日本における過去最低気温は1902年1月25日に北海道・旭川で記録されたマイナス41度です。私は前職時代、現場視察で冷凍冷蔵倉庫の中に入ったことが度々ありましたが、精々マイナス30度までで、それでさえ2~3分中にいるのが限界でした。
また、米国でも南部から東部にかけて記録的な寒波が襲来し、多数の旅客便がキャンセルされ大きな混乱が生じているようです。
欧州では逆に記録的暖冬となっており、1月に入ってドイツやポーランドの気温は同月としては過去最高を記録しています。そのため暖房用の天然ガスの消費が抑えられ、価格は昨夏のピークと比べ8割安となっています。その結果、一部で続くロシアからのガス供給がほぼ途絶えても、2024年3月まで10%以上の貯蓄率を維持できるといった状況です。このように欧州では天然ガス価格の下落、インフレの上昇率ペースダウンにより個人消費の減退懸念が和らぎ、欧州では株価が最高値に近づいています。このように先行きに対する楽観的な見方が見られますが、根っこにある状況は変わっていないことから、以前として先行きには注意が必要です。
以上のように世界的に異常気象による経済への影響が様々な形で出ています。

■■今週目についた出来事を取り上げたいと思います。
■世界経済フォーラム(WEF)の年次総会閉幕:
通称「ダボス会議」(開催地スイス東部)が1月20日、5日間の会期を終え終了しました。今回はコロナ禍を経て3年ぶりに1月の開催となりました。会議には50ヵ国以上の首脳と経営者、専門家など約2700人が集まりました。テーマは「分断された世界における協力の姿」でしたが、ウクライナ危機やインフレ、気候変動などの課題の解決に向けた議論が行われ、「分断」(ブロック化)が進む現状が再認識されたような形となりました。
世界経済の見通しについては米欧でインフレが一服したことから「一時ほど悪くない」とされたようですが、カギを握るのは中国です。ゼロコロナ政策の緩和により中国経済が回復すると、現在は沈静化が見られるインフレが再加速しかねないといった懸念が出ています。
■通常国会がスタート:
新年度予算案などを審議する通常国会が1月23日召集されました。会期は6月21日までの150日間です。なお、会期中の5月19日~21日、広島でG7首脳会議が開催されます。
冒頭の衆参両院の本会議で岸田総理は施政方針演説を行いました。その中で最重視する少子化対策として、児童手当など経済支援の拡大、子育てサービスの充実、働き方改革を3本柱として進めると表明しました。そして問題となる財源の一部は社会保険料を想定しています。防衛費を含め財源問題の解決がすべての案件の前提です。
■後れを取る日本経済:
内閣支持率は30%台に低迷しており、特に経済政策に「期待できない」が70%を超えています。振り返りますと安倍政権が推進した「アベノミクス」の10年間、国債発行残高は705兆円から991兆円へと286兆円も増加しました。ところがGDPは年平均で0.6%に止まっています。この間米国は2.1%、中国は6.1%成長しています。そして規模では3位を守っていますが、4位のドイツに迫られています。また、2012~2021年におけるOECD加盟国の平均賃金が加盟国で約1割に対し、我が国は3%に止まりました。中でも米国は17%と最高の伸びを示しています。
■産業構造がもたらす過当競争:
我が国では企業数約360万社の99.7%が中小零細企業で構成されており、全就労者の比率は約70%を占めています。一方、サービス産業の対GDP比は約7割に達し、総従業員数は約8割に達しています。製造業はGDP比で約2割、そして就業者の割合は15%強です。こういった産業構造が「多層下請け構造」と過当競争をもたらし、コストを「転嫁できたのは4割だけ」といったことに繋がっています。欧米と比べ卸売り物価(企業物価)と消費者物価の上昇にタイムラグが生じる要因の一つです。
資本というか市場経済のメカニズムがうまく機能しておらず、これが中小企業の賃上げに影響しているといえます。
■遅れる「構造改革」と進む「制度疲労」:
我が国では女性の全就業者(男女計)に占める比率は約45%ですが、女性に限った就業率は約7割です。そして、かつては専業主婦世帯の比率が共働き世帯を上回っていましたが、1992年ころからと逆転し、今は共稼ぎ世帯が約7割(2020年)に達しています。こういった環境変化にも関わらず社会保障制度や税制の改正が追い付かず、様々な歪(ひずみ)というか、制度疲労をきたしています。外国人労働者の導入についても同様です。
我が国は歴史が長いだけあって社会も経済も様々な「構造的な問題」に加え「制度疲労」が存在します。中には「日本の常識は世界の非常識」と揶揄されるものもあります。現状はもはや補助金で支援するといったような内科療法や、先送りで済む次元ではなく、痛みを伴う外科手術が必要なまで病状が進んでいると言わざるを得ません。

≪追記≫ 日本の労働組合加入率はピークの1949年には55.8%でしたが、昨年は16.8%まで低下しています。米国の加入率は10%程度ですが、産業別組合で賃上げ要求は使用者側に対してストライキなど厳しい姿勢で臨む組合もあります。一方、日本は企業別となっており、一般社員にとって労働組合の役割、主旨がよく理解されていないように感じます。ストライキを断行するといった過激な行動には与(くみ)しませんが、「労使一体」は基本としながらも、企業改革に向けもう少し積極的に発言・主張すべきではないでしょうか。

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