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2024年02月16日

ちょっと気になる記事・話題(125)

今週に入り温かい日が続いています。大阪に本社を置く日本気象株式会社は昨日、2024年第4回の桜の開花・満開予想を発表しました。それによると全国的に平年並みか平年より早い開花を予想しており、東京は3月23日、大阪は3月25日とのことです。
さて、温かい日が続くと居酒屋等で一杯飲む際には、「とりあえずビール」となります。考えてみますと、ビールほど身近で話題性のある商品は他にないように思います。当然価格動向や売れ行き、それに新商品についての関心も高くなります。昨年における大手4社(アサヒ・キリン・サントリー・サッポロ)の販売量は前年比7%増となりました。10月の酒税改正でビール減税が追い風になったことに加え、コロナ禍規制が緩和され、業務用が回復したことが寄与したとされています。ただ、第3のビールが増税により販売量が15%減となったため、ビール系全体では1%減となったようです。
一方、米国では昨年、ビール消費量が急減し、通年では前年比5.2%減と、24年ぶりの低水準となりました。低アルコール炭酸水「ハードセルツァー」など選択肢の多様化に加え、若い世代を中心に広がる節酒傾向が背景にあるようです。また、外食時のアルコール飲料の価格上昇率が過去20年間で大きかったことも影響しています。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■海外(アジア)の経営者から観た日本的経営について:
最近の新聞に、アジアで著名で日本通の経営者の我が国企業に対するコメントがありました。お国柄の違いや業種の違いはありますが、日本企業の強い点、弱い点を端的に突いていますので列記しておきます。
(1)シンガポール・バンヤン・グループ、ホー会長(リゾート大手)
同会長が指摘したのは①外国人目線での交通インフラの整備の必要性。特に未だ開拓されていない地方部のアクセス向上、②英語話者が少ない(AIを活用すべき)、③人手不足対策の重要性(移民受け入れ政策に舵を切ること)
(2)台湾・TSMC、魏哲家・最高経営責任者(半導体メーカー)
同社は台湾に多いトップダウン型の経営で知られます。ここ数年で台湾に於いて、圧倒的なスピードで最新鋭の工場を10棟新設し、業界での地位をさらに強固にしました。日本に先駆けて建設を決めた米アリゾナ州は労働者の確保に問題が生じ、当初2022年12月の稼働予定が1年以上遅れる見通し。これに対し熊本工場の順調な進捗について、「日本の関係者の卓越した貢献に感謝する」としています。
(3)タイ財閥サハ・グループ、ブンヤシット会長(タイで消費財王と称されている)
同財閥は日本企業との合弁数が約80社に及ぶとのこと。日本企業は「長期で信頼関係を構築する傾向がある」と評価した上で、事業運営は「従来のステップ・バイ・ステップを踏襲」しており判断が遅い。そのため「(革新の)スピードが速い今の世界には対応できない」と指摘しています。
(4)インド、マルチ・スズキ(日本のスズキの連結子会社)、バルガバ会長同社は「日本企業のインド進出の最大の成功例」とされています。これに対し、「インドに来て、インドのやり方に従うな」を成功の要因としています。労働政策の基本を日本流に従い、「労働者と経営者はパートナー」とし、同国に根強いカーストなどの身分制度のない平等な労働文化を浸透させました。インドは豊富な高度人材などの労働力を抱える一方、貧困に喘ぐ人が多く平等とはほど遠いのです。 

以上のように、日本企業の弱点として挙げられたのは「決断が遅い」こと。この点は米国人経営者からも指摘されたことがあります。底流に「横並び・前例主義」や、「赤信号、皆で渡れば・・・・」があるように思います。換言すれば、率先して「リスクをとることに消極的(慎重)」です。私はこれに対して「日本の企業はコンセンサスを重んじるため決断に時間が掛かるが、一旦決めたら必ず実行する」と釈明しています。しかしこの点が「環境の急激な変化に対応できない」と受け止められているのです。
強い点としては、日本企業は「短期的ではなく、長期的な観点に立って信頼関係を築く」ことと、「決まったことはキッチリやる・守る」ことです。いずれにせよ海外進出や、合弁事業を進めるに当たっては、進出国の国情・市場や合弁相手の国民性をよく調査し理解すること、並びに適材適所の観点から人材養成・配置が不可欠です。 

■賃上げと価格転嫁について:
日本経済が今後、本格的な成長軌道に乗るかどうかを左右する春闘がスタートしました。焦点は2年連続して実質賃金が減少している現状から脱出できるかどうかです。大手企業はそれなりに国策に準じた賃上げ方針を打ち出しています。しかし問題は我が国における全事業者数(300万社超)の99.7%を占め、全就業者数の約7割を雇用する中小・零細企業の動向です。そしてその肝となるのが原材料等のコスト上昇分に加え、賃上げに必要な原資を価格に転嫁できるかどうかです。
因みに、私が生業としていた道路貨物運送業界に関する、公取委と中小企業庁による最近の調査によると、「取引価格について、コスト上昇分を転嫁できているか」との質問に対し、発注者側は「概ね受け入れている」が45.5%でした。逆に受注者側の回答は「転嫁できている」が21.3%に止まっています。
トラック輸送業界の事業環境は、30数年前に規制緩和(物流二法)が実施されて以来、国内外の経済情勢や産業構造の変化、それに少子高齢化・人口減少の影響により、国内の総貨物量は約3割減少しています。一方、業者数は5割増え現在は全国で約6万2千社存在します。その内訳は保有台数10台以下が55%、従業員数では10人以下が約半数を占めるという、典型的な中小零細企業の集合体です。そしてそのほとんどは自ら貨物を集める営業力はなく、大手の下請け・孫請けといった多層構造下にあります。そのため運賃を始め輸送条件等についての交渉力は極めて弱く、隷属状態にあると言っても過言ではありません。そして安い運賃をカバーするため、コンプライアンス順守の意識も薄くなるのが実態です。現状では賃上げどころか、今後の事業継続に不可欠なDXやアセットへの投資はもとより、人材確保もとても無理です。その上、4月に迫った「2024年問題」(残業時間上限規制)や後継者難、それにゼロゼロ融資への返済等で、今後、倒産や廃業・転業の増加が見込まれ、輸送力確保を危ぶむ声が出てきています。
なお、政府は「2024年問題」に対応すべく、荷主対策や物流の生産性向上に重点を置く、「流通業務総合効率化法」を今国会に提出するようです。一方、自由主義市場経済下においては、「モノの値段」は公定料金以外は需給で決まります。「余りものに値なし」は経済学の常識です。現在の供給過剰体質(過当競争)を是正し「適正運賃」を目指すには、事業者を一定規模に再編・統合する「構造改革」が必要です。さもなければ我が国の国内物流の90%以上を担う、トラック貨物輸送業界の健全な発展は望めないと考えます。

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