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2024年12月06日

ちょっと気になる記事・話題(157)

師走に入ったとはいえ温かい日が続いています。気象庁によると今年の秋(9~11月)の日本の平均気温は平年より1.97度高かったとのことです。1898年の統計開始以降で最高だった昨年(+1.39度)を大きく上回り、3年連続で最も暑い秋となりました。同庁は秋の高温は「異常気象」だとして、地球温暖化が進むと今回のような高温になる可能性が高まると警鐘を鳴らしています。
次に今年の世相を映した言葉や、話題になった言葉に贈られる「流行語大賞」が、12月2日発表されました。そして大賞に選ばれたのはドラマ「不適切にもほどがある!」を略した言葉「ふてほど」でした。私はドラマを観ていませんのでこの言葉は初耳で、一体何のことか分かりませんでした。なお、トップテンの中で知っていたのは「裏金問題」、「新紙幣」、「50-50」、「ホワイト案件」くらいで、「世間知らず」を実感しました。
また、今年も読売新聞では「あなたが選ぶ10大ニュース」を募集しています。今年は年明け早々に石川県・能登で震度7の大地震が発生したこと、そして選挙イヤーと称されたように世界各国で大きな選挙が行われました。特に米国大統領にトランプ氏が返り咲くことになり、世界史の大きな転換点として後世に残る年となるでしょう。なお、大谷選手の米大リーグ初の「50-50」は今年の数少ない明るいニュースでした。 

■■最近想ったこと・注目したこと:
■世界経済見通し(IMF):
去る11月18~19日、G20サミット(主要20ヵ国・地域首脳会議)がブラジルのリオデジャネイロで開催され、石破首相も出席しました。G20は世界のGDPの85%を占めています。この会議は2008年の金融危機(リーマン・ショック)をきっかけに、世界経済の安定を目指して始まりました。本年10月、IMF(国際通貨基金)は「G20の成長見通しは、この数十年で最も弱い」ことを公表しました。同基金は2024年のG20の実質経済成長を3.4%、来年は3.2%、2029年は3.0%に低下するとしています。この成長率はコロナ前の2000~2019年の平均(3.7%)を下回っています。特に新興国経済の減速が際立ち、中でも中国の成長率は2024年の4.8%から2029年には3.3%まで落ち込むとしています。また先進国でも生産性の伸び悩みと、日本を筆頭に少子高齢化が深刻化することに加え、米国トランプ政権の保護主義的な政策による世界経済への影響が懸念されます。
■我が国の国際競争力低下と国力の低下を示すいくつかの指標:
(1)国際的に比較すると日本の「労働生産性」と「仕事への満足度」は低い:
米国ギャロップ社(調査会社)によると、「自分の仕事にやりがい」を感じている従業員は、世界平均が23%に対し、日本ではわずか6%という調査結果でした。これは「年功序列」(終身雇用・メンバーシップ型)という、戦後我が国を支えてきた雇用制度の負の側面、即ち「マンネリ化」と「組織の硬直化」が現れているように感じます。「ジョブ型」への移行による「組織の活性化」と「創造的な仕事の進め方」、そして「労働力の流動化」(企業・産業間移動の弾力化)が必要とされる理由です。
(2)日本の英語力92位に転落、EF・Education First社(スイス)の調査結果:
同社は語学学校を世界で展開する民間企業ですが、このほど2024年版「英語能力指数」を発表しました。対象は英語圏以外の国・地域です。それによると日本は過去最低の92位に転落しました。日本の順位はほぼ下落が続き、英語力の低下に歯止めがかかっていないとしています。コロナ禍による海外留学・国際交流の減少や、強まる内向き志向も理由として指摘されています。改めて我が国の英語教育のあり方が問われるところです。
(3) 2024年におけるデジタル競争力、日本は67の国・地域の中で31位:
スイスのビジネススクールIMDの調査結果によると、日本は前年から1つ順位を上げたものの、人材やビジネスの俊敏性といった要素で遅れており、韓国や台湾など他の東アジア諸国との差が埋まっていません。因みに韓国は6位、香港7位、台湾9位で、我が国よりずっと上にランクされています。
(4)日本のAI(人工知能)競争力は9位:
米スタンフォード大のAI活力ランキングに関する調査(2023年)によると、日本は調査対象の世界36ヵ国の中で9位でした(前年は5位)。総合順位では米国1位、中国2位、韓国7位です。調査結果は2017年から公表されており、我が国は2021年まで4位でしたがこの2年で順位を下げています。特にAI人材や基盤モデルの数の少なさが弱点とされています。
(5)科学論文の量・質で米中2強が鮮明、総数で日本は5位:
文科省が英調査会社クラリベイトのデータをもとに主要国の論文数などを分析した結果、総論文数で1位中国、2位は米国、これら2国で世界シェアの41.9%を占めています。米中に続きインドが3位、ドイツが4位です。日本は5位で横這い状態が続いています。一方、引用数が上位10%に入る「注目論文」で日本は13位で、韓国(9位)、イラン(12位)の後塵を拝しています。背景として研究開発費の規模や研究に費やす時間等、研究をバックアップする体制の充実度の違いが指摘されています。
(6)中国が64の重要技術部門(AIや軍事転用可能含む)のうち57分野で首位:
オーストラリアのシンクタンク・豪戦略研究所(ASPI)が公表した先端技術研究の国別競争力ランキングによると、中国の競争力が全体の9割の分野で首位でした。調査結果は過去20年ほどの間に先端技術を巡る米中の競争力が逆転したことを示しています。特に軍事目的に応用できる技術開発が進んでおり、米国は警戒感を強めています。
以上、我が国の現状について些か悲観的ですが厳しい指標を列挙しました。中には「日本の常識は世界の非常識」に起因するものもあります。「女性の社会進出」が特に政治分野で低いことや、「夫婦別姓制度」もそれに類します。またGDP(国内総生産)でも本年ドイツに抜かれましたが、来年にはインド、そして2050年にはインドネシアにも抜かれるとの予測がなされています。一方、世界ではグローバルサウスの政治・経済面での存在感や発信力が強くなり、国際舞台での我が国の存在感は薄れつつあります。もはや「先進7ヵ国」(G7)の一員とは言い難い状態です。
こういった世界情勢を俯瞰しますと、これといった天然資源を有しない我が国にとって、国際的に通用する「人材の育成」と、「先端技術開発力」の強化以外に生きる術はありません。今や過去の栄光に耽っている場合ではなく、謙虚かつ冷静に我が国の現状を直視し、長期的な視野に基づく国家像を描き、それに向けて「意識改革・制度改革・構造改革」を進めることです。その点で政治が果たすべき役割が極めて重要ですが、小手先の政策と論争に終始する現状は何とかならないものでしょうか。

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