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2023年06月23日

ちょっと気になる記事・話題(96)

本州の多くの地域ではここ数日、梅雨の晴れ間が広がり、最高気温が35度以上の猛暑日を記録したところもあります。今週の後半から南岸沿いに梅雨前線が戻ってきて各地で曇りや雨の日が増えると予想されています。「梅雨末期の集中豪雨」などに警戒が必要な時期を迎えることになります。なお、6月21日は、1年で最も日が出ている時間が長い「夏至」にあたり、暦の上では本格的な夏を迎えたことになります。
さて、1月23日に召集された国会は150日の会期を終え6月21日に閉会しました。今国会では政府が提出した60本の法案のうち2法案を除く58本が成立しました。成立率は96.7%となり、通常国会として3年続けて96%を越えました。成立しなかった法案の一つは金商法改正案で、国に提出する義務がある四半期報告書を廃止し、決算短信に一本化することです。これにより企業の事務負担が軽減されます。四半期報告書の廃止は2024年4月1日を予定しており、政府・与党は秋の臨時国会での成立を目指すとしています。 

■■今週気になった出来事や動きについて:
■世界経済フォーラム、男女平等指数(2023年)を発表:
世界経済フォーラムが6月21日に男女平等がどれだけ実現できているかを数値にした「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しました。調査した146ヵ国のうち、日本は過去最低の125位にランクされました(前年は116位)。経済と政治分野の遅れが響き、2006年の発表開始以来、最低の順位となりました。特に低いのは政治における男女平等です。女性の議員数や閣僚数が他の国・地域と比べて大幅に少ないことに加え、これまでの女性首相が誕生していないことが政治分野で世界138位と位置付けられた背景です。また経済分野も収入や企業の役員・管理職の割合での平等が進まず、世界123位となりました。
■企業のダイバーシティ(多様性)への取り組み:
こういった現状に鑑み、我が国経済界でも遅ればせながら、ダイバーシティ(多様性)に本気で取り組む気運が高まっています。例えば社外取締役についても政府が2030年までに3割を女性役員とするよう数値目標を打ち出したことや、機関投資家、議決権行使助言会社が女性取締役ゼロ企業のトップ選任に、反対推奨を出す基準を導入するといった動きも企業に早急な対応を促しています。
一方、三井信託銀行が日経平均500種平均株価を構成する3月期企業388社を対象とした調査では、目下、取締役会メンバーに女性がいない企業は3%まで下がっています。ところがその内訳は社外取締役のみという企業が8割を占め、社内から登用された取締役が在籍する企業は僅か12.4%に止まったとのことです。まだまだ社内からの登用が極端に低く、時代のニーズに供給が追い付いていない側面が窺えます。これは企業側の責任が大きく、今後、性別に捉われない社内人材養成を進めること、そして女性側にも時代の変化に対応した自己実現への意識改革が、求められるのではないでしょうか。

■STEMの重要性増大とその分野の人材不足、そして女性の比率が低いこと:
スイスの国際経営開発研究所(IMD)がまとめた世界競争力ランキング(2022年、63ヵ国・地域)によると日本は34位でした。最近、特にITやDX化とともにSTEM(Science・Technology・Mathematics)が注目されています。米国では2000年代半ばから広まりましたが、日本は大きく出遅れています。OECD(経済開発協力機構)の統計によると大学など高等教育機関でSTEM分野を学んで卒業した人に占める女性の割合は、2019年で日本は17%に止まり、OECDの平均32%を大きく下回っています。因みに、2019年の国際数学・理科教育が世界39ヵ国を対象に数学テストを実施したところ男女間で殆ど差はなく、平均的には日本が米国を上回っています。なお、情報サービス産業協会によると日本のIT技術者に占める女性の比率は2021年22%と10年間に7ポイント上昇しました。欧米での同様の調査によると米国は22%(4ポイント減)、EUは19%(2ポイント増)でした。この分野は今後、女性の潜在能力を大きく引き出す可能性があり、しかも本人の意欲次第でリスキリングが可能です。ともあれ、現在、日本企業の80%以上がDXを担う人材が不足しており、女性への期待が高まっています。
■パナソニック社、人材戦略の方針となるDEIポリシーを制定:
パナソニック社では2021年に人材戦略の方針となるDEIポリシーを制定しました。DはDiversity(多様性)、EはEquity(公平性)、IはInclusion(包括性)です。中でも力を注ぐのはEquity(公平性)とのことです。底流にあるのは「企業経営において、社員それぞれが持つ多様な個性がより高い価値創出につながる」という経営理念です。企業が多角化・多機能化・多国籍化に対応し発展を目指すにはこういった基本理念が不可欠といえます。
■「仕事への適性」と「棲み分けによる協生」:
同性間でも偏差がありますが、異性間にも「違い」というか「差」があるのは否定できません。例えば相撲のようなプロスポーツの世界では「体力差」が決め手です。しかし他のほとんどの分野では性別に関わりなく「適性かどうか」による「棲み分け」、つまり「協生」が可能です。問題は「適性かどうか」が知識・経験の有無よりも、慣習・前例主義・知名度等で判断されることが多いことです。こういった点でジョブ型雇用は「適性」を活かす上で効果的です。
■経営資源は「ヒト・モノ・カネ」と言われますが、最近はこれに情報・知識(無形資産)が加わります。中でもヒト(人材)は最も大事です。中国の古典・管子にも「一年先を考えるなら穀物を植えよ、十年先を考えるなら木を植えよ、百年先を考えるなら人を育てよ(意訳)」とあります。にわか作りの人材ではすぐメッキが剥げます。盆栽を育てるのと同様、手間も時間もカネも掛かります。我慢強さも必要です。しかしこれを怠っては企業の繁栄は望めません。

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