今年も残すところ10日余りになりました。振り返りますと今年も様々な出来事がありました。読売新聞恒例の「2024年の読者が選ぶ10大ニュース」の国内トップ3は、①石川・能登で震度7、津波被害、②大谷翔平、米大リーグ初の「50-50」、③パリ五輪、日本は海外最多メダル45個、でした。そして海外のトップ3は①米大統領選、トランプ氏が勝利、②トランプ氏狙った暗殺未遂事件、③大谷翔平の通訳を球団が解雇、という結果です。国内外でトランプ氏と大谷選手が話題になった一年でした。
そういった中で京都・清水寺恒例の、今年の世相を「1字で示す漢字」として「金」が選ばれました。私はこれを「カネ(Money)と呼ぶのかキン(Gold)なのか」、どちらなのかと思いました。「カネ」は勿論「裏金問題」を表します。一方、「キン」の方はパリ五輪・パラリンピックでの多数の金メダル獲得、そして佐渡金山の世界文化遺産登録、それに金価格が史上最高値を更新したこと(10月31日、税込み15,162円/グラム)が理由かと思います。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■日本は災害多発国、特に地震:
年明け早々の元旦に石川県能登地方で大きな地震(マグニチュード暫定値7.6)があり、関連死を含め死亡者数は475名に上りました(本年12月6日現在)。さらに、同地方では9月には観測史上最大の豪雨を記録するなど自然災害が相次ぎました。
なお、来年は関連死を含め6,434名の命を奪った、阪神・淡路大震災が発生して30年の節目の年にあたります。この地震発生(1995年1月17日、同7.3)以降も東日本大震災(2011年3月11日、同9.0)、鳥取県西部地震(2000年10月6日、同7.3)、岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日、同7.2)、熊本地震(2016年4月14日、同6,5)、そして本年に入り1月の能登半島地震に次いで宮崎県日向灘沖地震(8月8日、同7.1)が発生しました。
このように我が国では過去30年間に大きな地震が7回も発生しており、今後も南海トラフ地震や首都直下型地震が30年の間に70~80%の確率で起きるとされています。なお、我が国は世界4位の地震多発国(1.中国、2.インドネシア、3.イラン)とされており、日本に居住する限り多発する地震のリスクから逃れることは出来ません。いつ・どこで・どれくらいの規模が発生するか正確に予知することは現状では困難なようです。
また、地震発生時に自分がどこにいて、どういう状態にいるかも想像がつきません。
しかし最後は「自分の命は自分で護る」以外にありません。従って自分なりに最低限の「身を護る術」を心掛ける必要があるでしょう。
■先進国で脱石炭火力発電が進む中、日本の進捗状況は先進7ヵ国で最下位:
G7では2035年までに排出対策のない発電所を段階的に廃止することを目標に掲げています。そして今や脱石炭は先進国の気象変動対策に対する「本気度」を示す指標となりつつあります。英国は本年9月、G7で初めて脱石炭を達成しました。
ところが我が国は削減目標さえ示せず、G7各国の削減ペースと比べ遅れが際立っています。2000年からの削減量では、同じく対策の遅れを指摘されている米国やドイツは約4割減らしましたが、日本は逆に約1.6倍増です。背景として2020年代前半まで大型石炭火力の新設が続いたことから、全体の3割が運転開始以来20年未満で老朽化による退出が進まないのです。G7が目指す2035年の脱石炭に近づけるには複数の低炭素化の手法を実用化する必要があります。それを示せるかどうかが日本が進める「段階的な削減」に対する国際社会からの信用に直結します。現在、日本政府はエネルギー基本計画の見直しを進めていますが、石油輸入量の95%以上を地政学的リスクの高い中東に依存する我が国にとって、エネルギー自給率(2022年度12.6%)の向上、並びに地球環境対策のためには原子力の更なる活用が避けて通れません。一方、我が国は原子力に対するトラウマ(広島・長崎・福島)を抱えている上に、電力会社への不信感(事故隠し等)が根強いのも実情です。しかし国の存立のためには原子力発電所の新増設が不可欠です。そしてこれは中国やインドを筆頭に世界の潮流でもあります。
■深刻化する人手不足と厳しさを増す企業経営:
我が国では殆どの分野で人手不足と高齢化が指摘されています。中でも第一次産業である農業・漁業・林業・酪農は特に深刻です。背景として少子高齢化・人口減少に加え厳しい労働環境や低収入が挙げられます。このままでは後継者難も相俟って我が国の基礎産業の継続が困難になりかねません。喫緊の対策が必要です。
なお、その他の業界でも「103万円の壁」や「在職老齢年金減額」の影響もあり、人手不足が深刻化しています。本年10月の有効求人倍率は全業種平均で1.25倍に対し、例えばトラックドライバーや調理師は2.6倍を超え、介護職に至っては4倍を超えています。中でも訪問介護は14倍以上です。そして人手不足に加え後継者難に悩む業界・企業の中で、特に中小零細事業者の倒産が増加しています。
一方、人手不足の深刻化とともに人件費も上昇しています。政府は本年10月より最低賃金(時給)を前年比50円引き上げ全国平均1054円に設定しました。石破首相は「2020年代に1500円」を目標に掲げています。なお、最近では労働需給を端的に表す派遣社員の11月の募集時平均時給は1700円、現場のアルバイトは1400円に近付いているようです。
因みに米国(ロサンゼルス地区)の現在の最低賃金は17.28ドルです(現在の為替レート157円で約2700円)。そして昨年5月に渡米した際に訪れた、大谷選手もご愛顧のIN&OUT(ハンバーガー店)の店員募集広告の時給は19ドルでした。ところが現在は人手不足を反映し22ドル(約3450円)に上がっているそうです。
両国の人件費の違いを感じると同時に、円安がもたらしている国力の低下(国際比較)を痛感させられます
なお、我が国では人手不足といいながら長年賃金がさほど上がらなかった背景として、流動性と活力を欠く労働市場と、デジタル化やAI化の遅れによる低生産性、それに原材料の高騰や適正な人件費増といったコストアップさえ、売り値への転嫁が容易でない我が国の産業構造(小規模が圧倒的で過当競争体質)や、時代の変化に対応できていない規制や制度の存在があります。官民挙げての制度・構造改革が必要です。
■■本年のブログ配信は今回で最終とさせていただきます。来年の初号は1月10日の予定です。本年1年間ご愛読いただき誠にありがとうございました。そして皆様方にはくれぐれもご自愛の上、楽しい年末・年始と輝かしい新年をお迎えになりますよう心より祈念申し上げますとともに、来年も引き続きよろしくお願い申し上げます。