10月に入って5日目、富士山で初冠雪が観測されたとのこと。つい先日まで酷暑が続いており、「え、早くも初雪!」と思いましたが、甲府地方気象台によると昨年より5日、平年より3日遅いとのこと。ここにも地球温暖化の影響が出ているようです。
そういった天候不順のせいか、季節性インフルエンザの感染が例年より3~4ヵ月早く拡大しており、ワクチン接種が間に合わず学校閉鎖が増加しています。
さて、今週の話題は何といっても大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手(29)が44本塁打でアメリカン・リーグの本塁打王に輝いたことでしょう。打撃主要部門で初のタイトル、しかも「日本人には無理」というこれまでの常識を覆す偉業です。また本格的に投手も務めながら、その座についたのは1918年、1919年のベーブルース以来ということでも、その無双ぶりが分かります。大谷選手の類まれな素質に加え、まるで求道者のようなひたむきに切磋琢磨する姿に感服するばかりです。
そして今年もノーベル賞の発表の季節となりました。本年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ特任教授と同大のドリュー・ワイスマン教授が記者会見で語った、「みんなが諦めていたなかで、2人で20年以上どうやってmRNAワクチンをうまく機能させられるのか模索していた」という言葉が印象的だったことと、二人の共同研究がスタートしたキッカケの偶然さに摩訶不思議なものを感じました。そして有名な発明王・エジソンが遺した「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」という言葉を改めて思い起こしました。
このほかノーベル化学賞も米国の3人の研究者に授与されることになりました。本年は米国が独占したような結果ですが、ここにも同国では研究者にとって恵まれた環境が提供されていることを象徴しているように思います。
■■最近気になったことについて記します:
■2025大阪・関西万博について:
2025年4月の開催まで残すところ約1年半となった大阪・関西万博ですが、パビリオン建設の遅れと膨張する資金の負担が問題になっています。中でも必要資金は当初の1250億円が1800億円に増加し、さらに今回の見直しで2300億円へと大幅増額されました。オリンピックは都市が主催者であるのに対して、国際万博は国の主催です(正式名称は2025年日本国際博覧会)。そして所要資金は原則として国と地方自治体、それに経済界が1/3ずつ負担となっています。しかし度重なる追加資金の負担を巡り、このところ関係者間でキシミが生じています。
振り返りますと、大阪関西万博は橋下知事時代(2008~11年)の時、夢洲の有効活用を目指し誘致に乗り出したのが発端です。そして、知事は太いパイプがあった首相官邸(当時は安倍総理)に持ち込んだのでした。当時、関西経済界は万博については賛否が割れており、どちらかと言えばネガティブな雰囲気でした。ところがその後設立された超党派の万博誘致国会議員連盟の会長に、関西経済と縁の深い二階俊博幹事長が就かれたことから様相は一変しました。その結果、官民一体となって誘致に漕ぎつけたのですが、誘致の成功を大阪維新がプロパガンダに使ったことは事実です。
その後、本来は2020年に開催されることになっていたドバイ国際博覧会の開催が1年遅れ、2021年10月1日~2022年3月31日開催となったことから、通常4年の準備期間が3年となったことも諸手続きや準備に影響しました。その上、大阪では地方選挙(知事・市長・府議会・市議会等)、並びに国政選挙で日本維新の会・大阪維新の会の圧勝が続きました。そういった政治情勢に加え、維新と親密だった安倍元総理が亡くなり岸田政権に変わったことから、中央と地方政府の密接な意思疎通に支障を来していることは否めません。そういったことが蓄積していろいろな点で準備遅れに繋がっているのではないでしょうか。しかし、今はそんなことは言っておれません。開幕の500日前となる11月30日には前売り券の発売がスタートします。大阪・関西万博の成否には国の威信が懸かっています。そのためには万博開催を「政治利用しない」ことをお互いに確認し、一枚岩となって成功に向け取り組むべきでしょう。
■米国の政治・経済について:
米国では度重なる利上げにもかかわらず、景気は根強く、個人消費や労働需給も堅調に推移しています。そのため潜在的なインフレ圧力が強いことから高金利政策が長期化するのではないかとする懸念が株価に影響しています。その上、国家予算の年度末(米国の会計年度は10月~9月)、つなぎ予算を巡る審議を巡り、米国政治史上初めて下院議長(共和党)解任という事態まで生じました。今、米国では共和、民主両陣営の強硬派の対立が激化し、その上、来年11月の大統領選挙も絡んでStalemate(手詰まり)に陥っています。これは米国の国内政治のみならず、ウクライナ支援を含む、国際政治・経済にも大きく影響します。しかし私は、目下のところ米国では振り子が大きく揺れ動いていますが、最後は米国民に根付く民主主義が、事態の打開に向かって進むことを信じています。
■我が国の景気動向について:
日銀の短観(9月)によると、供給制約が解けて円安効果が強く出ている大企業製造業だけでなく訪日客増などで非製造業も改善したとしています。上場企業の業績も上方修正が相次いでいますが、これは①円安メリットを享受している、②コスト上昇分を販売価格に転嫁できている、といった業界です。しかし先行きについては、最大の貿易相手国である中国経済の低迷と政治的な摩擦に加え、欧州や東南アジア経済も勢いを欠いていることから楽観できません。既に国際海上コンテナの運賃は大きく下落しています。また、現下の円安にも関わらず8月の航空貨物輸出量は前年比23%減少し、20ヵ月連続して前年同月を下回りました。そして今後の懸念材料はこれまで我が国の外貨収入を支えてきた自動車の輸出市場が、中国を中心にEV(電気自動車)へと急速に変わりつつあることです。自動車に替わる輸出競争力のある商品(ソフトを含む)の開発が喫緊の課題です。