ブログ

2024年04月12日

ちょっと気になる記事・話題(132)

やきもきさせられた桜の開花でしたが、関西では先週末一挙に開花した途端、今週に入り「花散らし雨」というような生易しいものではない激しい雨が降り、あっという間に色あせて葉桜になりました。桜の中でも特にソメイヨシノの「散り際のよさ」は武士道の「潔さ」に通じるものがあります。だからこそ日本人は格別桜花を愛でるのではないでしょうか。そういった点では先日、某県の某知事が辞任の挨拶の場で引用した、細川ガルシア夫人の辞世の句「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人もひとなれ」は場違いというか、どういう思考の持ち主かと思いました。さっそく翌日の朝日新聞の川柳欄に掲載された、「入庁の訓示辞任の句に変わる」が言い得て妙でした。
さて、先日、東京から大阪へ帰る際、たまにはノンビリと思い新幹線「ひかり」に乗りました。すると東京駅を出発した時は車内はガラガラ。これはゆったりしていて快適と思っていたところ、小田原駅で欧米人と思われるツアー客が大挙して、大きな旅行カバンを抱え乗り込んできてほぼ満席状態になり、社内では英語が飛び交いました。そして京都駅に着くと潮が引くように全員下車。改めてインバウンド客の増加とゴールデンルートの人気を感じました。同時に少しづつオーバーツーリズムの兆しも感じられます。コロナ禍前の2019年のインバウンド客数は過去最多の3188万人。一時ほぼゼロに近い状態まで落ち込みましたが、このところ約8割まで戻ったようです。政府は2030年に訪日客数6000万人を目標に掲げています。現在のほぼ2倍です。これだけの人数を国民生活に悪影響を及ぼさずスムーズに受け入れるには、インフラの整備と、タクシー不足対策としてのライドシェアの導入等、ソフト面の改善が不可欠です。なお、今年のゴールデンウイーク期間中の日本人の国内旅行者数は、コロナ禍前の約9割(約2330万人)になると予想されており、国内外の旅行者でかなりの混雑が見込まれます。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■企業の中期経営計画(中計)について:
このところ出遅れていた日本の株式市場にも活況がもどり、3月22日、終値で39,098円をつけ、バブル絶好調の1989年12月29日の最高値38,915円を34年ぶりに更新しました。そして今証券市場で注目を集めているのが企業が策定し公表する中計です。東京証券取引所による資本効率改善要請から1年が経ち、企業がどういった施策を中計に盛り込むかが株価にも影響します。
ちなみに日本IR協議会が一昨年調査したところによると、上場企業の7割が中計を既に策定し公表しています。ところが昨年8月、味の素㈱が中計の策定をしないことを公表し話題になりました。その理由は「(計画期間の)経営環境が大きく変わり、計画の意味が薄れる。計画策定に使う力を、違うところに使った方がよい」とのことでした。
それはそれで一理あると思いますが、私はやはり企業にとって中計は必要だし大事だと考えます。計画には10~30年を念頭に置いた長期計画(ビジョン)、3~5年の中計、そして1年単位の短期計画(実行計画)があります。私が前職時代に中計(3カ年計画)を策定するに当たり考えたことは、①トップダウンではなくボトムアップとすること。つまり現場で喧々諤々の議論しそれを積み上げる、即ち「全員参加」に基づき策定することでした。計画自体もさることながら決定に至るプロセスが大事なのです。さもなければ「絵に描いた餅」になりかねません。次は、②中計を社員にとって親しみやすくするため愛称を付けること。そこで私はNASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙計画にちなんで「アポロ計画」と名付けました。即ち、Luna(月)から始まり→Mars (火星)→Mercury(水星)→Jupiter(木星)→Venus(金星)→Saturn(土星)→最後がApollo(ギリシャの光の神)と名付けたのです。そして、③計画を身近なものにするためポスターやテレホンカード(今は死語ですが)等も作製しました。そのデザインをプロに頼むと見た目はきれいですが魂は入りません。そこで、すべて社内公募、つまり社員の手作りとしました。
アポロ計画は1988年からスタートさせましたが、バブル経済の恩恵もあり、初年度に長年の壁であった年間売上高1000億円を一気に突破し、全社で喜びあったことを懐かしく思い出します。
事業計画は進むべき方向を示す羅針盤のようなものです。固定的に考えるのではなく、石油危機やコロナ禍、その他事故・災害等、突発的な客観情勢の変化に伴い弾力的な修正が求められます。そして経営トップの役割は航空機の機長のようなものであり、乱気流や悪天候の中でも機体をうまくコントロールし目的地に無事着陸させることです。

■国立大学が法人化され今年で20年、キャリアアップについて思うこと:
2004年に教育や研究を活性化させる目的と行財政政策が一体化され、国立大学の法人化が実施されましたが、大学側の評価は低いようです。国際比較による研究力も低下し、教育現場は閉塞感に満ちているとされています。ノーベル化学賞を受賞された野依良治・現名古屋大学特別教授は、「日本経済は『失われた30年』といわれるが、大学は『失われた20年』」と酷評しておられます。予算の配分格差が拡大し大学が自ら意思決定ができず、本来果たすべき人材育成と基礎研究という、社会のふ卵器としての役割が失われたとし、政策の見直しを求める声が高まっています。
さて、日本の大学は「入るのは難しいが卒業は易しい」とされています。米国は逆に「入るのは比較的楽だが卒業は難しい」と聞きます。我が国の60歳以上(私も含め)の企業経営者の多くは学生時代を振り返って、猛勉強したというより何となく「最後の青春」だったようなノスタルジァを感じるのではないでしょうか。入試のための受験校や塾は受験技術に重きを置くため無味乾燥で、自らを振り返ると青春時代にぽっかり穴が開いたような思い出です。その反動が大学生活に出るように思います。勿論、「何かを得るには何かを捨てる」覚悟が必要ですし、「二兎を追う者一兎を得ず」も現実です。人生では何度か「ふるい(篩)」にかけられますが、それを通り抜けることにより次の展望が拓けるのも事実です。そのためには克己心や犠牲も厭わない覚悟も必要でしょう。
一方、米国では入学したものの卒業のためには猛勉強が常識です。そのためMBA(経営学修士)を取得すると社会で通行手形として認知されます。ところが我が国では大学での勉強や自己研鑽の密度を企業側はあまり問わないように思います。そして最近まで純白の新卒の採用に重点を置き、入社後の社員教育やOJTにより自社色に染めてきました。その前提は「終身雇用制度」です。ところが最近は即戦力や専門性を重視する「ジョブ型」の導入や、国際化、ハイテク化により、人材の多様性と専門性重視に移行しています。転職も常態化しつつあります。取締役には株主に「ジョブ・マトリックス(専門性評価)」の提示が求められます。そういった観点から学生諸君も会社組織人の方々にとりましても、意識改革とリスキリング等によるキャリアアップ(知識・経験を積む)が必須の時代になっています。

その他のブログ