今月9日投開票された統一地方選前半戦で、「日本維新の会」と「地域政党・大阪維新の会」は、地元の大阪だけでなく、全国で勢力を伸ばしました。道府県議連と政令都市議席の当選者は2019年の前回に比べ約2倍の260人に急増しました。
また、41道府県議選の投票率は41.85%と、前回選挙の44.02%を2.17ポイント下回り過去最低を更新しました。9道府県知事の投票率も軒並み50%を切り、過去最低となりました。国民の選挙離れは深刻です。
私の印象では「維新」は選挙戦術いうか、ケンカの仕方がうまい。どこを輪切りしても「身を切る改革」という同じキャッチフレーズが返ってきます。つまり一枚岩です。また平素から地域住民に根差した党勢拡大活動を行い、草の根的に地盤の強化・拡大に努めています。一方、自民党は全国的には、41道府県議選で総定数(2260)の過半数(51.0%)を確保し底力を発揮しました。ただ関西に限ると議席数を落としています。関西で巻き返しを図るにはそれなりの覚悟と強い意志、それに明快な成長ビジョンが必要と考えます。
次の選挙は今月23日に投開票が行われる統一地方選の後半戦と衆議院4区(千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区)、並びに参議院大分県選挙区の補欠選挙で、衆参補欠選挙は既に選挙運動が始まっています。
■■リニア中央新幹線の進捗状況について:
先日の新聞にJR東海の丹羽社長が記者会見で、「リニア中央新幹線の名古屋開業が当初予定の2027年から遅れる見通しで、現時点で新たな開業次期を示すことは出来ない」という趣旨のコメントがあったとの記事が掲載されていました。その理由として静岡工区が工事を始められず未着工であることが挙げられています。
私は2011年6月から2017年6月まで6年間、関経連の理事としてリニア特別委員会委員長、そして途中から北陸新幹線の敦賀~大阪への早期接続を目指す役割も兼務しました。そしてリニアの大阪への延伸は当初予定の2045年から8年繰り上がり2037年となり、また長年論争が続いていた北陸新幹線の敦賀~大阪間の走行ルートも、湖西ルートで決着をしたこと等により、委員長として一定の達成感を得たことから、75歳になることを機にこれらの役目を降り後継にバトンタッチしました。
このような自身の経歴からリニアに関しては一家言もっており、以下に述べたいと思います。
リニア新幹線は最高速度505kmで東京-名古屋を40分、そして大阪まで全線開通の暁には東京(品川)―大阪(新大阪)間を67分で結びます。走行距離(工事区間距離)は東京-名古屋が286km、名古屋-大阪が152kmです。現在は東京―名古屋の開業を2027年、そして大阪への延伸は当初計画から8年繰り上げ10年後の2037年としています。ところがこのスケジュールが静岡県・川勝知事が立ちはだかり、見通しが立たない状況になっています。同知事が問題としている静岡工区は8.9kmで南アルプス直下のトンネル区間です。知事は工事に伴い大井川の流量と、周辺の生態系に悪影響を及ぼす可能性があると主張し、着工に必要な河川占有許可を盾に反対しています。確かに南アルプスを源に駿河湾に注ぐ大井川は流域62万人の生活を支え、特産の新茶が栽培されています。しかも知事は2021年6月の知事選で「命の水を守る」と訴え、4選を果たした経緯もあります。それに加えて、静岡県内にリニアの駅がないことも建設に前向きでない遠因でしょう。
しかし現在の膠着状態については、果たしてこれでよいのか、いろいろ考えさせられます。つまりこういった国家的プロジェクトは国の姿(根幹)を変えます。私は事業推進体であるJR東海を代弁するつもりはありませんが、現在の東海道新幹線は運行開始以来59年になり、かなり老朽化が進み早急に大規模な補修工事が必要と聞きます。さらに東海道新幹線の走行ルートは太平洋側海岸沿いで、いつかやってくる南海トラフのような大型災害が発生するとひとたまりもありません。そのため東北新幹線のように列島の中心部を走行する新線(代替ルート)が是非とも必要です。
大体、我が国はインフラ整備について時間が掛かりすぎ、それに伴い完成が大幅に遅れるのみならず、建設費用が雪だるま式に膨れ上がります。北陸新幹線も高崎―軽井沢間が着工したのが1989年ですから、今の予定で大阪への延伸が2046年とすると60年近い年月を要することになります。お国柄が違うとはいえ、中国なら10年くらいでやり遂げるのではないでしょうか。地域の発展と住民生活権、地域益と国益・公益のバランスをどう取るか、民主主義である以上合意形成に時間が掛かるのもやむを得ないのでしょうが、考えさせられるところです。
最後に静岡工区が未着工のため、名古屋開業2027年の予定が遅れ、それがそのまま大阪延伸(2037年)の遅れとなることが危惧されています。しかし私はJR東海から、「勝手なことを言うな」とお叱りを受ける覚悟で申し上げますと、大阪開業が大幅に遅れることは避けられるのではないかと考えています。というのは東京-名古屋の工事区間距離は286kmに対しや名古屋-大阪は152km(53%)です。素人的には東京-名古屋(当初計画では約12年)の半分程度の6~7年でやれるのではないかと期待しています。また工事も南アルプスほどの難工事は少ないのではと思います。ただし、私の期待の前提は、名古屋-大阪間の工事着工に必要な環境アセスメントを名古屋開業前に終えておくことです。これには通常3年程度はかかります。従って環境アセスメントを遅くとも来年(2024年)にはスタートさせる必要があります。これが2037年に大阪開業を実現させるキーポイントです。