ブログ

2024年07月05日

ちょっと気になる記事・話題 (143)

早いもので今週から7月、即ち今年も後半に入りました。相変わらず関西では梅雨なのかどうか分からぬ中途半端で不規則な天候が続いています。
さて、路線バスを減便したり、廃止したりする動きが広がっています。背景にあるのが人手不足と高齢化(平均年齢50歳超)、それに労働環境・労働条件です。建設・運輸・観光・介護といった業種で人手不足のため、中小零細企業を中心に倒産が急増しています。サービス産業は全就業者の約7割を占めており、業界では人手不足を補うため外国人労働者の活用も進めていますが、言葉の問題や国際的に売り手市場化していることから容易ではありません。人手不足は一過性ではなく構造的な問題であり、事態が一段と深刻化することが懸念されます。

■■最近想ったこと・注目したこと:
■セミナーの開催:
今週、私は久しぶりにセミナーの講師を務めました。講演のタイトルは「これからの運輸・物流業界の経営戦略」としました。今まで長年にわたって携わってきたトラック貨物輸送業界に軸足を置き、①「物流が果たす重要な役割について」、②我が国の物流を取り巻く環境について、③「トラック業界の現状について」、④「トラック業界に於けるドライバー不足対策」、⑤「2024年問題について」、⑥「トラック貨物輸送業界の構造改革の必要性、⑦最近のトラック貨物運送業界の動き(M&A、事業承継)、といった項目を主な内容としました。今後のトラック貨物輸送業界は、尽きるところ下記のような明暗相反する要因をガラガラポンした結果がどうなるかです。
◎業界が抱える問題・課題:
(1)少産多死・少子高齢化による人口減少社会に突入し内需の拡大、即ち国内物流の量的拡大は見込めない。新産業はハイテク志向でボリュームは期待できない。
(2)企業の生産拠点の海外移転により国内では産業空洞化が進んでいる。
(3)物流が「重厚長大」から「軽薄短小」、「多頻度・多品種・少量・短納期」へ変化しており、ますます人手がかかる。
(4)ドライバー等労働力・人材の確保が一段と厳しくなる。外国人労働者については未解決の様々な問題点があり過大な期待はできない。
(5)事業者数過剰による過当競争体質を内包しており、荷主との運賃改定や労働条件改善がスムーズにいかない。
(6)「労働時間規制」(2024年問題等)等、政府の規制強化への対応。
(7)生産者・大手物流事業者の生産・物流合理化(積載率向上)により中小・零細事業者の淘汰が進む。
(8)事業継続に必要なDX・IT化、並びにアセットへの投資に必要な資金力・人材力の確保。
◎今後、業界にとってプラスにつながる要因:
(1)少子高齢化に加え、3K職場を避ける傾向から若者の参入が進まず、結果としてドライバー・担ぎ手不足となり、輸送能力の減少、即ち積み込みスペースの不足・供給タイト化をもたらし、「適正運賃」の収受等並びに労働条件の改善が進む。
(2)再編・統合、倒産・撤退・廃業により事業者数が減少し、過当競争体質が改善される。
◎物流に対する意識改革と政府の役割:
(1)関係省庁が連携し、荷主・消費者に物流が果たす役割、重要性に対する意識改革を徹底する(ゴミの分別は好例)。そして「サービスは有料」、「よいサービスにはそれなりにコストがかかる」(米国のチップ制等は一例)という見方を定着させる。
 (2)事業者の経営努力では如何ともし難い原燃料価格や、為替の大きな変動等、不可避的なコスト上昇については、最終的に消費税のように消費者に転嫁する仕組みを定着させること。つまり長年のデフレ経済で染みついた「Cost Cut」から「Price Up」へ発想を変えることが必要。こういった考えを産業界のみならず国民にも浸透・共有させる。因みに米国では企業努力では如何ともし難い、原油や海外から輸入される粗原料のコスアップについては、取引先(荷主)は比較的スムーズに値上げを受け入れます。この点は卸売物価(企業物価)と消費者物価がほぼ同時に連動することに表れている。ところが我が国では両物価指数の動きにかなりタイム・ラグがある。つまり生産者から消費者に渡る間に過当競争や様々な構造的な要因(多層構造等)があり転嫁がなかなか進まない。このあたりに日米の商習慣の違いと、一つの業種内の企業数過剰による過当競争を感じます。資本主義・市場経済ではある程度のインフレを容認しないと経済が回らないのです(デフレに陥る)。
■都知事選挙と東京への一極集中:
東京では今週末の都知事選投票に向け熱い戦いが繰り広げられています。次点に誰が選ばれるか興味が沸くところです。なお、東京都は1410万人(大阪府は約880万人)の人口を擁し、年間の税収は約6.4兆円(2024年度当初予算)で、予算規模は、一般会計・特別会計合計で約16.5兆円(大阪府は約7兆円)です。これはスウェーデン(19兆円)やチェコ(14.4兆円)の国家予算に匹敵する規模です。都庁職員だけで約3.3万人、学校の教員や警察・消防の職員まで含めると16.6万人に達する大規模組織です。こういった東京都の巨大化、一極集中は便利で効率的というメリットはありますが、反面、首都直下型地震を始め、様々なリスクに対して極めて脆弱で、国家・都市機能を喪失する恐れがあることを認識しておく必要があります。
■新しい紙幣発行:
7月3日、新しい1万円札(肖像画・渋沢栄一)、5千円札(同・津田梅子)、千円札(同・北里柴三郎)が発行されました。刷新は20年ぶりのことです。我が国ではコロナ禍を経て、現金を使わないキャッシュレス決済が増えているものの、未だに国内決済の6割は現金が占めているようです。新紙幣に対応するため現金自動預け払い機(ATM)や自販機、両替機の改修に伴う費用は少なくとも5000億円とされています。なお、我が国の現在の貨幣流通量は121兆円で、そのうち60兆円がタンス預金(自宅の金庫などで保管する現金)とされています。早速、それを狙って「旧券は使えなくなり、預金は封鎖されますよ」とか、「古い紙幣を新しい紙幣に交換します」といった詐欺が横行し、多数の高齢者が被害にあっているようです。「渡る世間は鬼(詐欺)ばかり」といった世の姿を思い知らされます。

その他のブログ