気象庁が梅雨入り宣言発表について悩んでいるとの記事がありました。確かに今年の梅雨は地域差が大きいようで、近畿地方では平年の半月遅れで先週「梅雨入りしたとみられる」と発表がありました。なお、梅雨明けは7月中旬ごろの予想です。
一方、中国では今月中旬、記録的な大雨による被害が深刻になっており、広東省、福建省で少なくとも57人の死亡が確認されています。
そして米国では各地で記録的な暑さが観測され、今年は記録的な猛暑となった2023年の暑さを更新する可能性があるとされています。この猛暑により各地で洪水や山火事が発生するなど影響が拡がっています。なお、米国では摂氏37度レベルの猛暑ですが、イスラム教最大の聖地・サウジアラビアのメッカでは、6月17日に51.8度という桁違いの暑さを記録しました。そのため大巡礼(ハッジ)の途中の人々の中で1300人を超える死者が出たことが報じられています。
最近の異常気象により企業業績に大きく影響するリスクがあることから、米国では証券取引委員会(SEC)が企業に対し、より厳格な情報開示を求め始めたことが注目を集めています。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■中小企業と大企業の間の「中堅企業」を増やす「成長ビジョン」:
資本金や従業員数の規模で大企業と中小企業に二分している産業政策が、「成長の壁」となっているという指摘があります。即ち規模の違いで政府からの補助や課税に落差があることから、その恩恵を受けるため中小企業が大企業への成長を敢えて目指さないというものです。元を辿れば2004年に法人事業税の一部として、付加価値や資本金などの金額を基準に徴収する「外形標準課税」が導入された際、中小企業と大企業の資本金の線引きを1億円に設定したことです。これにより資本金を1億円以下に抑える動きが生じたのです。コロナ禍で業績不振に陥った大企業が資本金を1億円以下に減資して、中小企業の範疇に戻り税負担を軽減したケースもありました。こういった税制を背景に我が国では、課税対象となる「資本金1億円以上」の法人の数が減少しています。総務省によると2021年度の数はピークの2006年度と比べ3割超減少し、全法人に占める比率も1.18%から0.72%に低下しています。つまり我が国にある約380万社の法人のうち99.28%が資本金1億円以下の中小企業なのです。そしてこの企業層がデジタル化促進の補助金や実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)といった、政府が毎年のように打ち出す経済対策の対象とされてきました。また、社会保障費負担も軽減されています。こういった中小企業に限定した支援策(優遇策)がいわば政府と業界のもたれあい構造を醸成し、再編・淘汰を妨げ、元請け・下請け・孫請けといった多層構造をもたらした一因と思われます。その結果、我が国では全事業者の6割が納税しない(出来ない)という歪な実態を形成し、そして低生産性をもたらしていることは否定できません。現状のままでは政府の補助金も細分化され過ぎ余り効果が期待できない上に、企業も少子高齢化に伴う人材・人手不足への対応や、情報化に向けたIT・DX化や研究開発に必要な投資を負担できないように思います。
以上のような我が国の構造問題に鑑み、政府は大企業と中小企業の間に位置づける「中堅企業」(従業員2000人以下)の増加を目指し、「成長ビジョン」を策定することになりました。この層は中小企業や大企業に比べ公的な支援が手薄ということが指摘されていました。そのため我が国では中小企業から中堅企業になっても、そこからさらに大企業に成長する割合は1割ほどに止まるとされています。ちなみに米国では3割、欧州では2割とされており、その差は産業政策の違いも一因のように思います。ある程度の企業規模に再編・統合し人材や資金の効率化を図り、ひいては生産性の向上に結び付けることが必要です。
■スタートアップ(新規事業を立ち上げる企業や個人)の育成が必要:
日本では「時価総額10億ドル(約1600億円)以上で未上場のベンチャー企業」、いわゆるユニコーンは非常に少数です。米国の調査会社によると本年3月時点で我が国では7社に対し、米国では656社、中国は168社と比べ大きく差がついています。
政府は2022年に「スタートアップ育成5カ年計画」を策定し、大企業との連携を促すオープンイノベーション(自前主義からの脱却)を柱に位置付けました。また、個人投資家がスタートアップに投資した場合に、税優遇を受けられる「エンジェル税制」といった政策も講じています。
なお、我が国には世界的な課題である脱炭素や人口知能(AI)、半導体、燃料電池、医療などに取り組む小規模な企業は多くありますが、なかなかユニコーンまで成長しません。経済産業省はここにも「中小企業が特定の大企業を支える下請け先として取引する」という、古い慣行が関わり不利な契約になりがちとみており、それを見直す標準契約書を策定し利用を促すとしています。
我が国で未だに「元請け・下請け」といった上下意識や、建築業界で発注先のことを「施主」(恵みを与えるひと・会社)と呼んだりする、封建時代の名残りのような慣習があります。数多く存在する「日本の常識は世界の非常識」の一つです。しかし今後はIT・DXの普及により情報の流れが「垂直型」から「同時・水平型」に変わっていくことから、古い取引慣行も変革を迫られると思います。
■物流業界再編の動き:
人手不足や「2024年問題」とされる労働時間規制により、物流業界でもようやくM&A(事業の買収・再編)や、異業種或いは同業者の共同配送、車両の大型化といった動きが本格化してきました。中でもM&Aは今や重要な企業戦略の一つとなっており、「流れに遅れまい」という雰囲気を感じます。しかし、失敗例が多いのも事実です。M&Aのキーポイントは事前に「相乗効果をよく見極める」ことと、PMI(Post Merger Integration)、つまり「統合後の事業運営をどう軌道に乗せるか」です。モノも会社もカネ(資金)を出せば買えます。しかしそれに血液を流し込み、魂を入れるのは人材です。自社の持つ経営資源(ヒト・モノ・カネ)を見極めM&Aの意義と目的を十分考え、成功させる体制づくり必要があります。いずれ別の機会に論じたいと思います。