今年は梅雨入りが例年より1週間程度早かったにも関わらず未だ梅雨明けせず、福岡、大分、佐賀の3県では10日、短時間に大雨をもたらす線状降水帯が発生し、大規模な土石流や浸水被害などによる人的・物的被害が相次ぎました。また、国内各地で連日、熱中症が多発しています。私が幼い頃は暑い太陽熱に晒されると発症する症状を「日射病」と称していましたが、今は室内でも罹ることから総称して「熱中症」と呼ぶのでしようか。いずれにせよ絶え間なく水分を補給することが大事なようです。
世界各地でも熱波の影響が広がり、干ばつや水害などの異常気象が増えているようです。WMO(世界気象機関)によると、世界の平均気温は過去最高を更新し、南米ペルー沖の海水温が上がる「エルニーニョ現象」が4年ぶりに発生しているため、今夏は気温が更に高まる可能性があるとしています。
先日、大阪~東京~長野~金沢~大阪というルートを旅しました。JR大阪環状線、東海道新幹線、北陸新幹線、北陸線、東海道線を走行したことになります。どの路線も大きなカバンを携えた外国人旅行者が目立ちました。コロナ禍発生前の2019年の年間インバウンド客数は3188万人。その後コロナの影響でほぼゼロまで激減しましたが、本年5月の規制緩和により、関空でも6割弱まで戻ったと聞いています。しかし受け入れ側は労働力人口の減少や、コロナ不況時における人員削減の後遺症により、人手不足やタクシーがつかまらないといった問題が顕在化しています。政府は2030年の訪日客数を6000万人という目標を掲げていますが、現状のインフラ(受け入れ態勢)のままではとても対応できず、オーバーツーリズム(過剰受け入れによる市民の日常生活への悪影響)に陥ることは必至と考えます。
■■最近目についたこと、考えさせられたことについて記します。
■今後の景気は一体どうなるのか:
最近の新聞記事に日本の景気に関する記述がありました。同じ日の新聞に、一つは日銀発表の7月「地域経済報告」(さくらレポート)。その見出しは「景気判断、3地域上げ」で、個人消費の回復が改善につながったとのことです。ところがその記事の横に内閣府発表の「景気ウォツチャー調査」があり、「街角景気、5ヵ月ぶり悪化」となっていました。更にもう一つ、東京商工リサーチによる「2023年上半期企業倒産件数、前年同期比32%増」という記事があり、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済が今後本格化することから、倒産の増加が避けられないという内容です。
また、物流サイドから最近の景況を見ると、国内貨物輸送の9割強を占めるトラック貨物輸送は量的に増加しておらず、燃料価格等コスト高騰分の荷主への運賃転嫁率は産業界で最下位とされており、経営的には厳しい状況にあります。また輸出は数量的には減少し、国際航空貨物は前年同月比減が続き、海上コンテナ輸送もかつてのブームは過ぎ去り、数量減と運賃の低下が著しく、世界経済の停滞を象徴しています。
一方、米国では根強いインフレを抑え込むためFRBは引き続き金利を上げ、景気を半強制的に冷やそうとしています。欧州各国経済も金利引き上げの影響で腰が弱く、牽引役を期待される中国経済もデフレ懸念が払しょく出来ない状態です。そしてその中国への依存度が高いアジアも力不足というのが現状で、当面、外需はあまり期待できないと思われます。また、先に記した世界的な異常気象により、各地で森林火災(欧州、カナダ、米国)や農産物への大きな被害(中国ほか)が出ています。
以上のようなことを勘案すると、国内外の景気の今後の見通しは厳しく考えておく必要があるでしょう。
なお、13日、ある会合で白川方明・元日銀総裁(現在は青山学院大学特別招聘教授)の講演を聞く機会がありました。演題は「内外金融情勢について思うこと」でした。日本経済の真の課題として、①高齢化、少子化による人口減少、②生産性上昇率の低下傾向、③低金利政策の副作用、④財政赤字の問題等、非常に興味深く、共感する内容でした。
■献血の不足が心配:「利他の心」が大切
弊事務所が所在するビルの1階の人の往来が多い場所で、ほぼ毎日、「献血お願いします」と記されたのぼりを持った人が立ち、献血への協力を呼び掛けています。同じビル25階に大阪府の「献血ルーム」があり、そこで働く職員さん達です。
我が国では年々、献血の不足が拡大しているそうです。献血者の数は、2005年度以降、毎年500万人前後で推移していますが、30歳未満の若年層の落ち込みが顕著で、2005年度の173万人が2021年度は91万人とほぼ半減しています。理由として一般的には「仕事や家事で時間がない」、そして若者では「針を刺すのが痛くて嫌」、「何となく不安」が多いようです。少子高齢化で輸血を必要とする人が増え、献血者が減れば、輸血用の血漿製剤が不足します。日赤の試算では2035年度に46万人分の献血が足りなくなるとしています。献血できる年齢は16歳以上69歳以下です。私は年齢的にもはや資格はありませんが、弊事務所のシニア・アシスタントのS君(67歳)は毎年献血を続けており、感服しています。誰しもいつ何時、輸血を必要とする事態に直面するやも知れません。従って若い頃から「利他の心」の醸成が必要です。
昔から「情けは人のためならず」という教えがあります。この格言は文化庁の調査結果(2022年)によると、日本人の約半数が「情けをかけることは、かえってその人のためにならない」と誤使用しているとのことです。そのため辞書には元ネタを「情けは人のためならず、回り回って己がため」と改変して掲載しているようです。実はこの言葉は、旧五千円札にも描かれた新渡戸稲造が作った詩(「一日一言」、大正4年発売)の一部で、そこには「施せし情けは人のためならず、おのが心の慰めと知れ。我れ人にかけし恵は忘れても、人の恩をば長く忘るな」と記されています。
いずれにせよ私たちは「利他の心」を大切にしたいものです。