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2023年11月10日

ちょっと気になる記事・話題(112)

先週の金曜日、11月3日は「文化の日」で更新は一回休み、2週間ぶりの配信です。
今週のトピックスは関西在住者にとっては、何と言っても阪神タイガースの38年ぶりの「日本一」でしょう。その経済効果についてどういう根拠で算出したか分かりませんが、1300億円とかいう試算が公表されています。
しかし冷めた見方をすると、地元経済の底力が顕在化しているのであればプラス効果となりますが、その一方で「実質所得は18カ月連続マイナス」という現実に目を向けますと、年末商戦の前倒しとなりかねず、いずれ熱気が冷めるとその反動が出て、再び節約志向という厳しい現実にもどることになります。
なお、阪神タイガースファンの中には、「常勝阪神」を願う熱狂的なファンもいますが、ジャイアンツファンのように必ずしも「最強」が必須ではなく、勝っても負けて裏切られても付いていくのがタイガースファンです。換言すれば「成績のよい優等生の息子」ではなく、どちらかと言えば「ドラ息子」がたまに孝行してくれると嬉しい、親の気持ちに通じるような気がします。従って常勝となったら「阪神タイガースらしさがなくなる」という皮肉な見方ありますが、いつまでもファンに愛されるチームであってほしいものです。因みに弊事務所のシニアスタッフは典型的なトラキチです。
一方、米国球界では大谷選手がフリーエージェント(FA)になったことから、全球団との交渉が解禁され、獲得競争が激化しているようです。新規契約金は総額5億ドル(約750億円)とも報じられています。ところが、大型契約の選手が増えると他の補強に振り向ける資金が限られ「勝てるチーム」づくりと相反します。大谷選手は傑出したプレイヤーであることは疑う余地はありません。しかし野球は9人でプレイするスポーツであり一人では戦えません。今年のエンゼルスはア・リーグ西地区で5位に終わりました。結局、特定の選手の人気に頼るか、総合力を強化するかの判断になります。
この点で今年の阪神タイガースは、個人としては突出した成績の選手はいませんでした。ホームラン数はセーリーグ6チーム中5位(84本)でジャイアンツ(1位、164本)のほぼ半数、投手陣の頑張り、若手選手の活躍、それにリーグ最多の四球数獲得という選球眼加え、監督の我慢強い采配が栄冠をもたらしたのです。
やはり団体スポーツで勝利するには特定の選手の人気・力に依存し過ぎず、チームプレーに徹した総合力が第一ということでしょう。これは企業経営にも通じます。 

■■最近想うこと:
■ガソリンへの補助金について考える:
我が国のガソリン消費量は、車の燃費改善やマイカー保有率の減少等により、毎年2~3%のペースで減少しています。そのため給油所の数も1994年度末は6万カ所を超えていましたが、2022年度末には半分以下の2.8万カ所に減少し、しかもその4割はセルフサービスです。将来はEV化(電気自動車)により、ガソリン消費量はさらに減少が見込まれます。それに伴い製油所の数も減っており、先日もENEOSの和歌山製油所が閉鎖され、地元経済に大きな影響が出ています。
一方、原油価格は主要産油国の減産にも関わらず、他の産油国、特に世界最大の産油国である米国の8月の原油生産が過去最大を記録したことや、イラン、ブラジルが増産していることに加え、需要は世界的に景気が低迷していることから、原油価格は80ドル割れが迫っています。
しかし私たちは50年前に起こった第一次オイルショックを教訓とすべきです。私はあの当時の社会の混乱状態をはっきり覚えています。すべての価格が高騰し、トイレットペーパーを始め生活必需品が買占めで目の前から消え、世の中はパニック状態に陥りました。因みに現在の消費者物価は2~3%ですが、1974年の消費者物価上昇率は20%に達する猛烈なインフレで、毎日のように店頭価格が上がりました。
今は確かに様々な理由で原油価格は低迷しています。しかしこれは極めて複雑な地政学的リスクの中での一時的な静寂かも知れません。世界情勢ますます複雑化する中で、米国の調整力・影響力は落ちており、国内世論は分断され、今後の政治情勢も流動的です。現下のイスラエル・パレスチナ戦争やロシアのウクライナ侵略を始め、世界がこれからどうなっていくのか、まったく予想がつかないのです。今の世界情勢は、中東からの原油輸入が全体の約9割に達している我が国にとって、薄氷を踏むような状態であることを忘れてはなりません。正に「油断大敵」です。
そういった状況下、政府は年末で終了する予定のガソリンなどの補助金を、来年4月末まで延長する方針を示しています。ところが会計監査院が「支給に相当する額が小売り価格に反映されていない」という調査結果を公表しました。最近、ガソリン価格は地域により価格差はありますが、昔のような安値販売は姿を消しました。つまり市場価格が硬直的になってきています。
一方、GDPの2倍以上という危機的な政府債務を抱えながら、ガソリン価格への補助金を続けることは、石油危機の発生と紙一重の状態にある中で、消費量を抑制すべき方向と逆行しています。そしてどれくらいの消費者が恩恵を感じているでしょうか。我が国の公共交通機関は世界屈指だと思います。ガソリン価格に連動する軽油を燃料として使用するトラック輸送事業者にしても、今の過当競争を放置したままでは、補助金分は中小零細事業者の懐には殆ど残りません。むしろ燃料価格の高騰や、人材確保に必要な賃上げをテコ(理由)として、事業者に生き残りを賭け荷主と運賃値上げ交渉させるべきです。冷たい言い方かも知れませんが、それが出来ない事業者は退場もやむを得ないくらいの、強い市場メカニズムが我が国には必要です。補助金や助成金のばら撒きはゾンビを増やし、結果として全企業の99.7%が中小零細企業で占める産業構造となり、他の先進国と比較し生産性が低い要因の一つとなっています。その長年の積み重ねがGDPで12年前に中国に抜かれ、間もなくドイツ、インドに抜かれるという、国力の低下をもたらしたのではないでしょうか。

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