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2024年02月09日

ちょっと気になる記事・話題(124)

新年度予算などを審議する今年の通常国会が1月26日に召集されました。会期は6月23日までの150日間です。今国会では能登半島地震への対応が議論されるほか、政治資金規正法の改正も含めた政治改革が焦点となっています。
そして5日から衆議院予算委員会がはじまりました。予算とは一年間の国政方針を財政面で裏付けるものであり、また予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われます。そのため質疑の範囲は予算に関連するものに限らず、広く国政全般にわたります。予算委員会は本会議、党首討論会に並ぶ「花形」として広く認識されており、質疑の状況はテレビ中継されることから、特に野党にとっては与党を追及する絶好の機会となっています。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■「サイン」(署名)と「実印の捺印」はどう違うのか:
現在行われている予算委員会で「統一教会問題」に関連して、所管の大臣が「政策協定にサインした」ことが追及されています。答弁は「記憶にない」から一転し、「十分に内容を読むことなくサインしたかも知れない」に変わりました。尽きるところ様々な業界や団体は組織票が見込めることから、政治家の先生方にとっては捨てがたいものがあるのでしょう。
ところで、この「サイン」という行為は、我が国でも最近は様々な場面で一般的に使われています。例えば私たちも飲食や買い物の支払いでクレジットカードを使うと暗証番号やサインが必要です。病院でも検査や手術の際には同意書へのサインが求められます。一方、我が国では不動産や会社設立の登記とか、大事な契約書や書類には、サインだけでなく、市役所に印鑑登録した「実印」の捺印が必要です。
ところが私がかつて居住した米国では印鑑登録の制度はありません。サインが全てです。従って「軽い気持ちで」は、済まされません。ちなみにサインは漢字でもOKです。
実は、私は米国在勤中(1980年前後)に実父が亡くなり、それに伴う様々な重要書類に実印の捺印が必要となりました。ところが、今はどうなっているか知りませんが、当時は国内の住民票がない海外居留者は印鑑登録が出来なかったのです。そのため様々な書類が何度も太平洋を行き来し、その度に私は日本国領事館に行き、実印に替わる証明として「拇印」を捺印した上で、領事館から「この拇印は真正なものである」という証明書を発給してもらわなければなりませんでした。その上、領事館は証明書を発行する以上、全てコピーをとりプライバシーなどお構いなしでした。当時、日本政府は「国際化」の必要性を唱えていましたが、日本人の駐在員数が世界で最も多かった米国においてさえこういった状態でした。掲げていることとは裏腹に海外居留者へのバックアップ体制はお粗末で、その煩わしさに憤慨したのを憶えています。
因みに米国には戸籍制度や住民登録制度はなく、代わりに出生、死亡、結婚、離婚に関する証明書を、これらの事実を届出した州から発行してもらいます。 そして個人情報のすべては「社会保障番号」(我が国のマイナンバー制度)に凝縮されているといえます。
なお、ついでに申せば海外居留者の国政への投票ができる制度(在外選挙制度)が施行されたのは、2000年5月以降の国政選挙からです。

■入社した企業に「定年まで働く」は3割:
就職情報会社「学情」の調査によると、4月に入社を控える大学4年生らのうち「定年まで働きたい」と考える人は3割に止まります。調査は昨年11月に行われ、396人が回答。「入社した企業で何年働きたいか」の問いに対し、「定年まで」が31.6%で最多。次いで「5年以上10年未満」が25%。「10年未満」の合計は53.2%でした。「20歳代で手に職をつけ、キャリアの選択肢を増やそうとする学生が増えている」と分析しています。なお、総務省の「労働力調査」によると、2023年7~9月平均の全国就業者数は6768万人でしたが、このうち15%に当たる1035万人が転職希望者でした。ただ、実際に転職したのは7~9月で325万人に止まりました。ここ数年横ばいとなっており、転職希望者と実際に転職した人数の差が拡大しているようです。
一方、我が国では過去の判例などを背景に、会社側が正社員を解雇することは厳しく制限されています。そのため企業側は正社員の採用を抑えるとともに非正規社員を増やし、労働コストを固定費から変動費化することが定着しました。これが人手不足にも関わらず、賃金の上昇が抑えられた大きな要因の一つです。そして政府も雇用調整金等により失業率を表面的に抑え、余剰人員を企業内で抱えさせる方策をとりました。その結果、我が国においては人材・労働力の産業間移動がスムーズにいかず、同時に生産性の向上や人材のリスキリング(高度化)の妨げにもなっています。
これに対して米国ではいとも簡単にレイオフを実施します。我が国の内科療法に対し、米国では素早い外科手術を実施することから、不況からの立ち直りや企業革新のスピードが速くなります。そして我が国より転職市場が整備されていることから、レイオフされた労働者もそれをリスキリングの絶好のチャンスと考え、より高度な知識・技術を身に付けることによりキャリアアップし、一段と高賃金の企業を目指すのです。
我が国においても戦後ずっと続いてきた「メンバーシップ型」(終身雇用制度)が徐々に崩れ、「ジョブ型」(適材適所制度)への移行が進みつつあります。また、転職を支援する労働市場も拡充されつつあり、収入増につながるケースも増えています。しかし会社側の解雇権に関する規制緩和を進めない限り、ジョブ型への移行はうまく行かないように思います。これは避けて通れない問題です。転職が社員の生業(なりわい)を見出す契機となり、「人生100年時代」をたくましく生き抜く術にもなります。政府も労働組合も弥縫策(びほうさく)ではなく、この問題に真剣に取り組み労働市場の活性化を目指すべきです。

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