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2023年09月15日

ちょっと気になる記事・話題(105)

9月中旬となりましたが、依然として日中は厳しい暑さが続いています。ただ朝夕はしのぎやすくなり秋の気配を感じる時候となってきました。この時期は様々な果物が店頭に並びます。幼かりし頃は「梨」といえば鳥取特産の「21世紀」というブランドが独占的でした。今は梨のみならず、みかんやリンゴ等もいろいろな地方で栽培され、出荷時期や味を競っています。それを支えるのはもちろん農業へのIT・AIの導入等、栽培技術の進歩ですが、それに加え鮮度を保つための保管や輸送といった、物流・流通システムの改良も寄与していることも忘れないでいただきたいと思います。 

ところで、8月下旬から9月にかけ、毎年恒例の人間ドックを受診し、通常の検査に加え頭の中からお腹の中まで、CT、MRI、エコー、胃カメラ、それに今年は2年ぶりに大腸の内視鏡検査も受診しました。結果は幸い「特記事項なし」。私は来月には81歳になりますので、これで安心ということではありませんが、とりあえず「天高く馬肥ゆる秋」をエンジョイ出来そうで、健康の有難さをしみじみと噛み締めています。 

■■最近もいろいろな動きがありました。
■ますます多極化・分極化が進む世界:
岸田総理は9月5日~8日、インドネシアの首都ジャカルタで開催されたASEAN+3首脳会議並びに東アジア首脳会議(EAS)に続き、9月9日~10日、インドの首都ニューデリーで開催されたG20サミットに出席しました。浮き彫りになったのは専制主義・全体主義国家と自由主義国家の対立に加え、先進国と新興国との地球環境問題や経済支援についての意見の相違でした。また新興国(発展途上国)の間でも、2000年以降急速に経済成長を遂げたBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)と称されるグループでは、メンバー国の拡大を目指す動きがあるようです。ところが国によって先進国との距離感の違いがあり、必ずしも方向性は一致していません。いずれにせよ、かつて植民地化されていた新興国の間では、元・宗主国に対する潜在的なナショナリズム(民族主義)が表面化しつつあります。その一例としてインドは、ヒンディー語での国名「バーラト」への改称を本気で考えているようです。同国は今年、中国を抜いて世界最大の人口(14.08億人)となりました。同国民の8割はヒンドゥー教徒ですが、残る2割の主流であるイスラム教徒への弾圧でしばしば衝突が発生しています。同国は一応世俗主義(政経分離)を掲げていますが、モディ首相はヒンドゥー教を至上主義とする宗教国家を目指す動きを見せています。
そのモディ首相はグローバルサウスの盟主としての地位を目指し、何とか首脳宣言の取りまとめに持ち込みました。 しかし多極化・分極化する世界ではお互いの主張に埋めきれないギャップあり、問題点の羅列に止まり具体策へのロードマップは示されませんでした。いささかセレモニー化していることは否めませんが、それでも首脳同士が顔を合わせることは非常に意義あることです。その点から米国との対立色を強める中国の習近平国家主席が欠席し、米・バイデン大統領との直接対話を避けたのは残念でした。新しい地図を公表しASEAN諸国から非難を浴びている、東シナ海での領有権拡大について、言質(げんち)を取られるのを嫌ったように思います。
なお、世界経済・社会への不安定要因として、今思い浮かぶだけでも、①長期化するウクライナ戦争と懸念される支援の先細り、②世界をけん引してきた中国経済の低成長化と深刻な内部矛盾、それに伴う対台湾強硬策、③ならずもの国家(ロシア・北朝鮮)同士の連携強化等々。これに④来年11月、もしトランプ氏が米国大統領に返り咲くと、同国は保護主義と孤立主義を一段と強め、世界は振り回され混迷に陥ります。
これといった天然資源がなく、地政学的リスクに本質的に脆弱な我が国にとって、「国益を守る」ことへの「国民の意識改革」と、国力再興に必要な「経済の構造改革」を、どう進めるかが重要な課題です。 

■急増する企業倒産:
中小企業の倒産予備軍が増加中です。保証付き融資の返済を信用保証協会が肩代わりする「代位弁済」は、本年4~6月に9720件と前年同期を70%上回る水準に達しています。前年同期超えは7・四半期連続です。コロナ規制が緩和されたことにより経済活動は再開され、インバウンド客の増加によりサービス業を中心に売り上げは戻っています。しかし物価高(調達費)や人手不足→人件費上昇等、コストアップを売り値に転嫁できていない企業数が約4割(東京商工リサーチ)占めるのが実態で、思うように利益が上がらず、債務の返済に窮している事業者が増えているようです。 

■中小企業の事業承継について:
帝国データバンクによると2022年は年商1億円未満の社長の平均年齢が61.8歳で、1990年比で9.4%上昇しました。企業全体で後継者がいない割合は57.2%でした。ほぼ3社に2社が後継者不在ということです。2022年度にそれが原因で倒産した企業数は487件で過去最高となりました。中小企業庁の試算では2025年までに平均的引退年齢とされる70歳を超える中小企業者は約245万人となり、そのうち127万人は後継者未定としています。日本の企業数は300万社を超え、その99.7%は中小企業とされており、総就業人口の約7割も占めており、その健全な発展は日本経済と国民生活を支える上で極めて重要です。 

そういった中、8月22日、中小企業のM&Aを専門とする(株)ストライク社主催の「運輸・物流業界の2024年問題に向けて」と題するセミナーで講師を務めました。私のタイトルは「トラック輸送業界の現状と課題、~トラック輸送事業者は自ら活路を拓け~」でした。トラック輸送業界は99%以上が中小零細企業で占めており、過当競争から厳しい経営状態にあります。「真荷主・元請け・下請け・孫請け、・・・」といった多層構造で成り立ち、長時間労働・全産業平均を下回る賃金が常態で、深刻なドライバー不足と高齢化が進んでいます。その上、今ではA点からB点へ貨物を運ぶだけでは付加価値は得られず、物流アセットや情報化・省力化(IT・AI化)への投資が不可欠です。それを可能とするためにはある程度の事業規模が必要であることと、それを前提としたM&Aや持ち株会社化といった手段について申し上げました。そして何よりも大事なことは、それぞれの事業者が「自ら活路を拓く」という気概、つまり最近の日本人経営者で薄れている「アニマルスピリッツ」(企業家魂)を、奮い立たせてもらいたいと締めくくりました。

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