先週末、トラック輸送業界で交流のある友人の招きで、4年ぶりに宮城県・石巻市へ行ってきました。私と東北地方との触れ合いは、2011年3月11日に発生した東日本大震災から始まりました。私は震災直後、関西経済連合会内に設置された「東日本震災復興対策委員会」の副委員長として、最初の訪問は震災発生の2ヵ月後、そして5年後の2016年に委員会が解散するまでの間、6度にわたり福島第一原発を含め災害現場を訪れ地元との交流を深めました。それまでは東北地方をはるか遠くに感じていましたが、伊丹から仙台までは僅か1時間ちょっとの飛行時間、今は極めて身近に感じています。震災発生から12年、現地では復興が進んでいますが、最初の訪問時に目にした災害の状況は想像を絶する光景でした。今回、激しい揺れと5~7mに達する津波、そしてその後打ち寄せられた車から流れ出たガソリンから発火した火災の中で、奇跡的に全員避難に成功した、石巻市内の門脇小学校の被災現場を見学し、改めて東日本大震災の過酷な経験を風化させてはならないという思いを強くしました。
■■今週も気になる出来事がいくつかありました:
■2年後に迫った大阪万博開幕に関して想うこと:
4月13日、大阪万博の開催まで2年となったこの日、会場となる大阪湾の埋め立て地「夢洲(ゆめしま)」において、岸田総理ほか列席の下、起工式が挙行されました。開催期間は2025年4月13日~同年10月13日の6ヵ月間。参加は153ヵ国・地域と8国際機関(3月末現在)。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。来場者は2820万人を見込んでいます。
前回の大阪万博は1970年3月15日~同年9月13日、大阪・千里丘陵で開催され参加国は76ヵ国と4国際機関。テーマは「人類の進歩と調和」。来場者は6400万人に達し、目玉は前年アポロ11号が持ち帰った「月の石」でした。
当時、私は27歳、宇部興産㈱の大阪支店勤務で、国内各地からやってこられたお客さんをご案内し何度も会場を訪れました。53年前の当時と現在を比較すると、国内外とも様変わりです。この間の変化のスピードは速く、中でも情報化と国際化の進展はめざましいものがあります。当時はテレビは未だ白黒が中心、電話は固定電話、パソコン・インターネット・スマートフォン等は勿論ありませんでした。世界は西側と東側が厳しく対立という冷戦構造下にありました。そのころ中国は「文化大革命」(1966~1976年)のさなかにあり、私が初めて訪中した1976年11月は文革が終了した直後で、まだ同国民の生活水準は極めて劣悪でした。それが2010年にGDPで日本を抜き世界2位となり、今や米国と覇権を争う存在になろうとは誰しも思いませんでした。
なお、1970年の訪日外国人数(インバウンド)は、万博により急増したとはいえ僅か約85万人でした(前年は約61万人)。それが現在は、コロナ禍前の2019年には約3188万人に達しました(約38倍)。これも誰も想像しなかったことです。万博会場で幼い子供たちが外国人を見ると見境なくサインをせがんでいた姿を思い出します。一方、1970年における日本人の出国者数は約94万人。それが2019年には約2008万人へと増加しました(約21倍)。こういった人の往来を見ても国際化が大きく進展したことを実感します。
その他にも前回の万博以降、今日までの時代の変化については、少子高齢化等、枚挙にいとまがありません。ただ言えることは、確かに科学技術の発達や情報化、国際化より生活水準や利便性は向上しましたが、それが人々に「幸せ感」もたらしたとは言い切れません。「何かを得れば何かを犠牲にせざるを得ない」のは世の常で、「物質的豊かさ」の一方で、我が国が古来受け継いできた美徳や倫理観が希薄し、自然環境の破壊も進みました。「心のゆとり」も失われつつあるように思います。この上、チャットGPTのような生成AIが本格化すると、一体世の中はどうなるのでしょうか。メカニズムのプラス・マイナスのバランスと、人間の肉体と精神にどういう影響を与えるかよく考える必要があります。このままでは人類は科学技術の発展についていけず、自滅する恐れを感じます。
■国際機関への日本人を増員へ:
政府は国連や国際通貨基金(IMF)、世界銀行などの国際機関で働く日本人の数の底上げを図る方針を固めました。国際機関での勤務を希望する35歳以下を日本の国費で2年間派遣する枠組み「JPO」を活用し、民間からの参加を募るとしています。具体的には2021年時点で956人だった国連の関係機関で働く日本人職員数を2025年までに1000人台に乗せ、それを維持するとしています。因みに2021年の日本人派遣数956人は米国の約1/3、英国とフランスの半数程度です。
政府の方針の背景として日本は国連への分担金が米国、中国に次いで3番目に多い(8%超)にも関わらず、米欧の主要国に比べ出資に見合ったポストを得ていないことが指摘されています。
同じアジアでは中国が影響力を高めており、日本との差を縮めています。国際機関は国際社会での新たなルールづくりに極めて重要です。そこで主導的な立場に日本人が就くには、まず、幹部候補となる人材を育成することが重要です。それには語学力を磨くことが前提となります。他の国は閣僚経験者を国際機関の幹部選出選挙に擁立するケースが増えているとのことです。
最近の若者は「内向き」傾向が強いようですが、国際社会における日本の立場を考えると、必ずしもいわゆる形式的な学力の優劣ばかりに目を向けず、「やる気」のある若者をどんどん派遣してはどうでしょうか。