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2023年09月22日

ちょっと気になる記事・話題(106)

岸田首相は9月13日、内閣改造を行い過去最多に並ぶ5名の女性大臣が誕生し、うち3人は初入閣でした。ところがそれに次ぐ副大臣・政務官54名の人選に女性が一人も入っておらず、いろいろ事情があったにせよ女性登用に対する本気度に疑問符が付きました。以前から常に指摘されていたことですが、世界経済フォーラムが6月に公表したジェンダー・ギャップ指数で、我が国は146ヵ国中125位、特に政治分野では138位という、とても先進国と呼べない低位置にランクづけられています。
また、今回の人選が派閥のバランスを重視した結果と受け止められ、支持率の上昇に繋がりませんでした。そういったことも衆議院の解散時期に影響しているようです。 

■2023年の地価上昇:
9月19日、土地売買の目安となる2023年基準地価が国土交通省から発表されました。住宅地や商業地など全用途の土地の上昇割合が全国の44.7%に上り、全国平均では前年比1.0%値上がりし、2年連続のプラスとなりました。上昇率はコロナ前の2019年の0.4%を上回り、回復基調が鮮明になっています。背景として国内投資と訪日客、それに再開発の増加が挙げられています。しかし今後は金利の上昇により、値上がり幅が鈍化する可能性も指摘されています。
土地価格の動向は景気に大きく影響します。我が国では1985年のプラザ合意がもたらす円高対策とした金融緩和により、土地価格が高騰し、ピーク時は「山の手線内の土地総額でアメリカ全体を買える」とまでいわれました。ところが相場(Market Price)は時に実需が伴わない投機をもたらします。それにより膨れ上がったバブルは必ずどこかで破裂することは歴史で証明されています。隣国中国では今、まさにその現象が生じています。

■世界経済の動向:
経済協力開発機構(OECD)は、2024年にかけて世界経済が2.7%成長へと減速するとの見通しを示しました(6月時点の見通し3.0%)。各国のインフレ対策としての金融引き締めに加え、中国の不動産市場の構造問題が影響するとしています。中国経済は民間の先行き不安で需要不足が生じており、回復に3年かかるという見方が出ています。また、外資系企業間では同国の政策・法規制の透明性を疑い、調査対象企業の40%が対中投資を下方修正しています。同国政府は経済より国際的な政治力学を優先しており、経済対策の遅れが懸念されています。
加えて、世界経済の先行きに関する不安材料の一つは、世界的に債務が増加していることです。国際金融協会(IIF)の集計によると、2023年6月時点で307兆ドル、日本円換算で約4京円と過去最高額を更新したようです。因みに1京円は通常「いっけいえん」と読み、1兆円の1万倍です。世界の債務は2023年の上半期に10兆ドル増加し、その8割は先進国市場とされ、中でも企業の債務が増え続けています。2008年にいわゆる「リーマン・ショック」が発生し信用収縮が深刻化しましたが、その教訓を生かし国際的な銀行規制の枠組みが強化されています(バーゼル規制Ⅲ)。 

■米国でストライキ相次ぐ:
このほど開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)で、今回は利上げを見送ることを決定しました。労働需給が若干緩和の兆しを見せていることが背景として挙げられています。ただし年内にもう一度0.25%の引き上げを示唆しています。
米国ではこのところ統計上はインフレが収まっていますが、再び原油価格が上昇しつつあることと、様々な業界で労働組合による大型ストライキが、23年ぶりの高水準で多発しています。中でもUAW(全米自動車労組)にとって今年は4年に一度の労働条件改定期に当たり、40%を超える賃上げを求め、9月に入りストライキを決行しています。米国の労働組合組織率は約10%(日本の2022年推定は16.5%)とさほど高くありません。しかし世論調査では労組を「支持する」が8月末で約7割と大きく上昇し、バイデン大統領も来年の大統領選挙を視野に入れ、組合の要求に理解を示しているようです。目下のところ世界で独り勝ちのような米国経済ですが、こういった動きが今後「賃金インフレ」をもたらす可能性があり、これがFRB議長の「年内にもう一度利上げを行う」ことを示唆する発言に繋がっているようです。 

■宅配便の増加と一般トラック貨物輸送について:
宅配便はEC(電子商取引)の増加とともに扱い個数が増加し、昨年は前年比1.1%増の50億588万個となり8年連続の過去最多となりました。一年間で約5000万個増えたことになります。この増加に対してラストワンマイルでどれくらいの要員が必要かラフな計算をすると、1日に一人当たり約200個デリバリーするとして、週5日で約1000個、1年(52週)で5万個強となります。とすると5000万個増えると1000人の増員が必要という計算になります。なお、宅配便の扱い個数にはアマゾンのように自社による直接デリバリーは含まれていません。これらの多くはギグワーカー、いわゆる個人事業主(ドライバー)と契約しているようです。
ところで来年4月からトラック貨物輸送について「時間外労働時間上限960時間」という規制がスタートします。この法律が修正される前は違反に対して「行政処分」で済みました。しかし来年4月以降は労働基準法(厚労省)違反として「6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」という罰則が事業者に課されます。また、来年4月から「修正改善基準告示」が施行される見込みで、違反は貨物自動車運送事業法(国交省)により「行政指導」の対象となります。
「時間外労働時間の上限規制」については様々な角度から論じられていますが、全体の約9割を占めるとされる40歳以上の中高年ドライバーにとっては、「労働時間短縮は結構だが、収入が減っては困る」のが本音です。もし収入が減ることになると、ドライバーの中には生活防衛のため、①ブラック事業者を含め、より多くの賃金を得られる事業者に転職するか、②他産業を含む副業・兼業に向かうか、或いは、③労働基準法の適用外であるギグワーカーに転ずる、といったことが考えられます。
特に宅配業者やEC通販業者のドライバー確保へのニーズが強いことから、一般貨物自動車運送事業者との間で人材の争奪戦が生じることが懸念されます。

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