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2023年09月29日

スポーツを通じて企業組織を考える(107)

9月のブログ配信は今回が最後となります。今月は金曜日が5週ある月のため、月間配信数が5回となりました。ところで今年も残すところ第4クォーターの3ヵ月ですが、4日間戦うプロゴルフトーナメントでは勝負を決するのは、最終日の最終3ホール(Sunday Backナインの上がり3ホール)と言われます。そういった点で今年1年をきっちり締めるには、これからの3ヵ月が極めて大事ということになります。
さて、2023年ラグビーワールドカップ(W杯)2023フランス大会で、日本は決勝トーナメント進出に向け負けられないサモアとの一戦が、日本時間、本日(9月29日、午前4時)で行われ、早起きしてテレビ観戦しました。結果は最後までハラハラしましたが、日本が28-22で勝利をおさめました。そして10月8日、ベスト8を目指す対アルゼンチン戦へと一歩駒を前に進めました。よかった! よかった!
私はラグビーのルールに詳しくありませんが、体と体が激しくぶつかり合う危険なスポーツだけに、反則に対して極めて厳しいスポーツだと再認識しました。
スポーツの世界では、もちろんアマチュア競技でも勝つための厳しさは同じですが、プロスポーツの場合は企業経営とは次元の異なる厳しさがあるように思います。ゴルフとか相撲等々の個人競技は特にそうです。長年携わってきた企業経営ではトップに弱点があっても組織力で補えます。しかし個人競技の場合は衆人が見守る中で勝負するのですから、一目瞭然でごまかしがききません。「親の七光り」等はもちろん通用せず、周りからの支えにも限界があります。結果はすべて本人の力次第であり、大変な孤独感と精神的プレッシャーだと思います。

今月両国国技館で開催された大相撲は東前頭15枚目の熱海富士が大活躍し、11勝4敗同士の優勝決定戦の末、大関貴景勝が4度目の優勝を飾りました。決定戦で大関が横に変化したことをいぶかる声がありました。しかし横綱不在の場所での大関としての責任感と、熱海富士の気合が入りすぎていることを冷静に観た動きであり、宮本武蔵の「五輪書」に通じるものを感じました。

一方、活躍ぶりが話題になり人気沸騰した熱海富士は優勝決定戦で負けましたが、大関相手に変な小細工はせず真っ向勝負したのは立派でした。母子家庭で育ち、「早く出世して母親を楽にさせてやりたい」というハングリー精神が突破力になっているようです。なお、同力士は立ち合い間際に後ろ足で砂を蹴るクセが指摘されています。末は横綱を目指す未完の大器ですから、今から「心技体」を鍛えるとともに、品格も具えてもらいたいものです。

さて、日本人の特性を考えるとラグビーのような団体スポーツの方が、個人競技よりチームプレーを活かす点で適しているとされています。私も同感です。これは日本人が太古の時代から獲物を求めて移動する狩猟民族でなく、ある特定の場所で共同生活し、相互扶助を旨とする農耕民族であることに起因しているように思います。この民族性は一朝一夕で変えられるものではありません。

この点は企業の組織、人事を考える際にも重要な点です。最近「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行の必要性が論じられています。「メンバーシップ型」は従来の終身雇用制に繋がります。それぞれの形態には一長一短、強い点・弱い点があります。日本人の国民性は安定志向が強い上に、産業間の労働力の移動も少なく、政策面でもセーフティネットが重要視されます。また退職金制度も定着しています。そういった国、企業文化の下で、今後は世界に伍していくには「ジョブ型」への移行が必要なら、幼少のころから多様性と独創性を重視した教育や、ギフテッドプログラム(異能・異才の特待制度)の導入、それに海外留学等による国際感覚の養成といった、切磋琢磨と向上心を根付かせることが不可欠です。結局は二者択一ではなく、「メンバーシップ型」をベースとして進化させる「ハイブリッド型」になるのではと考えます。

■経済対策の5本柱:
政府が10月中に策定する経済対策は賃上げや投資促進に重点を置くとしています。その柱は①物価高から国民生活を守る、②持続的賃上げ、所得向上と地方の成長、③成長力につながる国内投資促進、④人口減を乗り越え、変化を力にする社会変革、⑤国土強靭化など国民の安全、安心対策、が織り込まれるようです。心地よい美辞麗句が並んでいますが、いずれも一朝一夕にはいきません。しかもその財源は税収増だけでは足りず、赤字国債に頼らざるを得ません。その結果、一段と財政が悪化する恐れが懸念されています。
景気の現状は政府が9月の月例経済報告によると、国内の景気判断を「緩やかに回復している」との表現を据え置きました。企業収益も「総じてみれば改善している」に上方修正されました。内閣府の推計では需給ギャツプは4~6月期にプラスに転じたようです。政府はこれまで3年間、コロナ対策として計140兆円の補正予算、いわば「解熱剤」を投与し続けてきました。その効果もあってか景気は概ね「平熱」に戻った状態です。ところがBIS(国際決済銀行)によると、「日本円」は1970年以来、53年ぶりの最安値を記録したとされています。通貨価値が下がるということは日本の国力、経済力が弱体化していることを象徴しています。この間、国の債務残高はGDPの2倍以上に膨れ上がっています。換言すればこれだけ莫大な資金を投下したにも関わらず、我が国の国力の向上に繋がらなかったと言わざるをえません。その背景に少子高齢化や人口減少を招いた社会構造や問題の先送り政治、国際化やIT化に適応できる人材養成(教育)の欠如、更には様々な規制の存在と、国力の向上・強靭化に結び付かないハコものへの、無駄な投資が多かったのではないかと思います。我が国は、こういった面での反省に立ち、平熱に戻った今こそ体質改善を図らないと、今後の成長は望めないのではないでしょうか。

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