今年も残すところ10日となり、本来の冬型の気候が到来し寒い日が続いています。年末年始の商戦期に入りましたが、旅行や外食消費が新型コロナウイルス禍前を上回る傾向が見られます。旅行費用は過去最高となる見通しで、東海道新幹線も過去最多の列車を運行するようです。ホテルや百貨店も客足が戻り、居酒屋の12月の予約件数も好調のようです。ただ人手不足は一段と厳しく派遣料やアルバイト料金も上昇しています。原材料高に加え人件費高騰をカバーできず倒産も増えています。今後の景気が本格的な上昇気流に乗るかどうかは来年の春闘の賃上げ次第です。日銀もゼロ金利政策転換の前提として、そのあたりをもう少し見極めたいようです。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■ウクライナ戦争の今後・香港の議会選挙結果・台湾の総統選挙と
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)が始まって以来、間もなく2年になろうとしています。ウクライナ軍はここ数カ月反転攻勢に転じていますが戦況は一進一退の膠着状態にあるように感じます。そして厳しい冬の到来とともに大規模な作戦は無理な状況になるようです。こういった軍事情勢ですが、伝えられるところではウクライナ軍・国民の領土奪還への士気は依然として高いようです。
このような情勢下、懸念されるのは西側諸国に拡がる支援疲れです。それがウクライナへの軍事支援の遅延・縮小に繋がりつつあります。特にこれまで約4兆円を拠出し、突出していた米国の支援が国内政治の混乱から、先行きが見通せない状況に陥っています。それぞれの国により立場の違いはあるでしようが、このままではプーチンを喜ばせることになりかねません。こういった一連の動きを見ていますと、10月7日に発生したハマスのイスラエルへのテロ攻撃は偶発ではなく、世界の関心をウクライナ一辺倒から中東に目を向けさせ、米国を始め国際世論と軍事支援を分割・分断させるという、ロシアの陰謀・画策があったような気がしてなりません。
一方、12月10日行われた香港の地方議会にあたる区議会議員選挙は、中国への返還以来最低(27.5%)の投票率の下で、親中派がほぼ独占しました。これで香港の民主化への動きは事実上封じ込まれたといえます。すべて中国政府の思惑通りに事が運ばれおり、香港の人々は諦めの雰囲気になりつつあるように感じます。
そして次は、台湾で来年1月13日に投票が行われる総統選挙(4年に1度)の行方です。この時期は我が国では未だ正月気分が抜け切れませんが、台湾の正月は春節(来年は2月10日~8連休)です。目下、現政権の民進党・蔡総統の後継を目指す同党・頼清徳氏がリードしていますが、最大野党で親中派である国民党・侯友宜氏が激しく追い上げています。台湾の人々の約7割は「国の在り方」として「現状維持」を望んでいます。しかし現実は「台湾統一」を巡る米中対立の渦中に巻き込まれています。ここで懸念されるのが、独立色の強い政権の誕生を阻止すべく、中国が様々な形で情報戦(デマ情報)や軍事的圧力を強めていることです。その上、ウクライナやガザ地区での激しい戦闘と残忍な殺戮や、香港の民主化を封じ込めた中国政府の強硬策を台湾の人々がどう感じているか。さらに最近の米国の政治・世論の混乱ぶりから、「もし中台間で戦争が勃発した場合、本当に米国は助けてくれるのか」という疑念が生じても不思議ではないでしょう。これらが無力感・厭戦気分に結び付き、親中派である国民党に勝利をもたらす可能性が高まることです。西側にとって最悪のケースは台湾政府と人々の対中姿勢が変化すること、つまり現体制が内部から崩壊することです。そうなると他国は干渉できません。これはアジアの地政学並びに、わが国の安全保障にとっても極めて重大な問題です。
■米国大統領選挙と国際情勢について:
米国では来年11月5日に大統領選挙が行われます。日本の社会常識では考えられないことですが、現状ではトランプ前大統領が返り咲く可能性があります。再選されれば米国は一段と保護主義・孤立主義を強めるでしょう。それをプーチンは喜びますが、欧州諸国はこれを最大のリスクとして対応策を検討していると聞きます。相手国の大統領や国家主席と直接対話する役割は、それぞれの国のトップの責務、即ち日本では首相です。その点で世界情勢を俯瞰し、如何なく外交力を発揮した安倍元首相はもはやこの世にいません。米国大統領選挙の帰趨はわが国の将来にとっても極めて重大なことです。
世界の政治力学は極めて冷徹で、「正義が勝つのではなく、勝った方が正義」なのです。我が国でも「勝てば官軍、負ければ賊軍」と言われてきました。「負けるが勝ち」はありえないのです。そして「人類が人間という生物」である限り、人種・宗教・領土を巡る紛争・戦争が地球上から無くなることはあり得ません。現在の国際情勢は残念ながら、団結を強める専制主義・全体主義国家が、足並みの乱れが見られる自由主義・民主主義陣営を押し気味です。そんな中、今の日本の政治体制は漂流状態にあります。国民の意識レベルも「平和ボケ」に近い状態です。果たしてこれでますます混迷を深める国際情勢に対応できるでしょうか。
■世界でも類まれな「送料無料」表示について:
消費者庁は通信サイトなどの「送料無料」表示について対応策を検討した結果、「表示自体の規制は見送り、自主対応を求める」という、販売事業者寄りの結論を公表しました。「無料表示が適正運賃収受の妨げになっているという合理的根拠を示せ」という通販業者側の主張が取り入れられた格好です。他の業界では2024問題から生じるドライバー不足に備え、出荷体制等SCMについて、同業間の垣根を超え創意工夫を図っている中で、極めて時代錯誤的な発想ではないでしょうか。
それでは通販事業者側にお訊きしたいのですが、実際には運賃は実在し、それを自分たちが立替払いし購入者への売り値に転嫁する、つまり運賃の支払いが実在しているにも関わらず「運賃無料」と表示するのは、「消費者を騙している」とまではいいませんが、お買い得感を醸成し販売促進を狙った、「虚偽表示」に当たるのではないでしょうか。
議論は平行線を辿っていますが、落としどころは「運賃は当方負担」、或いは「運賃込み価格」といったところが妥当ではないかと考えます。販売関係の全事業者が歩調を合わせば問題は生じない筈です。
■■年の瀬のご挨拶:
本年のブログ配信は今回を以て最終とし、来年は1月5日(金)から再開させていただきます。今後とも引き続きご愛顧のほどお願い申し上げます。
本年中、皆様方には大変お世話になったことに心からお礼を申し上げますとともに、時節柄、くれぐれもご自愛の上、楽しい年末・年始をお迎えになりますよう、心より祈念申し上げます。