今回のブログ配信は10月としては2回目、次号は11月8日を予定しています。その時には日本では衆議院議員選挙(10月27日投票)、並びに米国では大統領選挙・議会議員選挙(日本時間11月6日投票)の結果が判明しています。果たしてどうなっているか。特に米国ではハリス副大統領(民主党)が勝利するか、トランプ元大統領(共和党)が返り咲くかにより歴史が大きく変わることから、世界は今一様に、固唾をのみながら見守っているといったところです。
私は最後は米国民の民主主義に対するバランス感覚が機能することを期待しているのですが。さて、どうなることか。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■インドを旅してきました:
10月15~22日、ツアーに参加してインドへ行ってきました。私が最初にインドを訪れたのは今から約50年前に、南回りでヨーロッパへ行く途中、ムンバイ(当時の呼称はボンベイ)に立ち寄り2泊した時でした。その後はビジネスで5~6回訪れています。今回はコロナの感染拡大の影響で6年ぶりでした。そしてこれまではビジネスが目的であったため、デリー以外は訪れたことがありませんでしたので、この度は初めての観光目的の訪問でした。日本(羽田)とデリーの距離は約6500km、飛行時間は約8時間、時差は3時間半あります。国土は日本の約9倍です。
今回の訪問先は、①デリー→ベナレス→サルナートでガンジス河観光、②ベナレス→デリー経由→ジャイプール、世界遺産・アンベール城(16世紀に築城)、世界遺産・ジャンタルマンタル(18世紀に建設された日時計と天体観測施設)、③ジャイプール(バス、280km)→アグラ、世界遺産・ファティープルシークリー(16世紀に建設)、チャンドバオリ(階段井戸、8~9世紀の施設)、世界遺産・タージマハル(17世紀の建物)、世界遺産・アグラ城(16世紀に築城)、④アグラ(バス、243km)→デリー、世界遺産・クトゥブ・ミナール(12世紀建設のモスク)、インド門、大統領官邸、ほか市内観光後帰国の途へ。
事前の知識では10月以降は乾季に入り気温は下がり、旅行シーズンということでしたがどこも30度を超える猛暑でした。今回は1週間の滞在中、朝昼晩、すべてカレー風味でしたが、ナンやチキンを主とした料理や食後のチャイもとてもおいしく味わいました。なお、インド北部を流れるガンジス河は全長約2500kmでヒマラヤの氷河を源に、いくつもの支流と広大な流域面積を持つ大河です。そしてヒンドゥー教徒(全国民の約8割)にとって聖なる河とされています。夜、ガンジス河に捧げるお祈り(プジャ)の儀式や、岸辺(ガート)での荼毘の火が非常に印象的でした。遺体を燃やし灰にしてガンジス河に流すことはヒンドゥー教徒にとって最大の願いとされています。改めてインドの人々の宗教心の強さに感動しました。
今回の旅で数多くの世界遺産を巡りましたが、最も印象に残ったのはやはりタージマハルでした。これはムガール帝国絶頂期にあった王(第5代皇帝)が妻のために建てた白い大理石の美しい建物(廟)です。建設は1632年に始まり完成まで22年かかっています。必見の価値ありです。また、今回訪れた随所でヒンドゥー教とイスラム教の織り交ざるインド文明の一端に触れることができ有意義な旅となりました。
インドの歴史は約3000~4000年とされています。そして今や世界最大の人口(14.4億人)を擁し、昨年のGDP成長率は8.2%に達しました。来年には日本のGDP規模を追い抜くとされています。ただ、IMFによると一人当たりGDPでは世界191ヵ国中144位に止まっています(日本は34位)。インドの順調な発展を願っていますが、同国は多民族、多言語、宗教色の強さ(ヒンドゥー教80%、イスラム教15%弱)、29を数える独自性の強い州と、政治・経済に大きな影響力を持つ王族の存在、世界で突出した貧困率(24%)、それに根強いカースト制度等々、様々な社会的課題が内在します。従って、日本企業が同国でビジネスを軌道に乗せるにはそれなりの覚悟が必要です。半端な考えでは「壁」を打ち破れません。
■日米寄附文化の違い:
米国の調査機関CASEが米大学757校を対象にした調査によると、大学への寄附総額は580億ドル(約8兆5000億円)だったとのこと。最大の寄附関連収入があったのがハーバード大学で27億ドル(約4000億円)、次いで数学や物理学での最先端研究で知られるプリンストン大学の24.8億ドル(約3600億円)。一方、日本では文科省によると、大学への寄付額は国立大学と私立大学を合計して(現物寄附も含め)2400億円余りに止まり、両国の差は35倍にも達しています。そして教育活動の収入に占める寄附金の比率は慶応大で6%、早稲田で4%。国立では東大の場合で7%でした。寄附収入の差が日米の研究力の違いに表れていることは否定できません。
この背景として、①米国は卒業生の同窓意識が堅固で、大学がこうしたコミュニティーを使って積極的に寄附を集めている、②税制上の違いとして、所得控除できる額が米国では収入の最大60%に対し、日本は40%が上限です。寄附により税負担を軽減できる額は米国の方がずっと大きいのです。
なお、新興国では公的機関相手でも、スムースに事を運ぶために領収書の取れない支出があります。先進国でも米国ではチップ制度があります。これは一種の文化・習慣です。日本では徴税システムがしっかりしている(他国と比べて)とされており、一旦国が徴収して政府が使途別に再配分する方式です。しかしこれでは自分が払った税金がどう使われ、どのように活かされているのか本人には分かりません。もっとも「ふるさと納税」はありますが額は限定的です。米国では寄附による税金の控除が大きいので、寄附者の名前を冠に付した図書館や病院等が珍しくありません。この方が自分の気持ちに沿った贈与が出来るので納得がいきます。我が国でも個人の裁量を拡大すればもっと寄附が増えるのではないかと思料します。
■新卒の充足率と若者の職業観について:
日経の2025年度・新卒採用状況調査によると、主要企業の大卒内定者(2025年春入社)は本年春の入社数に比べ4.0%増と3年連続増加しました。達成度を示す充足率は過去2番目に低く、理工系は過去最低となりました。新卒採用が計画通りいかないため、企業は中途採を増やしています。2024年度計画数は前年実績比16.2%増の16.6万人、採用全体に占める割合は50.8%と過半数を超えました。
なお、博報堂生活総合研究所「若者調査」計画によると、2024年に「ベンチャービジネスよりも大企業志向」と回答した19~22歳は63%と、1994年の39%から大幅に高まっています。両親が就職氷河期だった世代のため、安定を求めるようです。一方、転職についてためらいはないようで、リクルートワークス研究所が2019~2021年に就職した人に「いつまでその会社で働きたいか」を聞いたところ「2、3年」の28%と最多でした。そして7割強が10年以下と答え「定年・引退まで働き続けたい」は2割止まりでした。また、パーソル総合研究所が20代に仕事を選ぶ上で重視することを聞いたところ「いろいろな知識やスキルを得られること」の回答が2023年に22%と、5年間で約8ポイント上がったそうです。
私が60年くらい前に社会人になったころは、会社人間にとって大事なことは「運・鈍・根」と教えられました。もちろん当時は「終身雇用制度」が前提というか常識でした。いわゆる「メンバーシップ型」です。しかしこれでは時代にそぐはないとして、「ジョブ型」(職能型)への移行期にあるといえます。これがうまくいくかどうか。「農耕民族」という日本人古来の民族性から、欧米型の厳しい「狩猟民族」(アニマルスピリット)へと自己変革できるのか。「人生100年時代」を生き抜くには、個人個人が相当な覚悟をもって自らの商品価値(人間力)を引き上げる努力が不可欠です。安易に転職を繰り返すのではなく、自らを冷静に見極め、自分に一番合った生き方を見出すことが大事だと思います。