立春(2月4日)は英語で”The first day of spring”と訳される通り、何となく春の気配を感じる時候になりました。既に気象庁は1月26日に桜の開花予想を発表しました。それによると今年は北日本・東日本では平年並みか平年より早めとのこと。そして西日本では平年並みかやや遅いとしています。具体的には東京は3月21日頃、大阪では3月28日頃から開花がスタートと予測しています。
今週のトピックスで先ず私が選んだのは、車いすテニス男子シングルスの4大大会で計28度、パラリンピックで4度の金メダルを獲得し、「生涯ゴールデンスラム」を達成した国枝慎吾さんの偉業です。その不屈の精神力に心から敬意を表します。日本政府もパラスポーツの第一人者として長く活躍したことを称え、国民栄誉賞を授与する方針を決めたようです。
ところで日本は先進国とされてはいますが、ハンディキャップを抱えた人たちにとっては言うまでもなく、高齢者にとっても優しい国とは言えません。都心部の駅でさえエスカレーターがないところが多く、階段の上り下りは大変です。また駅のホームで防護柵がないため命を落とす目の不自由な人たちも絶えません。
米国では州によって違うかも知れませんが、私の実体験では、少なくともカリフォルニア州では、2階以上の業務用の建物はエレベーターの設置が義務付けられています。ハンディキャップを抱えた人たちや高齢者への、日米の心遣いの違いを感じざるを得ません。
■■今週もいろいろ考えさせられることが多いでした。
■汚職・腐敗防止への動き:
このところウクライナで汚職の摘発が進み、とうとう国防相まで辞任する事態に陥っています。このままでは西側からの支援や欧州連合(EU)入りにも影響することから、ゼレンスキー政権は本気で取り組まざるを得ません。もともと同国はソ連邦時代から汚職体質が根強く、汚職・腐敗防止活動を展開する国際NGO団体である Transparency International が発表した世界汚職度ランキングによると、ウクライナは世界180ヵ国中122番目です(2021年)。国を挙げての防止対策の結果、2014年の142位からやや改善が見られます。
なお汚職がはびこる裏にロシアの画策があるとされています。そのロシアの汚職度順位は137位です。私は若かりし頃、東西冷戦構造下のソ連の首都・モスクワを商用で訪れたことがありますが、「これが米国と覇権を争っている国の実態か」と、そのお粗末さに驚きました。と言うのも当時から国家予算に占める軍事費のウエイトが高いため民生部門に回るカネが限られていました。そのため消費財が不足しており、何かを手に入れたりサービスを受けるには代金に加え、例えば日本製の100円ライターとかが媒体として必要でした。おそらくこの体質は今も基本的には変わっていないと思います。
閑話休題、清潔度がもっとも高いのはデンマーク、2位がフィンランド、因みに日本は18位、米国は24位、中国は65位、最下位の180番目はソマリアです。
私のビジネス経験からすると、新興国では領収書のとれない小口支出が必要悪です。米国ではサービスに対するお礼としてチップを払いますが、新興国においてのそれは賄賂というほどではなくても、ビジネスをスムーズにするための潤滑油のようなものです。罪悪感はなく、いわばローカル・ルールです。最近話題になっている特殊詐欺グループの幹部が収容されていたフィリピンの施設では、職員に賄賂を渡せば何でも手に入る無法状態だったようで、「地獄の沙汰もカネ次第」といったところです。こういった背景には税制による国家の再配分機能が十分整備されていないこともあります。
かくいう日本国内でも最近、五輪に関連する汚職事件等、モラルの低下が感じられます。また我が国では談合事件が多いのが特色です。我が国では伝統的に経済犯罪に対する罰則は比較的軽かったように思います。しかし最近は談合に対する罰則が強化され、課徴金に加え刑事罰が加えられています。日本にはなじまないと思われていた「リニエンシー制度」(課徴金減免制度)も定着してきました。
米国では談合は資本のダイナミズムを阻害するとして、ずっと以前から刑事罰が科されています。また、米国では田中角栄・元首相(故人)の逮捕につながったロッキード事件を契機として、1977年にFCPA(海外腐敗行為防止法)が制定され、外国公務員(場合によっては民間企業も)に対する贈賄行為は厳しく処罰されます。海外での事件でも米国内の事業にも累が及ぶことから注意が必要です。
■景気動向:
どうも景気の動向(よいのか・悪いのか、よくなるのか・悪くなるのか)がよく分かりません。米国ではインフレはこの6ヵ月緩和の方向にありますが、依然としてその水準は高いことから、FRBは2月の公開市場委員会で政策金利を0.25%引き上げ4.50~4.75%としました。これで3月にもう一度引き上げられると、物価上昇率を上回り目標を達せられるようです。そこからいよいよ金利引き締め効果が出て、しばらく不況期に入るとされています。
国内経済は昨年の実質賃金が2年ぶりにマイナスといったことや、円安の影響で経常収支が大幅赤字、そしてコストの転嫁率が5割止まりといったようなことで閉塞感が漂っています。
これを打開するには、目下のところ大幅賃上げしか見当たりません。しかしながら、我が国は99.7%が中小零細企業で、そこで働く就業者の比率が約7割を占めているという構造問題、それに国民も企業も「将来不安」が根強いことから投資や消費がなかなか伸びません。賃上げの動きが一部の大企業だけでなく、どの程度中小企業まで浸透するかが今後の景気を左右することになります。