11月に入ると早くも今年の新語・流行語大賞30候補という記事が出ました。その中には米大リーグ・ドジャースの大谷選手が史上初めて達成した50本塁打・50盗塁を指す「50-50」、自民党派閥の「裏金問題」、「令和の米騒動」といった言葉が入っています。また候補には入っていませんが、パワハラ、セクハラ、カスハラといったハラスメント関連の新語がどんどん増えています。
なお、最近はやたらと英語をそのままカタカナにした言葉が氾濫しているのも気になるところです。たとえばナラティブ (Narrative、物語)、アジャル (Agile、機敏な)、デジャブ(Dejave、既視感)、ノルム(Norm、基準)、アルムナイ(Almuni、卒業生)等々。しかもカタカナの後にわざわざ(日本語訳)を付している例もあります。それで何か特別な意味を表したとか、奇をてらうのなら別ですが、日本語の用語で十分だと思うのですが。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■衆議院議員選挙:
去る10月28日に投票が行われた衆議院議員選挙では、与党(自民党・公明党)が大きく議席を失い過半数を割り込みました。
前々号(10月11日発信、153号)で、「この度のあたふたとした解散の大義は一体何だったのでしょうか。結局『みそぎ・出直し選挙』の様相で、自民党はかなり苦戦しそうですが、対する野党も決め手がなく国民は迷うことでしょう。」と記しましたが、与党の敗因は、①解散時期を急ぎ過ぎたこと。もう少しじっくり構えるべきではなかったか、②裏金問題に対する国民の厳しい見方。まだ国民は納得していない、③選挙戦の終盤に自民党が支部に活動資金という名目で2000万円を配布したこと(裏金問題で離党した議員が長を務める支部も含め)。これで止めを刺され、一挙に形勢が野党に傾きました。
故・安倍首相は卓越した政治手腕(特に外交)の持ち主でしたが、世論調査では女性の人気が低く、「人柄がよくない」がその最大の理由でした。しかし選挙では連戦連勝。正に「戦を仕掛ける術(天の時)」を心得ていたことになります。すると昔の武将と一緒で、否が応でも議員連中は集まり求心力は高まります。その点で石破首相は緒戦で躓いたことになりました。今後の政局運営には野党の一部と連係せざるを得ないことから、独自性を打ち出せず非常に厳しくなることが見込まれます。
■米国大統領選挙:
選挙イヤーの最終戦で世界から最も注目された米国大統領選挙は、予想外の大差でトランプ元大統領が返り咲きました。トランプ氏の勝因は、①劇場型に徹し現政権に対し不満を持つ一般大衆を引き付けたこと、そして②バイデン政権の経済政策(インフレ対策)と、移民問題に対する国民の不満を徹底的すくい上げたこと、③2回の暗殺の企てから生き延びたことが、米国民が求める「強い大統領」というイメージに合致したこと、④今や米国民は外に目を向ける余裕とか寛大さは薄れてきていること、等々が背景にあったと思います。
そして今後米国は孤立主義(保護主義)色を強めるでしょう。中国に対しても関税引き上げ等、貿易面で一段と対決姿勢を強めると思われます。しかし余り中国を追い込むとロシア・北朝鮮+中国の結束をますます強めることになりかねません。トランプ氏が任期を全うする4年後の米国は一体どうなっているか。ますます右傾化しているか、或いは軌道修正されているのか。気になるところです。
いずれにせよ日本人の感覚(常識)から考えると今回の結果は意外に感じるかかもしれませんが、米国民が選んだ大統領ですから私たちも結果を受け入れることが必要です。また、「米国は自給自足が可能な国であり、日本なしでもさほど問題なくやっていける。しかし日本は安全保障を始め米国の支援・協力なくしてやっていけない」のが、我が国にとって厳しい現実です。また、私たちは今までのような「甘え」は許されないことを自覚する必要があります。なお、トランプ氏のようなタイプとうまく折り合いをつけるには「相性がよい」(Chemistryが合う)ことが必要です。この点で故・安倍首相は秀でていました。現存する日本の政治家で同氏とうまく「駆け引き」(Deal)出来るのは果たして誰でしょうか。
■株取引を巡る不祥事相次ぐ:
10年前にコーポレートガバナンスコードが強化されて以来、東証は上場企業に対し株価を意識した企業価値の向上を求めてきました。その効果が出て日経平均株価は34年ぶりにバブル期付けた最高値(1989年12月)を上回りました。
ところがここに来て証券業界の信頼性を根底から揺るがす事件が相次いでいます。例えば①東証の社員がインサイダー取引で証券取引等監視委員会の調査を受けている、②金融庁に出向する裁判官が業務で知った企業の内部情報を基に株取引を繰り返していた、③株主・総会対策について企業に助言・指導する立場にある三井住友信託銀行の社員が業務で知った情報をもとに、株式を売買するインサイダー取引を行っていた、④野村証券が国債先物で不正取引、等々。
だいたい我が国は官民とも情報管理という点で脇が甘く危うさを感じます。この点が政府に対する国民の不安と不信感を生じさせ、例えばマイナンバー制度の普及にも影響しているように思います。今のままでは政府や東証がいくら「資産運用立国」を掲げても、国内外の投資家の信頼感は得られないでしょう。
■ハイテク化する犯罪:
本年1~9月にSNSの偽広告などを通じ金銭をだまし取る「SNS型投資詐欺」による被害額が前年同期4.7倍の703 億円に達したそうです。そのほか同期間に「ロマンス詐欺」の被害額が271億円(前年同期比2.4倍)、更に昨年1年間に「オレオレ詐欺」の被害額が566億円に達しました。また、パソコンでデータを暗号化して身代金を要求する「ランサムウェア」による被害も本年1~6月に114件(前年同期比11件増)発生し、2022年以降年間では200件前後で高止まりしています。
そして、「ヤミバイト」も凶悪化しており、その際、「シグナル」という2014年に創られたアプリが使用されています。これを利用するとやりとりは運営側を含む第三者がみることは出来ず、しかも受信者がメッセージを開いてから任意の時間が経つとメッセージが消える仕組みがあり、復元が難しいとされています。このように最近の犯罪はますます巧妙かつハイテク化しています。ITやAIは私たちの生活に利便性をもたらす「光の部分」がある一方、悪用されると犯罪を増やし社会を混乱させることから適切な規制が不可欠です。