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2023年02月24日

ちょっと気になる記事・話題(81)

今月、「アイドルパンダ」こと、上野動物園のシャンシャン、和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」にいたエイメイ(永明)と双子の娘、計4頭のパンダが協定に従い中国に返還されました。大勢のファンが最後の別れをしようと押し寄せ、中には思わず泣き出す人たちもいました。いわゆるペット・ロスが懸念されます。
その一方で2021年におけるペット虐待検挙数は過去最多を記録しました。また、警察庁の発表によると、全国の警察が2021年に児童虐待が疑われるとして、児童相談所に通告した子ども(18歳未満)の数は10.8万人と過去最多を更新しました。さらに2021年度に文部科学省の調査でいじめと認知された件数は、61.5万件と同じく過去最多となりました。そのほか広域連続強盗など最近はイヤな事件が多発しています。事情はさておき、愛護や虐待といった対照的な事象がみられるのも複雑化する現代社会を象徴しているようです。 

■■この1週間で気になったこと:
■米国バイデン大統領キーウを電撃訪問:
この1週間でもっともインパクトのあった出来事は何といっても、米国のバイデン大統領が2月20日午前(現地時間)、ロシアの攻撃が散発するウクライナの首都キーウを電撃的に訪問したことでしょう。同大統領は「ロシアが侵攻して一周年(2月24日)の直前に、歴史的訪問することが本当に重要と考えた」とのこと。計画はごく少数の側近との間で数カ月前から極秘で進められたとしています。徹底した情報管理で目的は完遂され、まるでサスペンス・ドラマを見ているようでお見事というほかありません。この度のキーウ訪問をロシアには直前に通告したとのことですが、訪問日時がプーチン大統領がウクライナ侵攻後初めて行った、年次教書演説(2月21日)の直前であったこともグッドタイミングでした。
この出来事を通じて感じたことは、歴史の転換点のような事態、或いはゼレンスキー大統領のように国家存亡の危機に際して、最高責任者が冷静かつ大胆に振舞うことがいかに大事かを示唆していることです。米国の歴史を振り返りますと、かつてキューバ危機(1962年10月)が起こった際、当時の米国ケネディ大統領は核戦争勃発の瀬戸際において、果敢に「海上封鎖」を断行したことが、結果的に危機を回避することになりました。
ところで、今回のバイデン大統領のウクライナ訪問により当惑し、頭を悩ませているのは日本政府でしょう。先進7ヵ国首脳会議のメンバーでキーウを訪れていないのは岸田首相だけになってしまったからです。しかも今年5月に広島で開催される同会議の議長という立場です。そうかといって「今更」という印象はぬぐえません。
1990年8月、イラクによるクェートへの軍事侵攻で始まった湾岸戦争は、冷戦後の世界が経験した最初の国際危機でした。当時、我が国は対応に手間取り、2兆円近くの資金提供をしたにも関わらず、世界的には評価が低く、日本外交の威信が低下したとされています。
私が米国生活を通じて想ったことは、確かに米国は銃が氾濫し治安が悪いとか、薬物汚染、それに人種差別や貧富の格差が大きいとか、社会の断面を部分的に見ると日本の方が「まだマシ」といえます。しかし「国家のあり方」「国の形」というレベルで比較すると、「大人と子ども」以上の違いを感じます。
もちろん直接選挙で選出される大統領と、議院内閣制によって選ばれる日本の首相とでは権限が違うでしょう。しかし、それならば想定される事態を予めシミュレーション(模擬演習)し、政治システムの弱点・欠陥を補う方策を考えておくべきです。それがリスク・マネジメントであり、今のように危機が発生してから右往左往し、対処法を検討するのでは遅きに失します。
政府は1956年、経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言しました。前年のGDPが戦前の水準を上回ったからです。それから67年、今の我が国の現状を冷静に観ると「日本はもはや世界の一流国ではない」と言わざるを得ません。この際、そういった現実を謙虚に認め、今後どのように立て直していくか、国民と政府がこぞって真剣に考えねばならない時機です。
■世界3位の座が危うくなった日本のGDP:
2022年の日独の名目GDP(国内総生産)に年平均の為替レートを掛け合わせて比較すると、日本のドル建てGDPは4兆2300億ドル。一方、現在日本に次ぐ世界第4位のドイツは4兆600億ドルで、その差は1700億ドルの差でした。因みに2020年は1兆1500億ドル、2021年は6700億ドルの差がありましたが、どんじん縮まっています。日本は1968年にGNP(国民総生産)でドイツを抜き、資本主義国で米国に次ぐ2位となりました。ところが2010年には急速に台頭した中国に抜かれGDPで世界3位になっています。
ドル建てGDPを20年前と比較すると米国が2倍で現在世界1位、中国が12倍で同2位、ドイツは2倍に膨らみ同4位。日本は同3位ながら僅か1%の増加に止まっている上に、後ろにはインドが迫っています。同国は国連推計によると人口で既に中国を抜き世界1位、そしてIMFは20年代後半にGDPで日独を抜くと予想しています。日本が世界経済で一定の地位を維持するにはデフレ経済からの完全脱却と、企業の稼ぐ力(国際競争力)の回復が不可欠です。

追記》米国では新型コロナウイルスで広がった在宅勤務(テレワーク)と出社を組み合わせる、「ハイブリッドワーク」のバランスを見直す動きが拡がってきているようです。民間調査では米主要都市の平均出社率は1月下旬に初めて5割を超えました。
しばしば物議をかもすテスラ社のイーロン・マスク氏は昨年6月、「毎週、最低40時間オフィスで働くのが嫌だという者は、他の就職先を探すべきだ」と言い放ちました。彼なりにテレワークが企業経営のあり方に及ぼす影響を感じ取っていたのでしょう。

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