先月のヨーロッパ旅行で経験した、「日本の常識が世界の常識ではない」ことを思い出したので記しておきます。それは公衆トイレ事情です。我が国ではどこに行っても、例えば駅でも空港でも、百貨店やショッピング・センターでも用を足したければすぐトイレが見つかり、しかもウォッシュレットが多く清潔感があり殆どが無料です。ところが外国ではそうはいきません。先日訪れたヨーロッパ諸国(フランス、イタリア、スペイン)では公衆トイレの数は少なく、便座も在来型で1~2室といった小規模が多いため列を作っていました。そして使用料として1~2ユーロ(170~340円)取られることが多く、小銭を用意しておく必要があります。昨年訪れたインドもほぼ同じ状況でした。かつては中国でも困ったことがありました。外国に出かける時は、我が国の公衆トイレ事情は世界では例外的と考えておくべきです。
逆に、訪日外国人が日本で当惑するのはゴミ箱が少ないことです。もちろん我々日本人も不自由を感じています。なぜ日本でゴミ箱が少ないかChatGPTで検索すると、その理由として、①1995年に発生した地下鉄サリン事件の余波、②「ゴミは持ち帰る」という文化、③街の清潔さへの高い意識、④自治体の予算と手間の問題、⑤不法投棄・分別マナーの悪化防止、ということでした。欧州やインドでは人の集まる所にはゴミ箱が設置されていました。ただし、ほとんどがゴミで溢れていました。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■関税問題のその後:
トランプ大統領は7月7日正午(現地時間)過ぎから貿易相手国対し、8月1日から適用する新たな関税率の通知を始めました。まず日本と韓国に対して25%の関税をかけると通告しました。我が国に対する関税は本年4月2日時点では24%とされましたが、同月9日に10%に引き下げ相互関税の一部を90日間停止し、その間に各国別に貿易不均衡是正に向けた交渉をまとめるという手筈でした。日本については7月9日が交渉期限となっていました。この間石破首相の命を受けた赤沢亮正経済再生担当大臣は7回渡米し交渉に当たりましたが、事態の打開を図ることはできませんでした。そしてこの度の一方的な通告に至りました。関税が適用される8月1日まで2週間ですが、日本では参議院議員選挙(7月20日投票)があり、その結果如何で政治情勢は大きく変わります。そのため日本政府は目下、動くに動けない状態にあります。
なお、交渉を有利に進めるには相手の弱点を突くことが重要ですが、我が国には中国のレアメタルのような交渉材料がありません。強いていえば我が国は本年4月末時点で約1兆1345億ドル(約162兆円) に上る米国債(世界最高額)を保有し、外国が保有する米国債総額8兆5000億ドル(2024年末)の13.3%を占めています。中国は保有する米国債をここ3年間に約1/3売却しました。しかし我が国が米国債の売却を交渉の切り札に使うことは、事態を決定的に悪化させると言わざるを得ません。結局、日本側には有力な交渉材料はなく、貿易不均衡の焦点となっている自動車とコメについても、今の段階で大統領が納得するような妥協策は打ち出せないでしょう。昔から「泣くこと地頭には勝てぬ」といいますが、トランプ氏の最大・最強の敵は「高齢」(私より3歳若いですが)であることを勘案し、現政権が続く間は「忍の一字」もやむを得ないのではないでしょうか。
なお、猫の目のように変わるトランプ流ですが、私の親しい米国の友人(本来は共和党支持者)は「彼は良いこともいくつかやっているが、あまりにも多くの対立を生み出しているため、米国にとっても他の国々にとっても良くない。残念ながら、彼は復讐心に燃えるナルシストだ」と評しています。今や彼は「裸の王様」のようです。各国首脳の対応も「ほめ殺し」か、「ご機嫌取り」が目立つ中で、中国の毅然とした姿勢だけが目立っています。なお、トランプ氏との関係が決裂したイーロン・マスク氏は新党を結成し、少数議席ながら政局を左右する主導権を握ろうと企てています。
■参議院議員選挙運動の真っただ中:
目下、7月20日(日)の投票日に向け参議院議員選挙戦の真っただ中です。予想では自公が議席数(現在63議席)を減らすことは免れず、どの程度で踏み止まれるかが焦点です。最大の関心事は自公が非改選75議席と併せ、参議院全体(248議席)の過半数125を超えるかどうか。もし50議席を下回ると衆議院、参議院とも自公は少数与党となり、政局は一挙に流動化し政権交代が現実化します。そして世界情勢が複雑化と不確実性を増す中、我が国の政治は波間に漂うような状態に陥ります。政治の不安定が国民の先行き不安をもたらし、景気への悪影響が懸念されます。
なお、読売新聞の調査では、序盤戦に於いて有権者が最も重要視する政策は、①景気や物価対策(50%)、②年金など社会保障(20%)、③外交や安全保障(7%)、④教育や子育て支援、⑤政治とカネ、⑥憲法改正、⑦原発などエネルギー政策でした。
■人手不足と倒産の増加:
東京商工リサーチによると、本年1~6月の倒産件数(負債額1000万円以上)が前年同期比1%増の4990件に達しました。上期の倒産件数が4000件を超すのは3年連続です。負債が1億円以下の小規模倒産が77%を占め過去30年で最高となりました。また、従業員10人未満の企業の倒産が90%、特に5人未満が76%を占めました。背景として人手不足や賃上げへの対応不十分による人材流出、人材不足を補うデジタル投資への対応余力がない、等が指摘されます。今後も「コロナ借換保証」の据え置き期限の到来や、トランプ関税の直接・間接的な影響が顕在化することから、倒産が高水準で推移することが予想されます。
■増加し続ける訪日外国人への対応:
厳しい人手不足の中、参院選の序盤では有権者の関心を呼んでいなかった外国人政策が、このところ争点として注目され各党の違いが鮮明になっています。最近、在留外国人や訪日客の増加とともに、騒音や悪質な運転などの迷惑行為による住民とのトラブル、それに医療保険制度が不適切に利用されたり、外国人の過剰な不動産投資による価格高騰といった弊害が目立ちます。我が国における外国人居住者は約377万人(昨年12月末現在)で全人口(約1億2300万人)に占める比率は3.05%です。そして外国人労働者(2024年10月現在、約230万人)の全就業者(約6813万人)に占める比率は3.4%です。この比率は地方並びに都市間で大きく異なり、いくつかの地域に集中する傾向が見られ問題をより深刻化しています。
一方、我が国の少子高齢化と人口減少の現状と今後の見通しを考えますと、ITやAIといったハイテク産業もさることながら、介護やトラック・ドライバー、建設といった現場でのエッセンシャルワーカー(社会生活を支える人材)の不足を補うには、外国人材の受け入れが不可欠です。従って我が国としてはそういった実情を前提に、欧州、米国の現状を反面教師として、外国人と「秩序ある共生社会」を如何に実現するかが課題です。参院選挙での争点化から、石破首相は在留外国人による犯罪や問題への対応を強化するための司令塔となる事務局組織を、近々新設し省庁横断で取り組むことを表明しました。縦割り組織が支配的な我が国の行政システムで、またぞろ「仏作って魂入れず」にならなければよいのですが。