新年を迎えた元日早々、能登地方で大きな地震が発生して以来、早や1ヵ月が経ちました。多数の犠牲者(240人)と行方不明者(15人)に加え、家屋の倒壊や、道路・港湾といったインフラに甚大な被害をもたらし、改めて自然の力の凄さを見せ付けられました。未だ不自由な避難生活を強いられている1.5万人近い皆様には、心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興を心より願っています。
さて、この1週間に、英語では”Good Job!” 、日本語に訳すと「アッパレ!」と感じた事が3件ありました。
その1は、大相撲初場所で横綱・照ノ富士が4場所ぶり9回目の優勝を果たしたこと。彼は大関に昇進後、ケガや病気により序二段(幕内を筆頭とする階級の下から2番目)まで転落する屈辱を経験しましたが、努力と精進により横綱に返り咲きました。その不屈の精神と横綱としてのプライドと責任感は見上げたものです。
その2は、1月28日開催された大阪国際女子マラソンで前田穂南選手が野口みずき氏の保持していた日本記録を19年ぶり塗り替えたこと。パリ五輪への出場枠は3人で、既に二人(鈴木優花、一山麻緒)は決まっており、今回は残る1枠を争う大会でした。これで前田選手は筆頭候補に名を連ねることになりました。
その3は、日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の小型月面着陸実証機(SLIM)が20日未明に、世界で5番目となる月面着陸に成功したこと。そして着陸時に問題が生じた太陽電池が修復され、地上と探査機との通信が確立されたことです。
一方、「いい加減にしろ」と思ったこともいくつかありました。その一つは日本を代表する大企業で不祥事が相次いだことです。その度にトップが深々と頭を下げ、「こういったことを二度と起こさぬよう・・・・」を何回聞いたことか。もう一つは政治家が、聞き飽きるほど頻繁に使う「しっかりと」と、「きっちりと(やります)」です。この時だけいつも力を込めます。「百考は一行にしかず」と言いますが、この場合は「百言は一行にしかず」、「有言実行」と言いたいところです。皆さんはいいかがでしょうか。
■■昨日から2月がスタートしました。今月は日本・アジア・西側諸国で様々な行事があります。いくつか挙げてみます。
■今年の「節分」は2月3日(土):
我が国では節分と言えば「豆まき」ですが、最近は新聞の折り込み広告やスーパーの店先でやたらと、「恵方巻いかが」の文字が目につきます。節分は元は中国からの伝わった文化で、年に4回訪れる立春・立夏・立秋・立冬の前日を指す言葉です。しかしいつしか一年の始まりである「立春」(今年は2月4日)の前日のみを節分と呼ぶようになったようです。なお、立春は「うるう年」の存在で年によって前後します。例えば2021年は2月3日、2022~2024年は2月4日、2025年は2月3日となります。
■春節(Chinese New Year)と、最近の中国について思うこと:
中国・中華圏、それに華僑が多く居住するアジア諸国では、今年の春節(旧暦の正月)は2月10日から8連休に入ります。この間、同地域の経済活動は殆どストップします。それだけ同地域での社会・経済界における華僑の存在が大きいと言えます。
中国国内では今年は不景気で節約志向のため、鉄道・飛行機の利用者は延べ旅客数、約18億人(前年比14%減)と予測されています。我が国の昨年末から年始の総旅行者数が2588万人(前年比5%増)であったのと比べますと、約70倍という桁違いのすさまじさを感じます。因みに中国でも急速に少子高齢化が進み人口は減少に転じており、昨年末の人口は14億967万人(前年比208万人減)でした。出生数は902万人(同54万人減)で、それぞれ我が国の約11.4倍、12.4倍です。こういった状況から中国は大変な競争社会にあり、昨年12月の都市部の失業率は公式発表では5.1%、16~24歳は14.9%とされています。しかし実態はもっと深刻なようです。因みに昨年の我が国の年平均失業率は全体では2.6%に対し、同世代は7~10%でした。また、日本の昨年の有効求人倍率は全体では1.31倍で、恒常的に人手不足状態にあります。若者の失業率が高い背景には様々な理由があるようです。
なお、今から35年前(天安門事件の前年)、国際貿易促進協会の訪中ミッションに参加し、北京の人民大会堂で故・鄧小平国家主席に謁見しました。その際、中国の目覚ましい発展ぶりに触れられ、「我が国では今や食うに困る人民は僅か6千万人くらいだ」といわれました。咄嗟に私の頭に浮かんだのは「日本の人口の約半分が飢えているのか」でした。しかし当時の中国の人口12億人からすると全体の5%、つまり20人に一人です。これは当時の中国の社会状況からすると納得のいく数字でした。
中国では「万里の長城」とか「白髪三千丈」とか言いますが、同国と我が国では「物差しが違う」ことを認識しておくことが必要です。こういった国と飛行機で僅か3時間前後の距離で接しているのが現実の世界なのです。ところが内閣府が昨年9~10月実施した世論調査(18歳以上3000人を対象)によると、「どちらかと言えば」を含め、「中国に親しみを感じない」日本人が86.7%と、1978年の調査開始以来最高レベルにあります。 逆に中国側でも「日本に親しみを感じない人」が7割に達しています。しかしお互いに隣国は選べません。何とか折り合いをつけてやっていくしかないのです。
一方、日本の経済力の低下とともにアジア諸国は中国の巨大な市場に引き寄せられ、同地域での日本の存在感は薄れつつあります。例えばタイでは政府の調査によると、2022年の大学受験で第2外国語として選ばれた順位は、中国語34.8%、韓国語17.6%、そして日本語は17.2%でした。正に「カネの切れ目が縁の切れ目」という、国際社会の冷徹な現状を反映しているように思います。台湾のエバーグリーン社(世界有数の国際海上コンテナ輸送会社)、並びにエバーエア社(国際航空会社)の創業者で、いにしえの日本をよく知り、大の親日家であった故・張榮發総裁から、「日本人よ、もっとしっかりせい!」と、叱咤激励されたことを思い出しました。
■2月14日はバレンタインデー:
バレンタインデーは元々キリスト教徒のお祭りですが、我が国は和洋折衷、宗教には関わりなく、ハロウィンでもクリスマスでも自己流にアレンジし、商売に利用する「商魂の逞しさ」を感じます。しかし別の見方では「よそから採り入れ、日本仕様にするのはうまい」が、「創造力(AI等新しいものを産み出す力)は弱い」という日本企業の特性を表しています。ついでに言えば「横並び・前例主義」も日本の社会システム、企業の革新にとっての阻害要因です。
なお、若い頃は行きつけのお店からチョコレートが沢山届きましたが、最近は足が遠のくとともにほとんどゼロ。そして1ヵ月後の3月14日はホワイトデー。贈り物への男性側からの返礼の日です。前職時代、いい歳をしたオッチャンが、「義理チョコ」への返礼を真剣に思案している姿を見て、「社内では禁止」としたことがありました。今から思えばささやかな楽しみを奪い申し訳なかったと思っています。