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2024年01月19日

ちょっと気になる記事・話題(121)

このところ本格的な寒波とともに寒い日が続いています。能登半島地震の被災地では一段と厳しい気象条件の下、発生後2週間たった今も約1.6万人が避難生活を強いられています。そして未だ6市町村のほぼ全域を含む、8市町計5.5万戸余りで断水が続いています。また現在も震度5程度の余震が起こっています。輪島市の海岸線の地盤が隆起している映像を観ると、改めて自然の力のすさまじさを思い知らされました。国交省によると、過去に起こった津波を教訓として、「此処から下に 家を建てるな」に類した、「津波の石碑」が東北3県で317基あるそうです。人類は自然と真っ向から闘い抑え込もうとするのではなく、自然に対する畏敬の念を持ち、共生する道を選ぶべきと考えます。自然の力は「想定外」では済まされないのです。さもなければ同じ被害を繰り返すことになりかねません。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
前号でも触れましたが、今回も台湾と米国大統領選挙のその後について触れます。
■台湾総統選挙と立法院(日本の国会に相当)選挙について:
13日に投開票が実施された台湾総統選挙は与党・民進党の頼清徳・副総裁が野党、国民党の侯友宜・新北市長並びに台湾民衆党の柯文哲・党主席に勝利しました。しかし頼氏の得票率は40.5%の558万票にとどまり、「20年来最弱の総統」となりました。因みに現・蔡総統が4年前に獲得した票数は約817万票という圧勝でした。その上、同時に行われた立法院選挙(定数113)では、与党・民進党は選挙前維持していた単独過半数を割り込んだ上に、第一政党(国民党、37→52議席)から第二政党(民進党、62→51議席)に転落しました。国会とのねじれ現象により、新総統は現政権ほど米国寄りを鮮明にした政策運営は難しくなることから、実質的には与党の敗北です。背景として約8年に亘る対中強硬路線を貫いた蔡政権で、中国との対話が途絶えたことに経済界の不満が募っていることが指摘されます。また、台湾の人々の7~8割は現状維持を望んでいるとされています。しかし以前より少し「中国ともうまくやってよ」という民意が強くなった印象です。一方、外交面からの中国の締め付けは一段と厳しく、太平洋の島嶼国ナウルは15日、台湾と断交して中国国交を結ぶと発表しました。これで台湾と外交関係を維持する国は、この8年間に10ヵ国減り12ヵ国となりました。今後の台湾を巡る情勢は、本年11月5日の米国大統領選挙の結果次第で大きく変わる可能性があり、我が国も安全保障上から注視していく必要があります。 

■米国大統領候補、共和党予備選挙:
米国共和党は1月15日、大統領候補者の選出を行う党大会の初戦をアイオワ州の州都デモインで開きました(アイオア・コーカス)。当日の現地の気温は摂氏マイナス26度という異常な寒さだったようです。私は50年前にはモスクワで、そして前職時代は仕事柄冷凍倉庫で、マイナス20度以下を何度か経験したことがありますが、とても長くは耐えられない寒さでした。そして予備選の結果は予想通りトランプ氏が単独過半数を獲得する圧勝でした。2位は事前予想ではヘイリー・元国連大使でしたが、僅差でデサントス・フロリダ州知事の後塵を拝し3位となりました。
しかし今回のアイオワ州の結果だけで先行き占うことは時期尚早です。共和党の大統領候補者選びでは、各州などに割り当てられた計2429人の総代議員数の過半数を得た候補が、7月15~18日開催される共和党全国大会で正式に指名されます。今回党大会が開催されたアイオワ州には40人(全体の1.6%)の代議員がおり、得票数に応じて比例配分されます。なお、アイオワで勝利し共和党の大統領候補になったのは、現職以外では2000年のジョージ・ブッシュ氏(第43代大統領)が最後というジンクスもあります。ヤマ場は15州の予備選・党員集会が集中する3月5日(スーパーチューズデー)です。そして7月15~18日の全国党大会(ウイスコンシン州ミルウォーキー)で正式に決まります。一方、民主党の大統領候補者は8月19~22日の党大会(イリノイ州シカゴ)で決定されます。今のところバイデン・現大統領以外に立候補者はいません。その後、民主党、共和党、それぞれから選ばれた大統領候補者の間で論戦が行われ、11月5日の投票により選挙人の過半数270人を獲得することで決まります。これから長い長い選挙戦が続きます。 

■海外への留学生について:
先日の日経新聞に、「米中対立が深まる中、ハーバード大学など米国の有力大学で中国人留学生が増えている」という記事がありました。同紙の調査によると、米国の有力7校(※)で学ぶ中国人の正規留学生(一部は交換留学生なども含む)は、2022年時点で計1万2600人超と4年前に比べ33%増え、7校の留学生全体の36%を占める規模となっています。これは、いわば敵対する国であっても「将来に備え、学べるものは学ぼう」という貪欲な姿勢の表れであり、すごいことだと思います。
同じく同紙の集計によると、有力7校で学ぶインド人留学生も同期間に38%増加しています。一方、日本人の存在感は乏しく、増加傾向にはあるものの2022年時点で約600人止まりです。人口が我が国の1/5以下しかない台湾からの留学生よりも少ない状態です。
日本人学生の米国への留学がこのように少ないことは、「若い世代の内向き志向」を表す場合もあるし、「時間はあるし留学したいが資金がない」といった事情もあると思います。しかし現在並びに将来の日米の政治的・経済的な連携深化の必要性を考えると、この現状は真に嘆かわしいことです。
米国の有力大学への留学は最高水準の教育を受けられる上に、米国内外の将来の指導者層とネットワークを築けます。若い頃培った絆は生涯の貴重な財産となります。時間はカネで買えません。例え借金してでも行くべきだし、国や自治体並びに学界・産業界も制度の拡充に一層努めるべきです。私が若かった時代は未だ終戦後20年に満たず、経済的に厳しい上に外貨持ち出しが一回500ドル(1ドル=360円時代)と規制されており(~1964年)、留学などとても叶わぬ夢でした。しかし社会人になって米国(ニューヨーク)で過ごした5年半(1978~1983年)は、私に大きな力と自信を与えてくれた点で、生涯忘れ得ぬ貴重な経験でした。
(※)スタンフォード大、マサチュ―セッツ工科大(MIT)、ハーバード大、プリンストン大、カリフォルニア大バークレー校、エール大、ジョンズ・ホプキンズ大

 

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