
2月に入り節分(2月3日)、そして立春(2月4日、寒の明け)も瞬く間に過ぎ、暦の上では早や春の到来です。しかし各地で記録的な豪雪による交通への影響や、雪かき・雪下ろしによる死傷者が相次いでいます。
さて、農水省によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額が前年比12.8%増の1.7兆円に達しました。2025年に2兆円という政府目標は未達でしたが、13年連続の過去最高更新となりました。輸出先のトップは米国で13.7%増の2262億円でした。日本産の緑茶や牛肉といった日本食への人気が高まっているようです。2位以下は香港、台湾、中国、韓国でした。中でも特に注目されるのは、緑茶が前年比約2倍の721億円と最大の伸びを示したことです。我が国の輸出品目は伝統的に自動車や鉄鋼、機械、化学品といったハード(重化学工業製品)が主役でしたが、いずれも頭打ちとなっています。次世代の切り札として農・畜・水産物(特産品)や、アニメ、ゲームといったソフト分野の輸出拡大に活路を見出すべきでしょう。
■■最近想ったこと・注目したこと:
■衆議院議員選挙たけなわ:
1月27日に公示された衆議院議員選挙が、今週末2月8日(日)の投票日に向け、戦後最短となる12日間の激しい選挙戦の真っ只中です。今回の衆議院議員選挙は戦後81年間で51回目、そして参議院議員選挙も加えると78回目の国政選挙です。前号でも申し上げましたが、我が国ではあまりにも国政選挙が多すぎます。その上、今回も855億円という巨額の政府支出を伴っています。米国では大統領選挙は4年に1回、そして上・下院議員を選出する中間選挙は2年ごとに実施されます。ところが我が国では参議院は任期6年(3年ごとに半数改選) と決まっていますが、衆議院議員は任期満了(4年)以外の解散は首相の専権事項となっており、自陣営に有利になるよう実施時期を決定するといっても過言ではありません。今回は「自らの信を国民に問う」を解散理由としていますが、高い支持率をバックとした「不意打ち解散」と見做されても止むを得ないでしょう。高市首相は故安倍首相を師と仰ぐだけあって、なかなかの度胸としたたかさを兼ね具えているようです。これは長期政権を目指す上で不可欠な素養とも考えられます。
それにしてもこれだけ頻繁に選挙があり、しかも現在のような多党化時代となると、いわゆるポピュリズムに陥りがちです。故田中角栄首相がかつて、「猿は木から落ちても猿だが、議員は落ちればただの人」といみじくも言いましたが、議員バッジを護る、或いは自陣営の議席を増やすためにはなりふり構わずとなると、国家の方向を見失います。国民も結局ツケは自分自身に回ってくるのですから、心地よい選挙公約に惑わされることなく冷静な判断が求められます。
例えば、今回の選挙の問題点の一つが消費減税です。消費税は1989年に創設(3%)されましたが、先達が時には自らの政治生命を賭け幾たびかの改定を重ね、現在の10%(標準税率)となり、今や社会保障政策の根幹となっています。これまでの経緯を考えると、選挙戦術として軽々しく減税・廃止を論じるべきではないのです。
なお、首相は消費減税を「悲願とする」一方で、「国民会議で検討を加速する」という自民党総裁としての立場を使い分けており、決定は選挙結果次第という腹積もりと思われます。「減税を確約」せず「曖昧」にしているところが味噌です。
また、外交面では、米国の対中戦略(転換)とどう整合性を図り、ますます攻勢を強める中国と今後どう向き合うかが大きな課題です。
■労働時間規制と裁量労働制の拡大について:
2019年に施行された改正労働基準法で、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える残業時間は、原則月45時間、年360時間が上限とされました(トラック・ドライバー、建設労働者、医師等は別規制あり)。
これに対し経済団体は現在の厳しい人手不足に鑑み、「裁量労働制」の拡大を要請しています。一方、労働側は過労死に繋がることから反対を表明しています。
「裁量労働制」とは、実際の労働時間にかかわらず、事前に労使で定めた時間を労働時間とみなし、働き手に時間配分だけでなく仕事の仕方も委ねる制度です。
なお、私がかつてトラック貨物輸送業界に関わっていたころ聞いたのは、就職面接の際に若い世代は「給料は他社並みでよいが、残業が少なく休日が多いを希望」という声でした。最近は夫婦共稼ぎのいわゆるパワーカップルが多いことから、「共有する時間を出来るだけ持ちたい」という思いの現れかと考えます。
一方、50歳前後の年配のドライバーの中には、「将来不安への備え」や「生活水準の向上」、そして「子育てや介護費用」等々から、「稼げる間にもっと稼ぎたい」という希望が強いのも実情です。
このように現在は労働に対する考え方や価値観が多様化しています。そして人により体力や労働への意欲、並びに価値観や生活環境の違いがあることを考えると、一つの法律で労働制度を一律に規制するのは無理ではないかと思います。
因みに日本人の1人当たり年間平均労働時間(2024年、所定外含む)は1643時間でした。これは米国(同1796時間)より少ないのです。もっとも、この背景には「税・社会保険の壁」で労働時間を抑える労働者(パート・非正規)の存在がありますが。
我が国では人手不足がますます深刻化しています。そして従業員を確保するための賃上げも経営を圧迫しています。昨年はこれらの要因で倒産した件数が3年連続の過去最多更新となりました。ほとんどが中小零細企業です。また、現在議論が沸騰中ですが、秩序ある外国人労働者の受け入れを進めるためにも、「裁量労働制」の拡大と、「税・社会保険の壁」を解消し、人手不足の緩和を図るべきではないでしょうか。
■南鳥島の海底からレアアース泥の試掘成功:
内閣府は大型研究プロジェクト(海洋研究開発機構)の一環として、地球深部探査船「ちきゅう」を使い行っていた、深海底5700mからのレアアース(希土類)の試掘作業で、泥の回収に成功したと発表しました。南鳥島は東京都・小笠原村に属する無人島で、東京から約1900km、日本で最東部に位置します。同島周辺には少なくとも1600万トンのレアアース埋蔵量があり、世界需要の数百年分を賄えるとされています。次のステップとして2027年2月には1日最大350トンの泥を採取する予定です。
ただ、問題は採掘と輸送、加工に必要なコストと採算性です。この度、試掘には成功したものの商業化へのハードルは高いとされています。レアアースは世界に広く分布していますが、現在は中国が世界の採掘量の約7割、製錬量の約9割を支配しています。それにより供給量と価格決定権を握り、対米、対日等の外交上の切り札としています。抽出や加工には環境への負荷が高いことから、先進国で生産をストップしたり規制を強化したことも、中国への集中の流れを加速させました。そして中国はかつてそうしたように、イザとなると大幅値下げで揺さぶりをかけてくることも想定しておく必要があります。